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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(前編)-3

リーナの身体を奪い蛇神ナーガと交わろうとした神官の怨霊たちは、蛇神ナーガに伴侶ではなく、贄とされた。

ランベール王やシャンリーは、蛇神ナーガの異界の夢をみても、悪夢と感じうなされることはないだろう。

ランベール王の後宮やシャンリーが作り出した遊郭は、蛇神ナーガの異界と同じ女性たちの心を蝕む苦界であった。
肉欲と快感に女性が溺れる場という意味で、後宮や遊郭は蛇神ナーガの異界に近づいている場なのだった。
ランベール王やシャンリーにとって、世界を淫獄のように感じている。
愛情にあふれた優しい世界だとまったく感じていない。力が弱ければ犠牲になって死ぬ。肉欲でさえ力だと、教祖ヴァルハザードの記憶と身体を継いだランベール王や、呪詛や毒物を使い生き抜いてきたシャンリーは知っている。

他人のために身や心を犠牲にして耐えることで、他人から求められ必要とされていると感じ、自分の価値や生きる意味を感じる者は、他人と自分をくらべて優越感と落胆を繰り返す。遊郭の遊女たちは客が訪れている日は優越感を感じる。客がまったく来ない日は、自分は誰にも必要にされていないと感じて落胆する。
後宮の側室たちも王から寵愛されないことで、寵愛されている愛妾に仕えることでしか自分の価値や存在意義を感じられなくなる。
蛇神ナーガの異界で肉の洞窟に取り込まれていく吸収される贄たちは、自分の存在意義は取り込まれることだと快感を感じながら自意識を喪失する。
僧侶として他人から法術や女神の教えで癒してもらいたいと求められ、自分を犠牲にして耐えることに存在意義を感じる優越感のようなものは、身体を怨霊たちに奪われる瞬間までリーナの心のどこかにもあった。
美徳でありながら時には愚かさでもある心のありかたに、リーナはダンジョンを脱出する瞬間に気づき、リーナの心は深く傷ついた。他人を救えると思って行ったことが無残な結果を生み出し、他人も自分も救えないこともある。
それを賢者マキシミリアンやセレスティーヌ、細工師ロエルや弟子のセストと心を通わせたことで認め、自分の心の愚かさも許し、受け入れていくことで変化を続けてきた。

リーナの心が深く傷ついた時、ハンターのレナードも自分の無力さを実感し、他人を救えると思い耐えることが、他人も自分も救えないと絶望した。
シャンリーに命じられ、レナードに快感を与え続ける役目を与えられた女性たちをレナードが拒めば、娼婦の女性たちは存在意義を失う。自分がせめて耐え抜いて死ねば、娼婦の女性たちは存在意義を失うことはない。シャンリーに役立たずと儀式の生贄として殺害されることは逃れさせることができるはずだった。
猛毒の媚薬の香を焚かれてレナードを愛撫していた女性たちが、レナードよりも先に自我が崩壊していく。レナードが耐えた結果、救いたいと思った人たちの心が無残に壊れていく。
レナードは娼婦の少女に逃がされた。娼婦の少女は、シャンリーに生贄の贄にされた。
レナードがシャンリーの娼館の地下牢から脱出した時、リーナの心が封じ込められた錫杖も蛇神ナーガの異界からダンジョンへ脱出している。
レナードを逃がした少女は、娼婦となる前に飢えて動けなくなっていた時、レナードから食事を恵まれたことがあった。
レナードは恩を売るつもりもなく、別行動のリーナも苦労していないかと思いながら、少女に自分の名前も告げることもなく助けた。
自分が拷問している相手がその時の恩人だと、媚薬の香で頭がぼんやりしていたが少女は思い出し、レナードと一緒に逃げ出そうとしたが、少女がおとりとなることでレナードが逃げられ、獣人娘アルテリスに救助された。
少女もレナードに恋をしていた。
この少女は、辺境で焼き討ちされた村の生き残りで娼館から逃げ出していたのである。シャンリーがガルドから買い取った奴隷の少女だった。
少女は捕まり娼館へ連れ戻され、レナードを拷問する役目を与えられた。
焼き討ちされた村の村人たちと同じように、シャンリーによって蛇神のナイフで腹を裂かれて少女は贄にされた。
死の凶運からレナードを逃がしたことで恩返しをしたが、他の村人たちと同じように彼女自身は死を逃れられなかった。
アルテリスはリーナによって感応力が覚醒し、生贄にされた村の女性の亡霊が変化した、翅を持つ小人のフェアリーたちを連れて歩いていた。
少女の亡霊は、消滅する前にフェアリーたちに心身消耗したレナードの居場所を知らせた。
フェアリーたちは少女の亡霊の想いを引き継ぎ、またアルテリスの心の母性の影響もあり、絶望して心身消耗しているレナードを護る精霊になった。

リーナの心が癒されていくにつれて、精霊の護りは強くなり、レナードの心にフェアリーたちは呼びかけ続けた。

シャンリーの身代わりとして、身体を交換することになった美少女エステルは、シャンリーを愛していた。そして憧れていた。その想いは、本当にシャンリーと身体を交換するという変化によって叶えられた。しかし、シャンリーの身代わりとして捕らえられ、エステルの心はシャンリーの身体と一緒に火炙りの焔に焼かれて消えてしまった。

女神ラーナでありながら、女神の記憶や奇跡の力を失い、人の身となり僧侶リーナとして生きている。
もしも、ハンターで神聖教団の案内人でもあるレナードがターレン王国から僧侶リーナを逃がさずに、シャンリーと僧侶リーナが出会っていたら、どうなっていただろうか。レナードを逃がした少女のように生贄にされていたか、美少女エステルのようにそばに置いて、心ごとすっかり飼い慣らしてから、呪術に利用しようとしたかもしれない。
蛇神の錫杖を、蛇神ナーガの伴侶ではないシャンリーには、リーナから奪い取ることができない運命だった。
だから、レナードがリーナをゼルキス王国へ逃がしたのは彼の決断による運命の選択だが、レナードはリーナの代わりにシャンリーに捕らえられて、拷問される凶運を身に受けることになった。


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