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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(後編)-2

残りふたりの内政官コンラートとエルマーは、バーデルの都と同盟を結べば、バーデルの都にフェルベーク伯爵領の兵士を常駐できるので、ロンダール伯爵領、テスティーノ伯爵領のどちらにもバーデルの都は全伯爵領の中央にあるので牽制できるだけでなく、バーデルの都を占領することも可能になるため、バーデルの都の女伯爵エステルと同盟を結ぶべきという意見で一致していた。

「ロンダール伯爵と女伯爵エステルとの友好関係が気になるところです」

内政官エルマーは女伯爵シャンリーが、親衛隊の隊長であったギレスをフェルベーク伯爵に近づけていたことや、メイドとして連れ歩いていたエステルをロンダール伯爵へ近づけていた事をしっかりと覚えていた。それを利用してフェルベーク伯爵に女伯爵シャンリーの排斥を提案したのは、内政官エルマーだった。
女伯爵シャンリーの排斥後、バーデルの都をフェルベーク伯爵領と合併する提案は、フェルベーク伯爵に却下され、執政官ギレスが、バーデルの都の管理者となった。

「ロンダール伯爵と女伯爵エステルは、フェルベーク伯爵と執政官ギレスと同じように親密な関係があるにも関わらず、ロンダール伯爵がフェルベーク伯爵領と先に同盟したことが気になります。ロンダール伯爵が女伯爵エステルと同盟を結ばないのは、バーデルの都の建て直しの費用の援助を求められると予想したからではないでしょうか?」

ゴーディエ男爵はバーデルの都には怨念の影響が強いことをロンダール伯爵から聞いていて、ロンダール伯爵は凶運に巻き込まれるのを避けるために、あえて同盟を結ぶことや、女伯爵エステルとのつながりを警戒して避けているのも理解していた。
フェルベーク伯爵領の策略家である内政官エルマーに、蛇神の殉教者の祟りを説明しても理解できないだろうと、ゴーディエ男爵は腕を組んで考えていた。

「もしも、我々が兵士をバーデルの都に駐留するのを要求すると、前任の女伯爵シャンリーが市場を統制するために大規模な粛清を行ったように、新たな領主である女伯爵エステルが、市場の闇商人や居住地の難民を処分するため、協力を求めてくることはありませんか?」

内政官コンラートは、女伯爵シャンリーの虐殺に加担して奴隷市場の大きな利権をフェルベーク伯爵は得たが、不戦協定を新たな領主エステルに容認させるために、兵士を虐殺に利用されるのを警戒していた。
虐殺に加担しても得られる利権はない。フェルベーク伯爵領の兵士が虐殺したとすれば、ブラウエル伯爵領からバーデルの都へ出兵してくる可能性があるとコンラートは言った。
女伯爵シャンリーを排斥するために、ブラウエル伯爵領へ協力を要請したが、フェルベーク伯爵と執政官ギレスは断られたことを、ゴーディエ男爵に明かした。

(ブラウエル伯爵の判断か。いや、ジャクリーヌ婦人と言うべきか)

ゴーディエ男爵は名門貴族の宮廷官僚とジャクリーヌ婦人のつながりを理解していた。女伯爵エステルが女伯爵シャンリと同じ粛清を行えば、王都の宮廷議会の情勢が動く。
ゴーディエ男爵は、宮廷議会の重鎮だったモルガン男爵が作り上げた名門貴族派閥の官僚による議会の流れがあり、宮廷入りした人物である。ランベール王の招致を受けても、名門貴族派閥が宮廷議会の実権を握っている情勢がなければ、王の右腕としての役目はできなかったはずである。
ジャクリーヌ婦人は名門貴族の人物。だが彼女の人脈の宮廷官僚たちは、名門貴族ではない。王の直轄領の軍を率いる将兵たちが含まれている。
震災で王都の宮廷議会の主流だった名門貴族派閥の官僚が多く死亡した。
現在の宮廷議会の情勢は、生き残りの名門貴族派閥の官僚と法務官レギーネが、かろうじて権力を維持している。
モルガン男爵は、名門貴族派閥で議会の官僚をかためて権力を握った。しかし、ジャクリーヌ婦人の人脈である貴族官僚が、震災後に生き残り議会へ参入してきている。官僚の人数の大半をジャクリーヌ婦人の官僚が議会の欠員を埋めるために参入し続ければ、モルガン男爵の作り上げた名門貴族派閥が議会を独占している情勢は失われる。
宮廷議会の主流が、軍部関連に携わる官僚に変わろうとしている時期である。名門貴族派閥のみの宮廷議会を維持は、議会制度ではなく国王の独裁にでもしない限り不可能な状況にあった。
フェルベーク伯爵が、独自の制度を自治権を行使して統治できたのは、宮廷議会の権力が、震災の官僚死亡による欠員により一時的に失われた隙に作り出されたものである。
また、バーデルの都の新たな領主に、少女エステルが女伯爵として着任できたのは、法務官レギーネが宮廷議会をかろうじて維持している状況だからこそ可能な采配であった。
宮廷議会の官僚の欠員を補うために、今までは官僚でもモルガン男爵の作り上げた名門貴族派閥により傍流に置かれて使われていた、震災で生き残ったジャクリーヌ婦人の人脈の貴族たちが宮廷議会を動かしていく情勢の流れであった。
ゴーディエ男爵が王都の宮廷議会から離れているのは、王の密かな命令に従っている事情もあるが、ゴーディエ男爵が宮廷議会を強引に仕切ってしまうと、宮廷議会の官僚の欠員を補うことが停滞してしまうからである。
王都ではブラウエル伯爵とジャクリーヌ婦人の一族が、宮廷議会に大きな権力を握る時代に情勢は動きつつある。
新たな領主エステルが、女伯爵シャンリーと同様に後継者として、民衆の粛清によってバーデルの都を統治した場合に想定されるのは、ブラウエル伯爵領からの武力による介入である。民衆の支持と王都の宮廷議会でより実権を握るには、何代にも渡るブラウエル伯爵の一族の悲願である温存してきた伯爵領の軍勢を王国の正規軍として認めさせるため、わかりやすい実績が必要。女伯爵エステルの統治が虐殺による強引な手段で行われた時には、王都の宮廷議会に参入してきた貴族たちから、ジャクリーヌ婦人へ、伯爵領の軍勢の武力介入により、エステルを排斥する提案がなされるだろう。


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