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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(中編)-1

バーデルの都はすべての伯爵領の中心にあり、スヤブ湖の祓いの儀式と王都トルネリカを震源とする大地震のあと、フェルベーク伯爵領の貴族たちの影響を受けながら、男色家のフェルベーク伯爵の資金援助により、奴隷市場から復興が始まった。
女伯爵シャンリーは、バーデルの都を、巨大な歓楽街のような都に作り変えようとした。
しかし、賭博場は倒壊し、遊郭は火災で完全に焼け落ちた。牡のリングと牝の指輪の製造も女伯爵シャンリーの身体と交換された美少女エステルが通貨偽造の容疑で捕らえられて処刑されて終わった。
奴隷市場は倒壊や火災から逃れ、バーデルの都では奴隷売買を認めるという法律も影響を受けずに残った。
歓楽街や伯爵領全域の巨大な市場に戻るにはまだまだ損壊が激しい。統治者がいないまま闇市が開かれ、盗賊と取引する闇商人が集まってきていた。
奴隷市場が再開されると、大地震の前のように、奴隷商人たちが訪れるようになった。奴隷市場は何も変わっていないように見えるが、客層が変わった。以前は王都の貴族たちや裕福な商人が、奴隷を買い求める主な客層であった。王都トルネリカでは震災で多くの死傷者が出た。死傷者のなかに奴隷市場の顧客だった貴族たちや裕福な商人たちがいた。新たな客層は、フェルベーク伯爵領の貴族たちだった。フェルベーク伯爵は震災直後は王都の宮廷議会が官僚が死傷して一時的に開けない状況となったのを理由に、伯爵の爵位の特権である自治権を行使して自領の男性の同性愛を主軸とする政策と法改正を行った。
さて、自領だけでなく、主な顧客がフェルベーク伯爵領の貴族となったことで、バーデルの都の奴隷市場にも美少年を競売にかけることが行われるという変化が生じていた。
表向きには隠しているが男色家の闇商人エラルドと同じ、フェルベーク伯爵領出身の奴隷商人たちが、奴隷市場を仕切るようになりつつある。
シャンリーは巨大な歓楽街にバーデルの都を作り変える計画を進めたのは、かつての古戦場の忌み地に眠る蛇神の信者たちの怨霊を呼び覚まし、いずれ蛇神を信仰する都にするためだった。
蛇神ナーガは肉欲や生殖に関わる神であり、恋愛は禁じないが、異性愛の神の教義であった。女性の同性愛でも交わりに
両性具有の秘術を用いた。蛇神ナーガと蛇神の女王ラミアという女神が伴侶として世界の均衡を保つとされている。
スヤブ湖に辺境の森と同じように異界の門を開くための贄を捧げるために、シャンリーはストラウク伯爵領を訪れたが、蛇神の下僕とされるカエル人まで出現して、異界化に成功するかと思われたが、祓魔師の一族の末裔が伯爵家であり、ストラウク伯爵や山の巫女マリカの呪術の結界の罠である奇問遁甲の陣によって贄を捧げるどころか、シャンリーが殺されかかるという窮地に追い込まれ、逃走する敗北を経験した。
各地の祓魔師の末裔である伯爵たちを始末しなければ、蛇神を信仰する神官にして女王としてターレン王国を支配する野望を達成するのは難しいとシャンリーは判断した。
そのために、まずシャンリーはテスティーノ伯爵を暗殺した。実は暗殺されたのは、テスティーノ伯爵の留守を任されていた古参の執事ベルガーだったのだが、シャンリーは気づいていない。
次に暗殺する予定だったフェルベーク伯爵は、シャンリーの身体と交換したエステルを処刑に追い込んだ親衛隊の隊長ギレスに暗殺されていた。ギレスは、美少女エステルの容姿をよく知る人物であることや、シャンリー排斥後に執政官となっていることや、ギレスはフェルベーク伯爵になりすましていたのも因縁を感じて、シャンリーはギレスを暗殺した。

(あの男色家たちめ、死んでもバーデルの都を蛇神の都へすることを阻もうとするなんて、許せないですわ!)

ギレスを暗殺後、統治者不在のバーデルの都へシャンリーは戻り、他の伯爵の暗殺する機会をうかがいながら、バーデルの都の女伯爵の邸宅に潜伏していた。
賭博場と遊郭は無くなり、残された奴隷市場の奴隷の絶望や恨みが、弾圧された蛇神の信者たちの怨霊を呼び覚ます呼び水となればと期待した。震災の死者、特に焼け死んだ遊郭の遊女たちが蛇神の贄であれば、奴隷市場の復興は、怨霊を鎮めのために建造されたバーデルの都の力を弱めてくれる朗報のはずだった。
しかし、男性の同性愛のための奴隷売買が、奴隷市場の取引の主流となってしまうことは、蛇神の信仰の教義に反する。
古戦場で最後まで抵抗して、身も心も蛇神に捧げるためのものと殉教したのは蛇神を信仰する女性信者たちであり、バーデルの都を建造する祟りをもたらしたのは、女性たちの怨念だった。
シャンリーは、人に対しての恋愛感情が欠落している。他の感情はかなり強い。
美少女エステルはロンダール伯爵が「僕の可愛い妹たち」に加えたいと思ったほどであり、容姿や秘められた才能はシャンリーも手放したくないと思った。
ただし、エステルのシャンリーに対する恋愛感情を利用はしたが、シャンリーの心は動かなかった。
聖騎士ミレイユは夜の女王ノクティスのミレイユを愛する気持ちを感じ、またミレイユもノクティスを愛している。ミレイユは愛情表現は苦手だが、ノクティスは、そこもまたミレイユらしいと受け入れている。心を重ねて融合している。
シャンリーは、蛇神ナーガがどれほど愛と豊穣の女神ラーナに片思いを続けているかも、賢者マキシミリアンやセレスティーヌのように想像できない。

闇商人エラルドから、各地の伯爵の噂を聞き出した。ブラウエル伯爵が同性の子爵と結婚した情報に、蛇神ナーガの信仰を排斥するのは、呪術師や祓魔師の一族の伯爵だけではないとシャンリーは感じた。

(テスティーノ伯爵よりも、先にブラウエル伯爵を始末しておくべきだったのかしら?)

バーデルの都の奴隷市場を支えている資金源がフェルベーク伯爵領の貴族たちである以上、女伯爵の地位をギレスとフェルベーク伯爵に奪われ、資金力を失った今のシャンリーには奴隷市場の変化を止められない。


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