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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(前編)-10

レアンドロ王は、ゼルキス王国の国王にすぎないが、マキシミリアンとセレスティーヌには今までの行動の実績がある。大陸各地の国々との関係から考えるとレアンドロ王よりも影響力がある。
ターレン王国を大陸各地の国々と対立させることなど、レアンドロ王の命ひとつあってもとてもできないが、マキシミリアンとセレスティーヌの命ならできてしまう。
圧力をかけるという意味では、これほど気を使わなければならない厄介な外交の使者はいない。
ゼルキス王国との同盟や利権のからむ交渉ではなく、神聖教団から派遣された案内人を探して連れ帰るという目的の使者に、ターレン王国としては、ふたりに協力はしないとしても無視して勝手に探索させるところで妥協するだろうとレアンドロ王は予想した。
ふたりを国内情勢を探る密偵として捕らえて処刑すれば、レアンドロ王を処刑するよりもターレン王国にとっては不利益がある。
ふたりがレアンドロ王の用意した使者の証書を提示してから、ふたりを捕らえようとしたターレン王国の衛兵を撃退してもゼルキス王国が責任を問われることはない。もしふたりに密偵の疑いがかけられても、使者として逃げも隠れもする必要がない。

「セレスティーヌ、僕らはゼルキス王国の外交官になったらしい。衛兵ぐらいなら、書状を見せれば追い返せる」

賢者マキシミリアンとセレスティーヌはクリフトフ将軍から、王の証書を手渡された。
この証書はとても役立った。
ただし、ランベール王に対して役立ったわけではない。

「じゃ、ミミック、ダンジョンの儀式の間の魔法陣を転移の魔法に変更して、レナードがいると思われる場所へ僕らを運んでくれ」
「御主人様、ターレン王国の王都トルネリカ、パルタの都、バーデルの都には転移の魔法陣で移動できず、またダンジョンへ戻ることができません。魔法を妨げる力が働いているようです」
「わかった、おぼえておくよ。僕らが今から行くのは、その3つの都てはないってことだな」
「そうです。ターレン王国の南西の方角にある山岳地帯です」
「んー、そんな山奥に人が住んでいるのかな?」
「まあ、見つからないように、国境からずいぶん離れたところまで逃げたのね」
「そうだね。リーナちゃんとレナードは国境付近の宿場街で別行動になったって話だったから、そんなターレン王国の奥地にいるとは予想外だったな」

ミミック娘が魔法陣の調整中の待っている間に、ミミック娘の部屋に集まって来たリーナと魔物娘たちに、マキシミリアンたちは声をかけていた。
本当は魔物娘たちがマキシミリアンと一緒に外へ行ってみたいのはわかっているし、リーナもレナードに会いに行きたいと思っているのはわかっている。

「リーナちゃん、レナードを連れて帰ってくるからな。レナードに会うのは久しぶりだ。まだクリフトフにくっついてダンジョンに来て、迷子になってたレナードを僕らが探して見つけたことがあるんだよ」
「そんなことあったわね。レナードは私たちのことをおぼえていると思う?」
「きっとおぼえてますよ。セレスティーヌ様はすごい美人ですから」

リーナに、セレスティーヌがにっこりと笑いかけた。錫杖にリーナの心が封じ込められている時に、セレスティーヌはリーナがどれだけレナードのことが好きなのかを感じ取っていた。

「スライム、上の子犬と遊んでも大丈夫だぞ。クリフトフによるとダンジョン探索を中止してるらしい。クリフトフとマルティナ以外は来ないとは思うけど、子犬が知らない人に捕まらないように見ておいてくれ」
「うん、早く帰ってきて下さいね」

スライム娘の頭をマキシミリアンが撫でると、スライム娘がさみしそうな表情から笑顔になった。

「アラクネ、レナードを連れて帰って来たら服を作ってもらいたいの」
「リーナさんとおそろいの服でも作りましょうか?」
「それもいいわね、ふふっ」

アラクネ娘とセレスティーヌはふたりでそんな話をしていた。

「御主人様、なんかめずらしいものがあったら、持って帰ってきてよ」
「オーグレス、わかった。ターレン王国に行くのは僕らも初めてだから、ダンジョンで見たことないものを持って帰ってくるよ」

オーグレスは、マキシミリアンにギュッと抱きついた。腕力があって逞しい見た目だが、とても甘えたがりなオーグレスにセレスティーヌは思わずクスッと笑ってしまう。とても可愛いところがある娘だと思った。

「御主人様、セレスティーヌ様、準備ができました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「うん、ミミック、行ってくるよ」
「留守番、お願いね」

儀式の間の魔法陣から賢者マキシミリアンとセレスティーヌは、ターレン王国のストラウク伯爵領へ瞬間移動した。
マキシミリアンとセレスティヌは満開の桜の樹とマリカの母親の前であった。

「マキシミリアン、可愛くてきれいな花ね、それにとても良い薫り」
「ああ、サクラという花だよ。大河バールの東方でなら見かけるけど、ゼルキス王国にはない。ターレン王国に、種をまいて育てたのかな?」

しばらくマキシミリアンとセレスティーヌは、暖かな春の日ざしを浴びた満開の桜の樹を見つめていた。

「伯爵様、桜の樹のところに誰かいるみたいだよ」

山道を歩いていたアルテリスが、テスティーノ伯爵に言った。アルテリスは遠目がきく。
テスティーノ伯爵とアルテリスは桜の樹を見上げているマキシミリアンとセレスティーヌに声をかけた。

「ゼルキス王国から来られたのですか、それはずいぶん遠くから。大変だったでしょう」
「ええ、まあ。これはサクラですね」
「ほお、よくご存知ですね。そうサクラの樹ですよ、ゼルキス王国にもサクラの樹はあるのですか?」
「いえ、シャーアン王国へ行ったことがありまして、そこで僕は見たことがあるんです。妻は初めて見たので、見惚れていたところです」
「私の前妻もこの樹と花が好きでした」


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