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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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牡のリングと牝の指輪-8

馬車は、バーテルの都から出ると夜中も走り続けた。
翌日の昼過ぎに、村はずれに馬車は停車した。ニルスは馬車を降りると足元がふわふわした感じで落ち着かない。
手をのばして、エイミーがふらつかないように引き寄せて馬車から降ろした。

「ずいぶん遠くに来たな」
「ニルス様、ここは?」
「女伯爵の領地の外だ。ロンダール伯爵領に向かって馬車を走らせたなら、北の方角にある村だな」
「ドレチの村ですよ。では、こちらへ」
「メイドさん、徹夜で馬車を走らせて疲れてないのか?」
「疲れましたよ。私が馬車を走らせている間にふたりとも眠っていたのには、途中で降ろしてしまいたくなりました」

ドレチの村の村長の家と思わしき家に案内された。

「アナベル、ご苦労様。ああ、無事にふたりとも連れ出せたみたいだね」

ロンダール伯爵は3人が部屋に入って来ると、そばにいた家の仕用人にアナベルを寝室に案内するのと、呼ばれるまで部屋に来なくていいと言いつけた。

「その様子だと、もう契約は済んだようだ。おや、君はあの夜のディーラーの子だ……ニルス君の伴侶になった気分はどうかね?」

3人分のお茶を用意したロンダール伯爵が、ふたりに椅子に腰を下ろすように言って着席した。

「ここは私の別荘だよ。女伯爵シャンリーの領地と私の領地の隙間といえる土地に、このドレチの村はある」
「用件は何だ?」
「さすが王都の貴族、気が短いね。君の伴侶はお疲れのようだ、ここの村人が焼いたお菓子でもどうかね」

エイミーにクッキーの入った木の器を指さし、ロンダール伯爵はひとつ指でつまんで食べてみせた。そして、お茶をひと口飲んだ。

「安心したまえ、お茶やお菓子、君たちのカップにも毒など仕込んでいない」

ニルスがクッキーを口に放り込み食べてみて、不安げな表情のエイミーに、にっこりと笑いかける。

「……おいしい」
「そうだろう、これをおいしいと思うのが私だけでなくて安心したよ。アナベルは、これは甘すぎると言うものでね」
「あのメイドさんは、ロンダール伯爵の奴隷なのか?」
「ニルス君は誤解をしているようだ。たしかにバーテルの都では奴隷と呼ばれているが、伴侶と言ってもらいたいね」

ロンダール伯爵の一族に伝わる呪いの結婚指輪。術者と護り人が装着することで契約を結ぶ。術者の精力を増し、護り人の伴侶の力を引き出す呪物。

「今の君なら、木札の全ての数字が視えるはずだ」
「まさか、そんなことが」
「あの木札はこの村で作られたものだ。このお菓子が入った器と同じようにね」

ロンダール伯爵は、バーテルの都で何が行われているのかニルスとエイミーに話し始めた。
指輪を装着した女性たちのうち護り人の才能が覚醒した者を見つけ出し、蛇神の贄にする。

「牡のリングを装着する者は、牝の指輪を装着した護り人の力を覚醒させ、さらに高めるために快楽を与えることができるのだよ。交わってみて、それがよくわかっただろう?」

ニルスとエイミーが、少し困ったような表情で顔を見合せた。

「まさか、君たちはそれを装着しているのに、交わっていないのかね?」

ロンダール伯爵がそう言って、ふぅっとため息を洩らし、お茶をひと口飲んだ。どうして交わらずに我慢したのかとロンダール伯爵にニルスは質問された。
童貞の御主人様と処女の牝奴隷。
ふたりとも経験が浅く、どうやら前戯で満足して、まだ童貞と処女のままだと聞いたロンダール伯爵はふたりの状況を把握した。

「ニルス君はまだ、牡のリングに心が動かされなかったということだ。女性の胎内に逸物を挿入し、女性と同時に絶頂に達する悦びを知らなかった。だから、我慢することがなかった。今まで童貞の者が装着したことがなかったので、記録が残されなかったのだろう」

(女性の胎内に逸物を挿入?)

エイミーはロンダール伯爵が言っていることに、歳上の賭博場で働く女性たちから聞いた話を合わせて考えてみて、交わるということは、ニルスの逸物で自分の牝の花を串刺しにすることだと、ハッと気がついた。

「しかし、交わっていないのに、絶頂で導かれる力の覚醒が得られているのは、どういうことなのだろう?」

(絶頂で導かれる力の覚醒?)

ニルスは、エイミーを気持ち良くしたいと思い、股間の牝の花を舐めまわして、エイミーを絶頂させたことを思い出していた。エイミーが絶頂したことで、不思議な力、当たりの木札を引き当てたりできるような力が、リングを装着した自分の逸物が太さや長さを増したように、エイミーには不思議な力が増しているらしいと気づいた。

「牡のリングと牝の指輪を装着しているのに、ふたりが純潔の童貞と処女だと気づかれていれば、極上の贄と判断されて殺されていたのは間違いない」
「ロンダール伯爵、貴方のメイドはエイミーに女伯爵シャンリーに殺されたくなければ、貴方に会いに行くようにと言っていました」
「女というのは不思議なものだ。アナベルは、君の伴侶が純潔の処女だと気づいたのだろう。男にはわからない直感というものかもしれない」

ロンダール伯爵が護りの巫女を何年もかけて育て上げるため、純潔の処女のうちから、能力をのばさせる。そのため、アナベルは「お兄様」が求める処女を察知することができるようになっていた。

「ロンダール伯爵、どうして女伯爵シャンリーにリングや指輪の作り方を教えたりしたんですか?」

エイミーが、ロンダール伯爵をにらみつけて恨めしそうな声で言った。リングや指輪がなければ、そして10日間で死ぬ呪いさえなければ、女性が遊郭で生き延びるために、リングを装着した客を相手にする必要はない。

「あの都は祟られている忌み地。実際に行ってみてよくわかった」

ロンダール伯爵は、シャンリーの目的を知りながらも、一族に伝わるリングと指輪を世に出した理由をふたりに語った。


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