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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-7

「ただいま〜、おっ、マリカ、美味しそうな匂いがするな」
「おかえりなさい、ってアルテリスさんつまみ食いしたらダメですよっ!」
「あの、ザイフェルトは?」
「お部屋のほうにいると思いますよ。体調は悪そうではありませんでした」
「そうですか、マリカさん、ありがとうございます」

ザイフェルトの見えない力を最も強く感じるのは、射精する時ということを話すために、アルテリスとフリーデは、ストラウク伯爵の山の家のそばに建てられた焼き物作りの工房へ向かった。ストラウク伯爵は、山の土と温泉の湯を使い、酒杯や皿などを作るのが趣味だった。マリアが山の家に嫁いでくる前から、焼き物作りで念を込める加減の鍛練を、ストラウク伯爵は続けてきた。
書庫や焼き物の工房、居間の囲炉裏の前でストラウク伯爵は親しい者たちと語り合うのをとても好む人物だった。

「伯爵様、念の力を集める練習を、ザイフェルトとフリーデは言われなくてもやってたみたいだよ」

フリーデは、ザイフェルトがいつ我慢しきれずに射精するのか、感応力で察知できるようになりつつあることや、その力は子爵シュレーゲルとの戯れから感じ始めたことも語ってから、ザイフェルトが射精する瞬間に念の力を、精液を膣奥へ注ぎ込むように流し込んでくることを告白した。

「そうか、だからザイフェルトは全身で念の力を発してしまって、加減を知らないというわけか」
「ザイフェルトが無垢なる境地の念を発することができるようになったのは、フリーデのおかげだったのだな」

ストラウク伯爵とテスティーノ伯爵が、
フリーデの感応力やザイフェルトの念の力の覚醒に腑に落ちた表情を浮かべてうなずきあった。

「子爵シュレーゲルは伯爵家の血統の者だから、私や兄者と同じように先祖から才能を継いでいるのだろう。強い才能を持つ者に知らぬうちに触発されて、力に目覚め始めることはある。アルテリスも僧侶のリーナという者と辺境で知り合い親しくなって、感応力に目覚めた」

テスティーノ伯爵はフリーデに言った。フリーデはストラウク伯爵とテスティーノ伯爵に、自分たちはこれからは何をすれば良いのか質問した。

「フリーデ、焼き物は窯で焼き上げるのだが、火加減が強すぎても、また弱すぎても良い物はできぬ。ザイフェルトは、まだ焼かれていない焼き物のようなものだ。皿にも小壺にも、まだ形を作り変えることができる。そしてフリーデは、ザイフェルトにとって窯のようなものだ」

ストラウク伯爵は、棚から美しい青磁の大皿をフリーデに手渡した。フリーデは手から落としてしまわないように、慎重に受け取った。

「アルテリス、今、フリーデは皿を落とさぬように緊張したのがわかったかな。ザイフェルトに抱きつかれた時、アルテリスも大事に落とさぬように抱えたのと同じことだ。不思議に思っておるようだが、アルテリスは意識せずにザイフェルトを護ろうとしたのだよ」

ストラウク伯爵は、アルテリスにも笑顔で話しかけて教えた。

「フリーデ、酒の小壺には酒が入れて運ばれる。皿には料理した食べ物が盛りつけられる。同じ土と水と火から、ちがう役割の酒の小壺と皿ができあがる。ザイフェルトとフリーデも、ふたりでよく話し合い、今後のことを考えることが必要だ。祓魔師の道を選ぶか、武術を極めてゆく道を選ぶか、ザイフェルトはどちらの生き方も選ぶことができる。村人として、ぐい呑みや花瓶にもなれる。フリーデ、その大皿は、雨上がりのあとの雲の切れ間から見える青空と同じ色をしているから、美しいであろう?」
「はい、とてもきれいな色です」
「ザイフェルトの念の力も、その色のような美しさがあるよ。だが、ザイフェルトの心が乱れたらその美しさは、立ち込めた雨雲ような色にも、雷光のように恐ろしいものにさえ変わるだろう。ザイフェルトの心をよく感じ、美しさを保つのは伴侶として一緒に生きる者こそがふさわしいだろう」

ストラウク伯爵は、じっと大皿を見つめているフリーデに言った。

「ふふふ、その皿はふたりがこの山の家から別のところで暮らすために離れる時に、ザイフェルトとフリーデに私から贈らせてもらおう。気に入ったようだね」
「えっ、このような素晴らしいものを、よろしいのですか?」
「物は持ち主を選ぶという。また持つ者の気持ちが宿るとも言われている。アルテリス、この皿はどうかな?」
「う〜ん、魚の切り身を乗せても、肉を焼いて乗せても良さそうだよね!」
「フリーデ、聞いたかね。食いしん坊のアルテリスはその皿ではなく、その上に乗せる料理のことを考えているよ」

フリーデは、少し戸惑った表情でストラウク伯爵にそっと大皿を返した。

(この大皿は、料理を乗せることもできるが、別の使い方もできる物だと、フリーデはなんとなく気づいたようだ)

「さて、そろそろ今夜の食事の準備ができた頃だろう。家に戻るとしよう」

もし、リヒター伯爵の邸宅に呪物が持ち込まれていた時に、この大皿の上に乗せてやることができていたら呪詛の威力を半減させることができただろう。
ストラウク伯爵領の土と水を、ストラウク伯爵が、念の力を込めながらこねて、窯で火の浄化の力も加えて作ったこの大皿は、護りの呪物ともいうべき品物なのであった。
細工師ロエルがこの大皿を見て、手にふれることがあれば、かなり興味を持つだろう。
たとえば毒茸を使った料理がこの大皿に盛りつけられ他の料理と並んでいる時、とても嫌な感じがする。それでも鈍感で気づかすに、誰かが料理に手をつけようとすれば、この護りの大皿は割れて危険を知らせてくれる。

ザイフェルト以外の全員が居間に集まって、ザイフェルトを待っていると呼びに来たフリーデに言われた。

「顔色が悪いわ、熱はないみたいだけどすごい汗、ザイフェルト、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」

ザイフェルトは、ふぅっと深く息を吐き出すと、ゆっくりと立ち上がった。


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