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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(前編)-11

縄張り争いをしていた盗賊たちが、奴隷市場が再開されると、奴隷商人がバーデルの都へ訪れるようになり、まとまり協力するひとつの組織にまとまり、奴隷商人の真似事を始めた。
品物を盗むように人を拐い、奴隷商人へ買い取ってもらうようになった。闇市で盗品を闇商人に買い取ってもらい、奴隷市場で拉致してきた若い女性や少女を買い取ってもらう。
他の伯爵領から奴隷を買いつけてきて売る本物の奴隷商人からすれば、にわかに真似事を始めた盗賊たちは商売の妨害をするダニのような存在だった。
本来は関わらない盗賊と奴隷商人の関係に、利害関係の緊張が生じ、対立が始まろうとしていた。
盗賊たちはまた、バーデルの都に女伯爵シャンリーのような領主が王都から派遣されてきて、虐殺されるのを警戒している。逃亡資金を集めておき、危険な状況になったら分け合って逃亡するという闇商人エラルドの提案に賛同した盗賊たちは、儲けた金の四割ほどを闇商人エラルドに預けるようになった。
盗賊の顔役というような立場になった闇商人エラルドに、盗賊たちは奴隷市場に直接、人の買取りを持ち込むのではなく
奴隷商人である自分たちに商品を引き渡して欲しいと相談してきた。
闇商人エラルドは、フェルベーク伯爵領の貴族たちの要望から、美少年を集めなければならないので、奴隷商人たちの協力を得るために、盗賊たちに奴隷市場へ人を直接持ち込むのは、闇商人を通さずに自分で勝手に露店を開いて売るのと同じだと説得し、盗賊たちも奴隷市場に拉致して連れて行っても買取りまでに数日かかって思ったより安値で買い叩かれるよりも、奴隷商人たちは見た目で時には高値で買取ることがあり、また奴隷商人は、拉致した者を即日払いで換金してくれるので、奴隷市場へ直接持ち込むのは儲けや利点が少ない、また足がつきやすい。奴隷商人を介入させたほうが安全と判断して、盗賊たちは闇商人エラルドに直接奴隷市場へ奴隷を持ち込む者には、制裁を加えると約束した。
盗賊と奴隷商人の交渉人となった闇商人エラルドの寵愛する手下に、盗賊ビリーがいるとシャンリーは情報をつかんだ。
シャンリーは、盗賊ビリーを邸宅へ招き誘惑してから、地下室へ案内した。
地下室では、シャンリーを奴隷商人に売ろうとした盗賊が拷問されていた。
盗賊ビリーの目の前で、生爪を全部剥がされて、前歯も抜かれて、目隠しされている状態で、天井から垂れ下がる鎖と手枷で吊るされている盗賊は、命惜しさにペラペラと盗賊ビリーや闇商人エラルドの噂を話した。

「噂はあてにならないわ。ふふっ、だから、貴方に来てもらったのよ。本人に聞いて確かめたほうが早いもの」

それまで何でも話せば解放されるはず、そうなったら仲間を連れてきて、痛めつけられた分は、この生意気なメスガキにきっちり体で払わせてやると思っていた盗賊が言葉を飲み込んだ。

(なんだって、え、本人?)

闇商人エラルドが男色家でビリーがお気に入りという噂を、ペラペラとシャンリーに聞かれて話した盗賊リックが、部屋にシャンリーの他に誰かいる気配や物音に緊張して青ざめている。

「もうひとつ確認したいことがあるの。でも、このリックというおしゃべりな男は知らないって言うの。盗賊たちが貯めた隠し金は何処にあるのかしら?」
「てめぇ、リック。くだらねぇ噂なんかどうでもいいが、俺たちの隠し金の話をペラペラとしゃべりやがって」

盗賊リックは、話しかけてきた声を聞いて悲鳴を上げた。闇商人エラルドなら、泣いて謝罪してまとまった金を渡せば命は奪われないと思っていたが、話しかけてきた声は盗賊ビリーのものだった。

(くそっ、ここから逃げ出せても、ビリーに恨まれてるって仲間に話が広がったら、俺はバーデルの都にいられねぇ。メスガキ、とんでもねぇことしやがる)

「それとも、このリックは最低な嘘つきで、ありもしないことをペラペラしゃべって、逃がしてもらうつもりだったのかしらね」
「どうなんだ、リック?」

盗賊ビリーは、リックにわざと聞き返した。嘘だったと言えば、盗賊ビリーは話を合わせる気だろう。
しかし、拷問をクスクスと笑いながらするメスガキは、リックに嘘をついたと言われたら何をするかわからない。

(俺はどうすればいいんだ。どうすればこの場から逃れられる?)

「リックをこれだけ痛めつけて、こいつを逃がしたら、こいつの仲間に報復されるって考えなかったのか?」

盗賊ビリーはリックの両手両足の生爪か剥がされ、床に散らばっていることや、手の小指は両手とも折られて腫れ上がっているのを見て、さすがに顔をしかめていた。

「貴方はリックの仲間なの?」

シャンリーがわざと声色を幼い感じにして、盗賊ビリーに言った。

「リックと他にふたりいたけど、私にひどいことしようとしたの。だから、お仕置きしてあげてるの。ビリーがリックの仲間なら、ビリーもお仕置きしなくちゃいけないんだけど」
「おい、リック、このお嬢様に、てめぇは何をしようとしたんだ?」
「売り飛ばして上納金を作ろうとしたんですよ。俺たちがエラルドさんに金を毎月おさめてるのを、ビリーさんも知ってるでしょう? うぐっ!」

盗賊ビリーは、吊り下げられたリックの腹を思いっきり殴っていた。

「てめぇら、3人いてなんてざまだ。リック、一緒にいたのは、ホセとデニスだろう?」

リックだけがアジトに戻っていない。アジトは荒らされて、金目の物は持ち去られていた。リックがやったのか、留守番の3人のうちリックだけ連れ去られたのが。ホセとデニスはナイフで刺し合ったと思われる状態の遺体となっていた。

「てめぇら3人はいつも一緒につるんでいた。なのに、てめぇだけが姿をくらまして、ホセとデニスは殺し合ったみたいに刺し傷だらけでくたばってやがった。どういうことか俺に説明してみろ!」
「ホセとデニスが、死んだ?」

盗賊リックが、ひどく困惑していた。


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