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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(前編)-9

マリカとアルテリスには「すごくいいこと」の意味はすぐにわかった。
ストラウク伯爵とテスティーノ伯爵がザイフェルトに、交わっている時に体の快感だけでなく、心がひとつになったような蕩けてしまいそうな悦びを感じることを「すごくいいこと」と言っている。

「フリーデさん、かわいそう」
「マリカ、そんなこと言うなよ。ザイフェルトだって、がんばればわかるようになるかもしれないんだからさ!」

フリーデは、マリカとアルテリスが自分のことを同情している意味がわからなかった。ザイフェルトとフリーデが、交わりの本当の「すごくいいこと」をまだ知らないことに同情している。

「ザイフェルトとフリーデの力が覚醒すれば、祟りはふたりに災いをもたらすことができなくなる。しかし、きっとジャクリーヌ婦人は、自らの行いの報いを受けることになるだろう」

ストラウク伯爵がそう言った瞬間に、ザイフェルトとフリーデの運命は変わり、ジャクリーヌ婦人には蛇神の呪いが準備された。
リヒター伯爵領では、フリーデが予知によって強姦者ロイドの死の運命を変えることになった。

ザイフェルトは武術の修行ではなく、フリーデと悦びを分かち合うことで、達人と呼ばれる腕前になるのだが、それはこの修行初日の夜ではなかった。
ザイフェルトの武術の修行とフリーデの巫女修行をこれから厄祓いのために行うことになった。

ゼルキス王国の神聖騎士団では、それぞれ伴侶を選び、力の覚醒を目指す作戦が計画されることになった。
ストラウク伯爵領の山奥とゼルキス王国の王都ハーメルンはかなり離れている。しかし、運命の流れはひとつの大河の流れのように、人々を導いていく。

ザイフェルトが昼間、テスティーノ伯爵やアルテリスと狩猟や特訓を行うために出かけているあいだ、ストラウク伯爵はフリーデの相手をマリカにさせることにした。
ストラウク伯爵やテスティーノ伯爵は、フリーデに念の力で快楽を教え込み覚醒を促すこともできるが、ザイフェルトの因果を乱すことを避けることや、マリカやアルテリスが嫉妬することの実害を考慮した。

マリカはフリーデと昼間、どんなことをするのかストラウク伯爵から指示を受けて、夜の交わりの時には報告した。
レナードの世話もマリカとフリーデが行うことになった。
レナードの護りの羽のある幼女の姿の亡霊たちは、フリーデもまた自分たちと同様に蛇神の贄であると感じた。
フリーデを犯した者は、死の運命に抗う力の弱い者は死んでいく。子爵メルケルや盗賊団の首領トーラスは死んだ。
子爵シュレーゲルは、カルヴィーノと出会い、ヘレーネのおかげで死の運命から逃れうまく生き延びている。危うく毒殺されかかりながらではあるが。使われた睡眠薬の量がもう少し多ければ、シュレーゲルは死んでいた。
フリーデの口を犯したベルツ伯爵には、報いの準備が進みつつある。
男性に死をもたらす運命の女フリーデ、呪われた女である。

「かわいそう」
「かわいそう」
「かわいそう」

亡霊たちにも呪われて利用されているフリーデは同情されている。

(どういうことかな、フリーデさん、見えない小人さんたちにも、かわいそうって言われてるけど)

ストラウク伯爵に感性を開花されているので、マリカは亡霊たちの囁きを聞くことができるようになっていた。
ストラウク伯爵にそれを報告すると、マリカは雪女の昔話を聞かされた。

「姿を見られたら凍え死なせなきゃいけない掟を破って、雪女は猟師の妻になった。人に雪女と出会ったことは話してはいけませんと口止めして逃がし、人の姿に化けて猟師と婚姻の契りを交わした。昔話では雪女は姿をくらますが、フリーデが自殺しないうちにカルヴィーノが見つけて、バーデルの都から逃がし、ザイフェルトはどんな過去があってもフリーデと生きたいと望んだ。マリカ、フリーデは雪女なのだよ」
「スト様がフリーデさんに手を出さないのは、雪女だからですか?」
「ザイフェルトの伴侶だからだよ。マリカの覚醒だけなら、テスティーノも私と同じ念の力を使えるから導けるだろう。だが、私たちはそうしない。私の伴侶がマリカで、テスティーノの伴侶はアルテリスだからだ」
「スト様、今夜もマリカをいっぱい可愛がって下さいっ……あぁっ、んっ……」

アルテリスに手を出したら、たっぷり搾り取られて、命の危険があるとストラウク伯爵は直感で気づいている。
フリーデに手を出したら、ザイフェルトがストラウク伯爵を殺そうとする。理由はどうあれ、頭ではわかっていても、激情には逆らえないのがザイフェルトの性格だとストラウク伯爵は見抜いていた。
勇猛果敢な武人の資質は、ストラウク伯爵やテスティーノ伯爵の師匠である武人アノスリードと似ている。ザイフェルトをストラウク伯爵とテスティーノ伯爵はとても気に入っている。

フリーデはレナードの世話をしていて、子爵シュレーゲルのことを思い出していた。生きている人形のようにされてしまったレナードが痛ましく、フリーデは初めてレナードの世話をした時、涙が止まらなかった。
アルテリスが僧侶リーナに頼まれて見つけ出し、テスティーノ伯爵に頼ってストラウク伯爵のところへ連れて来たことや呪詛の贄にされたらしいことを聞いて、フリーデはレナードを憐れみ同情した。
体を拭っても勃起せず萎えている逸物のまま虚ろな表情のレナードは、ヘレーネには、子爵シュレーゲルとあまり年齢は変わらないような気がする。
シュレーゲルなら股間の逸物を拭かれたら、むくむくと勃起して欲情する。そうならないレナードの姿は、あまりに痛ましく思えた。
心が壊れそうな苦しみをフリーデは体験してきた。心が壊れたレナードを世話をしながら、自分にも人形のように心を殺して犯されていた瞬間があったのを思い出し、自分の心の中の壊れたものを慰めるように、レナードの世話をした。
護りの亡霊たちはフリーデと同じ悲しみを経験している。


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