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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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牡のリングと牝の指輪-10

奴隷制度の導入に協力した宮廷官僚のなかに、ニルスの父親ルーク男爵がいた。モルガン男爵がパルタの都で殺害され、ルーク男爵を含めた派閥は、ランベール王と側近のゴーディエ男爵や法務官の女男爵レギーネによって宮廷議会が裏で掌握されることで、頭数を揃えているだけの議員として使われている立場に置かれることになった。ニルスが宮廷官僚として出仕していれば、彼もその立場に置かれていたはずである。
ニルスとエイミーは、ロンダール伯爵の提案に従い、ロンダール伯爵に仕える小貴族でありながら、ドレチ村の別荘は彼の邸宅として与えられ、女衒(ぜげん)のルーカスとヘレナという偽名で、バーテルの都の奴隷市場に潜入する人物となった。貧しい村には、まだ子供の娘が奴隷として売る親もいた。
ロンダール伯爵からは、全部の子供を保護できるわけではないことや、メイドのアナベルのような術師に育てるのには、少年は不向きであるため保護しないと言われていた。単純に幼女や少女をロンダール伯爵が愛好しているだけではないかとも思われるふしはあったが、活動資金はすべてロンダール伯爵が出資しているので、ロンダール伯爵の方針にニルスとエイミーは従うことにした。
奴隷商人たちのなかにはフェルベーク伯爵に雇われている者たちがいた。奴隷市場でフェルベーク伯爵は少年を買いつけて、自領で男娼として働かせていることなどもわかってきた。ロンダール伯爵はそれをしないだけ、少しはましな人物だとニルスやエイミーには思えた。
シャンリーは名門貴族3人から遺産をせしめて未亡人として後宮に入内して、黒薔薇の貴婦人と呼ばれていたが、その後に女伯爵としての爵位が与えられ、バーテルの都の領主になったことなども、ニルスは女衒(ぜげん)のルーカスになって知ることになった。
シャンリーは裕福な貴族ではあるが、宮廷の裏金が流れ込んできたブラウエル伯爵、税金を割り増しで取り立てるフェルベーク伯爵、呪術師の一族として暗躍してきたロンダール伯爵のような財産はない。シャンリーは遊郭と賭博場を運営して資金源として、奴隷市場は国内で唯一の人身売買の認可を受けた責任者として
関与していたが、競売のオークション以外の売買までは仕切れるほどの資金力はなかった。
ロンダール伯爵はシャンリーの隙をついて、貴重な「僕の可愛い妹たち」になりそうな女の子を保護できる場所は奴隷市場しかないと判断したのである。
バーテルの都では、シャンリーの親衛隊によって住人たちは統制下に置かれている。シャンリーが贄にするのに目をつけた娼婦の奴隷や法で罰せられた奴隷を贄にしていることも、ロンダール伯爵は、ニルスやエイミーに教えた。
蛇神の生贄を捧げる風習が失われた結果として、呪物で覚醒させなければならないほど、ターレン王国には呪いに対抗できる人間が減っていることや、贄が捧げられていることでバーテルの都ではリングと指輪が装着できるほどの悪影響が発生していることを教えた。

「ロンダール伯爵、呪いに対抗することができない人間だけになれば、どうなるのですか?」
「子を孕ませる力を失う。いくら交わっても子供が生まれない。それでも欲情して交わらずにはいられなくなる。これが蛇神の呪いの恐ろしさだよ。100年後には、乱れきって王国は滅びるよ」

ロンダール伯爵は、エイミーに何が起こり始めているのか教えた。
ブラウエル伯爵領ではその異変がすでに現れていることを、ロンダール伯爵は知らなかった。
また、牡のリングと牝の指輪の交わりの儀式は、ストラウク伯爵が考えている山の神の加護を受ける儀式と同じことも理解しきれていなかった。
ロンダール伯爵は、大昔に信仰されていた天地への崇拝、風葬のような儀式の呪術と契約の儀式を考えていた。
男性の生殖力の減退が進み、女性の欲情を満たすものが交わりながら吸血される行為だと知ってしまえば、蛇神の加護を受けた人の姿の魔獣にとって女性は自ら身を捧げる餌と成り果てる。ランベール王の魔獣化の変化を、ストラウク伯爵、ロンダール伯爵、どちらも危機を感じて行動している人物たちであっても気づいてはいなかった。

ニルスはバーテルの街までの旅の途中で19歳になった。エイミーはニルスとの勝負のあと20歳になったばかりであった。このふたりによって、ゼルキス王国に牡のリングと牝の指輪は伝えられた。

ゼルキス王国とターレン王国の和平協定成立後、細工師ロエルはこのふたりの牡のリングと牝の指輪を確認して、装着の儀式が呪われた土地以外でもできるようにし、脱着可能の道具に作り変えた。つまり、呪いの死の制約を解除することに成功したのである。
牡のリングと牝の指輪はふたつでひとつの道具で、能力の強化だけでなく感応力で相手の気分と同調する効果があることが判明する。
ニルスとエイミーは脱着可能の道具になっても、牡のリングと牝の指輪を常に装着したまま常にふたりで仲良く行動していた。
細工師ロエルと弟子のセストには、牡のリングと牝の指輪は不要な道具だった。道具を使わなくても自前の感応力でおたがいの感覚を同調しながら交わっていたからである。
さらに細工師ロエルの弟子セストは、注文を受けて女性が女性の伴侶とおそろいの指輪を装着することで、感覚が同調する道具を作り出した。
これはゼルキス王国の結婚式や、エルフ族の結婚式で使われることになった。

牡のリングは伴侶ではない女性との交わりでも、勃起の持続力が上がることがけしからんと浮気を懸念する女性たちには不評であった。
別に契約した伴侶のいる女性が、牡のリングを装着して勃起した伴侶以外のリングの使用者と交わると、あとでひどい頭痛を引き起こす。不倫する女性たちには頭痛が不評であった。
牝の指輪を男性は装着できない。女装愛好者を見分けるのに指輪は役立った。
男色家たちは勃起力が高まる効果にごきげんで恋人とリングを装着し交わった。リングは男性に使用すると逸物に激痛が走ったので、とても後悔した。


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