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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(中編)-7

ロンダール伯爵は、腹違いの妹の恋人アナベルと「僕の可愛い妹たち」以外は命がけで守る気がない。

ターレン王国の穢れが集まるため祓うための禊の土地、ストラウク伯爵領のスヤブ湖では異形のカエル人があらわれる異変が地震の夜に起きていた。
バーデルの都では、殉教した女性の蛇神信仰の信者たちの怨念に心を奪われた遊女が、遊郭に放火していた。

ユーリは全裸でしどけなく身を横たえているエルマの首にペンダントをかけた。

「エルマは美人だから、こういうのが似合うね」
「うれしいですけど、つけて歩いていたら、奪うために襲われそう」
「ふたりでこうしてる時だけつけて」
「わかりました。そうしますね」

武器商人ヴァリアンと傭兵ザルレーは、このふたりのテントを訪れて、品物の査定をした。
ユーリのことが気になっていた男バロウは、昼間ふたりのテントに商人が来たのでユーリとエルマを強姦して金を強奪しようと深夜に襲撃しようとした。
バロウは美青年の傭兵ザルレーのチャクラムの餌食となった。
武器商人ヴァリアントは居住地に来て見張られている視線を感じ、傭兵ザルレーに念のためユーリとエルマの護衛を頼んでおいた。

蛇神の影響を受けて心が蝕まれた者が引き起こす凶事から、ユーリとエルマは逃れることができた。
ユーリとエルマは隠していた魔石などをすべて手放した。
武器商人ヴァリアントが買い取り、それを旅費にしてふたりはバーデルの都から逃げ出した。ブラウエル伯爵領のレルンブラエの街で、ふたりは酒場で働きながら、一緒に暮らすことにした。

このペンダントは持ち主に耐毒の力を与える銀のペンダントである。価値がわからない持ち主が何度も手放して、ついにバーデルの都の闇市まで流れついた。
護りの装飾品とは知らずに、ユーリはエルマに似合いそうだと買い求め、愛情の証として贈った。
レルンブラエの街でエルマは、護りのペンダントを常に肌身離さすに身につけていた。

バーデルの都に蛇神の贄が連れ去られる異界の門を開き、周囲の伯爵領から贄を捧げさせるヴァルハザードの計画を任せられたゴーディエ男爵がバーデルの都へ訪れた。元遊女のユーリと遊女見習いのエルマが、バーデルを去った翌日のことである。

再び闇市となっている市場、奴隷市場、賭博場の廃墟、遊郭の焼け跡、居住地にテントを張って暮らしている住人などを見てから、郊外の女伯爵シャンリーの邸宅へ赴いた。
ゴーディエ男爵は、勅命の書状を手渡すために邸宅を訪れた。

「こちらの邸宅に、令嬢エステル様はご在宅か?」

王都からの使者であると告げられたメイドのリタは驚いたが、すぐにシャンリーなか確認を取り、ゴーディエ男爵を応接間へ案内した。

ゴーディエ男爵は女伯爵シャンリーの養女エステルと対面した。
ゴーディエ男爵は、バーデルの領主として養女のエステルが女伯爵の爵位を継承し、バーデルの都を統治する内容の書状を読み上げ、エステルに手渡した。
シャンリーは、ストラウク伯爵領からバーデルの都に逃げ戻ると、急ぎでエステルを養女とする書状と、邸宅や賭博場や遊郭の土地や再建した時の権利をシャンリーから引き継ぐ手続きを王都に送っておいた。
ゴーディエ男爵は、魔族の眷族ヴァンピールである。魔族ヴァンパイアほど気配ではっきりと魔族の威圧感や雰囲気は、興奮して瞳の色が変わっていない限り、目立たない。
美少女エステルに、ゴーディエ男爵は魔族の眷族に似た気配を感じた。
だが、ゴーディエ男爵は自分の正体を隠すために、何も気づかない王都からの使者のふりを続けて、勅命を伝えるとすぐに邸宅から立ち去った。
バーデルの都に滞在すれば、領主のエステルに正体を見抜かれる気がした。

(あの男は何者かしら、呪術師ともちがう気配を感じました。まあ、私のすることを妨害するようならば、殺してしまいましょう)

王都からしばらく離れるためゴーディエ男爵は法務官レギーネに、パルタの都の小貴族の偽物の身分証明書を用意してもらい所持していた。
ゴーディエというパルタの都の小貴族ということになっている。偽物の身分証明書を所持して使用することは禁じられている。だが、例外がひとつだけある。王命により作られ、使用された場合は罪に問われない。ターレン王国では、国王の権限は絶対である。

酒場の主人にチップを渡すと、奴隷市場の情報は簡単に聞き出すことができた。フェルベーク伯爵領からの資金援助で、奴隷市場は再開することができた。そのため、奴隷市場の上客は以前は王都の貴族だったが、今はフェルベーク伯爵領の貴族たちが上客となっている。

「小貴族の方が仕事を探すのでしたら、バーデルの都ではなく、他の伯爵領の方がよろしいかと」

バーデルの都の領主がバルテット伯爵の頃には、市場を統括して取引される品物の価格まで管理するために、小貴族と警備隊が働いていた。
バルテット伯爵がランベール王によって王都へ連行されて、領主不在となり、小貴族たちは失職した。それからは、小貴族がバーデルの都ではいない状況が続いている。女伯爵シャンリーは、賭博場や遊郭の経営のために、パルタの都から小貴族を呼ばなかった。
女伯爵シャンリーが統治すると、警備隊ではなく親衛隊が闇市を取り締まり、かなりの者が捕らえられ、労役を命じられて、急いでバーデルの都の建て直しが行われた。

「そのため地震で倒壊した建物も多いというわけか」

酒場の主人はまだ、シャンリーの養女エステルが領主になったことを知らない。
シャンリーが貨幣偽装の容疑で王都へ連行され、執政官に親衛隊の隊長ギレスがなったが、地震のあとは姿を消した。
フェルベーク伯爵を暗殺して、そのままフェルベーク伯爵になりすましているところを、シャンリーに暗殺された。
そんな裏事情をバーデルの都の住人は知らない。
地震の直後から執政官ギレスは盗賊たちから賄賂を上納させることにした。


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