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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(後編)-4

「ええ、いないですね。ダンジョンで生成される魔物娘は、おそらく今の世界で絶滅している種族だと思われます。アルテリスがいるということは、ダンジョンで、そうですね、しっぽの毛を数本わけてもらっても生成されないでしょう」
「女性の髪などをダンジョンに持ち込めば、その女性に似た人があらわれるというわけではないのですね」
「そうですね。もし、ダンジョンでそうした生成がされるとしたら、自分の好きな人の髪などを持ち込めば、容姿の似た人間が召喚できて、分身が作れることになります」
「遺品や遺髪から、亡くなった人とそっくりな人が作れても、記憶とかなかったら、余計にさみしくなるよ、きっと」

アルテリスは、夕暮れの帰り道でテスティーノ伯爵に言いながら、手をぎゅっと握っていた。

「スト様、今日の修行はすっごくおもしろかったよ!」
「ほほう、そうか、それはよかった。テスティーノ、公爵様に技を見せると言ったが、ちゃんとできたか?」
「兄者とちがって私は鍛えてますから。それよりも、公爵様が、私とアルテリスに魔法の法術を見せて下さいました。兄者は魔法を見たことはありますか?」
「ふふふ、テスティーノ、マリカと物置小屋へ行ってみよ。法術を使っていろいろやってあるから」
「ストラウク伯爵、魔法の仕掛けがあるのですか?」
「公爵様、いやいや公爵様にお見せするような法術ではないかと」
「マキシミリアン、おかえりなさい。ストラウク伯爵、私も見てみたいですわ」
「セレスティーヌ様まで、ん〜、テスティーノ明日、マリカと一緒に公爵様たちを物置小屋に案内してくれ」
「あたいも行っていい?」
「アルテリス、つまみぐいはしすぎないようにな」

マキシミリアンは、物置小屋を見て、テスティーノ伯爵の法術についての考え方に感銘を受けることになる。
自然と共存するための魔法。エルフ族にも共通する自然に対する敬虔な考え方を法術の使い方に感じたのだった。
ザイフェルトも感心していたネズミ避けの仕掛けを、マリカはマキシミリアンにも質問されていた。また、セレスティーヌに森の動物たちの餌場に来た動物たちが、まるでセレスティーヌに挨拶をするように来るので、マリカやアルテリスは驚いていた。

「セレスティーヌ様は、火の神殿の神官みたいだ。動物を手なずけるのがうまいね」

ヘレーネはレチェを連れている。アルテリスは火の神殿の神官でも力がある者は守護獣を連れて歩いていることを思い出して、セレスティーヌに語った。

「僕は、セレスティーヌになついている動物なのかもしれないな」

アルテリスとマリカは賢者マキシミリアンがつぶやいた言葉を聞いて、思わず顔を見合せて、クスクスと笑っていた。
アルテリスとマリカは、ストラウク伯爵はネコっぽい、テスティーノ伯爵は犬っぽいと小声て話していた。

レナードと精霊たちの融合で、レナードとランベール王にかけられた呪いの因果を切り離す。
ランベール王とレナードが呪いの因果でつながれていれば、愛と豊穣の女神ラーナと婚姻することは虚脱していてリーナと心が通じ会うことができずに難しい。
さらに、呪いをかけたと思われるシャンリーは、辺境の村を焼き討ちにしていてその後、辺境の森で蛇神の異界の門が開いていることから、シャンリーは蛇神との因縁がある可能性が高い。したがってレナードが蛇神ナーガの因果による呪いをかけられていたら、リーナと接触させるのは危険。蛇神ナーガの化身へレナードが変化して、リーナを奪われたら世界に蛇神の障気が満ち、浄化の力が強い世界樹も、リーナを世界樹の精霊に変化させたマキシミリアンのせいで失われる。
リーナと安心して会わせるには、レナードをシャンリーがかけたと思われる呪いから、解放する必要がある。
解放しなければ、レナードとランベール王の命はつながっていて、ふたりは同じ時期に、どんなに離れていようと命を落とす。
レナードが虚脱している状態で、ランベール王が健康に生活していられるはずはなく、レナードの虚脱した肉体は精霊たちでも動かせることから、憑依されているか呪いで操られているのではないか。
賢者マキシミリアンは、そこまで予想した。その予想通り、ランベール王の肉体はローマン王の亡霊と蛇神のしもべに乗っ取られている状況だった。
呪術で不死を目指した教祖ヴァルハザードの肉体に宿っていたいわくつきの影響力の強い蛇神のしもべが憑いている。
ランベール王が、ゼルキス王国の侵略を狙う国王であり辺境の村人たちのような犠牲者をさらに増やすようなら、虚脱したレナードを犠牲にして崩御させるために呪いを解かず、リーナにレナードが転生してくるまで、ダンジョンで待ち続けてもらうこともできる。世界樹が枯れても種があり、種がまた大樹になり、それをエルフ族が世界樹を守り何度も繰り返しているうちに、レナードの転生者があらわれるかもしれない。
しかし、その前に蛇神の異界の門から流れ出した障気が世界に満ち、障気で人の心が穢れ荒れ、エルフ族も戦乱に巻き込まれて滅ぶ可能性はある。愛と豊穣の女神ラーナの化身であるリーナが世界樹が失われて、樹木の精霊ドライアドの身体を失われたら、転生まで女神ラーナの人の心に与える希望や愛情はさらに失われる。そうなればかつてのアルテリスがいた時代には生きていた種族のように、人間も滅びるかもしれない。
女神ラーナがまた人間に転生してくるかなんて、マキシミリアンやセレスティーヌにはわからないことである。

レナードの呪われる直前の記憶。
途切れて破片のような記憶。
凌辱された記憶。
リーナの名前を必死に思い出そうとしているレナードの苦悩。
射精が命を蝕んでいく。快感でありながら、同時にそれは拷問。
媚薬の香炉の毒煙の酩酊。

それをマキシミリアンは精霊たちを融合させる儀式の時、感じ取って泣きながら魔力を精霊たちに与え続けた。
精霊たちの記憶もマキシミリアンに流れ込む。


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