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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(前編)-8

リーナの緑色の髪や美しい容姿、声や雰囲気まで以前とはちがう。
しかし、マルティナは目の前にいるのがリーナだとわかった。

「ミレイユ様が貴女が蛇神の異界へ連れ去られるのを防げなかった事をとても悔やんでおられ、ロエル様から貴女が生きている聞いてからは、とても会いたがっておられます。しかし、ミレイユ様は異変の影響からゼルキス王国を守らねばならず、今は状況を考えると離れられないので、私が会いに来ました」

マルティナは姉のエルヴィールが、聖騎士の試練で蛇神の異界へ連れ去られた生還者だったことを、リーナやマキシミリアンたちに語った。

「だから、リーナが蛇神の異界へ連れ去られても、ミレイユ様は希望を捨てていませんでした」

リーナもミレイユに会いに行きたいが、できないとマキシミリアンが言った。

「ロエルが行った賢者の石の錬成と、ダンジョンで行った召喚も成功した。しかし、仕上げが残っている」

リーナは、ダンジョンから他の魔物娘と同じように出られない。無理にダンジョンから出ようとすれば、ドライアドの姿から賢者の石へ戻ってしまい、リーナの記憶や心が喪失する危険がある。

「蛇神ナーガから花嫁を奪い、この僕たちの暮らす世界への影響力を弱めておきたいところだ。そうすれば、騎士団の戦乙女たちなら異界の門を祓うことができる可能性は高くなる。そうでなければ、さらに犠牲者が増えて、解決する手立てを僕らは失いかねない」

賢者マキシミリアンが、隠された才能を見込んで騎士団に入隊させた少数精鋭の乙女たちは、ゼルキス王国の戦乙女と呼ばれる。これは聖騎士ミレイユが、戦女神と呼ばれるためである。
その実力を認めた上で、細工師ロエルによる秘策をもってしても、異界の門を祓うことは今のままでは、犠牲を覚悟しても祓うのは難しいだろうとマキシミリアンは、クリフトフ将軍や参謀官マルティナに語った。

「クリフトフ、マルティナ、僕たちはリーナちゃんの伴侶の運命を持つ相手を、ミミック娘とダンジョンの力で探索してもらっている」

賢者マキシミリアンは、リーナが婚姻すれば蛇神ナーガの花嫁になる運命から逃れられるので、それで蛇神ナーガがこちら側に干渉する祟りの力が弱まると、クリフトフ将軍と参謀官マルティナに説明した。異界の門は、蛇神ナーガがこちら側の世界から花嫁を奪うために開かれている。リーナはダンジョンの中に閉じ込められているが、ダンジョンの力で蛇神のしもべから身を隠すことができている
状況なのである。

「ダンジョンのおかげで、ニアキス丘陵には、辺境の森のように異界の門は開かない。蛇神ナーガの影響力が弱まるのが先か、結界が破られるのが先かという状況だけど、今はまだ異界の門を祓うには適していないことを、ミレイユとロエルに伝えてほしい」
「公爵様、わかりました。必ずふたりに伝えます」
「マルティナ、国境の魔法障壁が破られそうだと思っても絶対に強化しようとしないこと」
「はい、セレスティーヌ様」
「障壁が破られても、すぐに影響はあらわれません。ゼルキス王国は信仰心が強い人たちが暮らしています。貴女が生きることも世界の運命に関係していることを忘れないように」
「はい、セレスティーヌ様、ありがとうございます」

クリフトフ将軍は、親友のマキシミリアン夫妻に、何か協力できることはないかとたずねた。

「クリフトフ、息子のレナードについて僕らに話していないことはないか?」

クリフトフは、リーナやマルティナの顔をちらりと見て、少し気まずそうに過去に愛人の亡霊に祟られた話を始めた。

クリフトフには前妻の娘フレイヤと、その後、つきあった愛人の連れ子で養子にした息子のレナードがいる。
愛人は前妻の娘であるフレイヤを呪う儀式を密かに行った。まだ3歳のレナードを生贄として、前妻の娘フレイヤに呪詛を実行した。
フレイヤは原因不明の高熱を出した。
しかし、生贄にされるはずだったレナードを儀式が行われていた空き家から7歳のフレイヤは、熱を出した状態で私の弟を助けると言い、閉じ込められていた泣いているレナードを見つけ出し、手をつないで連れ出して空き家から救出した。
生贄が失われたので、呪詛の術が術者に返って、愛人は血を吐いて死んだ。

「女が俺に隠して連れていた3歳のレナードが、その女の産んだ子なのかもわからない。レナードはフレイヤと血はつながっていないが、ずっと姉弟として暮らしてきた。レナードがハンターになりたがったので、このダンジョンに連れて来た事もある。ところでマキシミリアン、なぜ、今、俺の息子のレナードについて話を聞きたいと思ったんだ?」
「クリフトフ、僕らはレナードの行方を探しているんだ。リーナちゃんの運命の伴侶というのはレナードのようなんだ」
「おいおい、それは無いだろう」
「クリフトフ、これはまじめな話よ。貴方の息子のレナードは何処に行ったか、神聖教団の情報が隠されているわ。貴方やフレイヤに何か彼は伝えていない?」

セレスティーヌに言われて、クリフトフはわからないが、フレイヤに確認してみると答えた。

「異界の門が開く前に、レナードがリーナちゃんを神聖教団の僧侶を辞めさせて結婚していたら、異界の門は開かなかったはずだ。過ぎた事は言っても仕方ないのはわかっているが、クリフトフにも責任はあるぞ」

賢者マキシミリアンがそう言って、深いため息をひとつ吐き出した。

「レナードをダンジョンに連れてきて、結婚させれば蛇神ナーガの干渉を弱められるのよ」
「俺にはレナードとそこにいる別嬪なお嬢さんが結婚すれば、どうしてそうなるのか、まったくわからんよ」

賢者マキシミリアンは、呪詛で7歳のフレイヤが高熱を出したのと同じで、世界の運命を、誰かに呪術で変えられたのだと説明した。

リーナがレナードからあずかり、ターレン王国からギルドの受付嬢フレイヤに宛てた手紙を運んだ。


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