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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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王都奇譚-5

ブレスレットとアンクレットも剥ぎ取るために指先がふれた瞬間、眉をしかめながら、王はビクッと手を引いた。

踊り子アルバータ。
鍛えられて無駄な弛みのない身体つきの美しさに、ふくよかな白い乳房や女性特有のなだらかな腰つき、ほっそりとした首すじは艶かしさを添えている。眠り込んでいる顔立ちは、切れ長だが、二重まぶたの目鼻立ちがはっきりした整って凛とした顔立ちである。踊りやすいように束ねられていた髪飾りの布も解かれ、しなやかに流れるさらりとした金髪が、肩のあたりにかかっている。

「レギーネ、この小娘の寝息がそこでも聞こえているか。ふぅ、はぁ、はぁ、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ、ふぅ、と身体を目覚めさせる息吹きの法を使っている。今、こうして話している声も、この小娘は眠ったまま聞いているかもしれない」
「舞踏会が終わる頃までは目を覚ますことはないはずなのですが。それより、手をどうかなされたのですか?」
「この銀の腕輪と足輪がこの小娘を守りながら、力を封じているようだ。これはおもしろい。アリアンヌ、シュゼット、ミリア、レギーネ、小娘から奪ったら、それぞれひとつずつ身につけよ。ゴーディエの命を奪いかけたその血の飢えを、装身具がうまく鎮めてくれるだろう」

右腕、左腕のブレスレットと、右足首、左足首のアンクレットを4人で分けて身につけるように王に言われ、女性たちは顔を見合せて微笑した。
4人はどうやら、王から贈り物をされることがうれしいようであった。

ゴーディエ男爵の覚醒の試練で、4人の女性たちがもう一滴も出ないというぐらいゴーディエ男爵の精液を、たっぷりと搾り取った。
27歳でまだ若いとはいえ、4人を相手に疲れ切って、仰向けにベッドの上で身を投げ出すように脱力した直後、興奮した4人から、ゴーディエ男爵は上腕と太腿を鋭い牙で咬まれた。

「ゴーディエ様の右腕を咬んだ私は、右手のブレスレットを頂戴致します」
「ミリアは左手のブレスレットです!」
「ふふっ、私たちはアンクレットです」
「ええ、とても美しい品物です」

覚醒しなければ、ゴーディエ男爵はそのまま死ぬところだった。

「ゴーディエには、この小娘をやろう。護りのブレスレットとアンクレットは外しておいてやる。服を脱いでベッドに上がれ……殺されるなよ!」

アルバータから王は踊り子の衣装を剥ぎ取った時よりも、かなり慎重に白銀の鎖のブレスレットとアンクレットを外してベッドから降りてきた。
ミリア、レギーネ、アリアンヌ、シュゼットの順番で、王はブレスレットとアンクレットを4人につけていった。

「私たちが戻るまでに、小娘を手なずけておけ。レギーネ、すまないがここに残ってくれ」
「わかりました、舞踏会に行ってらっしゃいませ」

ゴーディエ男爵と法務官レギーネで、踊り子の試練をする。王は殺されるなと言った。ゴーディエ男爵と法務官レギーネが殺されることがあれば、王は舞踏会の会場にいるほうが安全だろう。
3人の愛妾たちが、王に衣服を着させて寝室から舞踏会へ出かけてゆくと、寝室には踊り子のアルバータに、ゴーディエとレギーネの3人が残された。

ゴーディエ男爵の目の前には美しく艶かしい踊り子アルバータが仰向けに眠らされ、呼吸のたびに胸や腹部が動いているのが見える。

「我らの王は、息吹きの法といっていたが、レギーネにはわかるか?」
「二重息吹(ふたえいぶき)。持久力を高める呼吸法です。身体に息をめぐらせることで血を身体にゆき渡らせために用いられます。ゴーディエ様、目を覚ましたようです」

アルバータが目を開き、ゆっくりと上体を起こして、全裸のゴーディエと、ベッドのそばに立つレギーネを見つめた。
踊り子の衣装は脱がされ、装身具が外され奪われていることに気づいたようだ。

「ゴーディエ男爵、私を辱しめるおつもりですか?」

しなやかな腕で胸元を隠し、踊り子アルバータはキッと怒りの表情で、ゴーディエ男爵をにらみつけた。

「これは驚いたな。もう話せるようになったというのか」
「毒を盛るとは卑怯な事をなされる。このように他の女たちも辱しめてきたのですか?」

眠りの秘薬を飲まされたら、6時間は眠り、目を覚ましても身体は重く、意識は朦朧となり、会話などできない状態になるはずだが、アルバータは1時間半ほどで回復したのである。ゴーディエ男爵に毒物を服用させられたのも、彼女はわかっているようだ。

舞踏会は今夜も盛大に行われている。楽団が演奏し、着飾った貴族たちが歓談して、料理を食べている。
貴族たちは立食だが、若き君主だけは椅子とテーブルが用意されていた。両肘をついて舞踏会の様子をながめている。
王の左側に楽団、右側に愛妾たちや給仕の者たちが並んで控えている。王が右手をすっと上げる。3人の愛妾たちが、給仕たちと王のテーブルへ皿に乗せられた料理を並べる。

後宮の寝室ではゴーディエ男爵が踊り子アルバータをベッドの上で押し倒し、愛撫して、唇を奪おうとすると踊り子アルバータが顔を横に向けて逃れる。
踊り子から奪ったブレスレットを身につけたレギーネが、アルバータと目が合うが、冷静な目て無言のまま見つめ返す。
アルバータの身体の上にのしかかったゴーディエ男爵の手は、踊り子アルバータのふくよかな乳房をわしづかみにして指を食い込ませながら揉みしだく。

舞踏会では優雅な穏やかな曲が流れ、大広間の中央の大テーブルには、料理と一緒なか乗せられている燭台の蝋燭の灯火が揺れる。
貴族たちの談笑する声と微笑み。交わされるまなざし。品定めをするような視線と、相手の唇の動きを見つめて肉欲を露骨にぶつけないようにごまかしている視線。
王は料理をゆっくりと咀嚼し飲み込む。酒杯の果実酒を口に含むと芳醇な薫りが広がる。

レギーネが微笑みを浮かべた。踊り子アルバータが必死に抵抗している姿を、興奮して無言で見つめている。


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