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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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両性具有の秘術-6

ロンダール伯爵の邸宅には、秘密の地下室がある。呪術で相手を呪殺して財を築き上げてきた一族の邸宅である。

「ダメじゃないか。少し歳上で、自分のメイドが他のメイドより格上だからって他の妹たちをこわがらせたら」

ステファニーは自分の両親は、フェルベーク伯爵領の小貴族だったという母親が語った話を信じていた。
他の3人の「僕の可愛い妹たち」はロンダール伯爵領の生まれだった。14歳のステファニーより歳下の3人は、その話を聞いて素直に羨ましがった。

「お兄様と同じ、貴族様なのですね!」
「そうよ、貴女たちとは違うの」
「ああ、貴族様ならお兄様の妃様になれますわ」
「貴女たちだって側室にはなれるわ」
「お姫様になりたいです」
「全員はむり。お兄様は一人だもの」

色街の娼館でロンダール伯爵から買い取られるまで、客は取らされなかったが他の娼婦たちの身のまわりの世話や買い物などの用事を言いつけられてステファニーはすごしていた。
ロンダール伯爵がシャンリーのメイドのエステルのご機嫌取りの贈り物を買うついでに、3人の「僕の可愛い妹たち」にもたまに贈り物をしようと買い物に来ていて、市場に来ていたステファニーを見かけた。
先に豚伯爵の邸宅に暮らしている小娘たちに、ステファニーは下の立場に見られたくないと思った。娼館で下っぱに見られて、いいように使われていても、娼館の主人は助けてくれなかった。
稼ぐ娼婦が偉いという暗黙の掟が娼婦たちだけでなく、娼館の主人にもある。
ステファニーは、3人よりも自分は上だと教えこむことにした。メイドのアナベルの次ぐらいの扱いをされたいと、ステファニーは思った。
他の3人の「僕の可愛い妹たち」は立場など考えたことがない。
ただ豚伯爵の「お兄様」に可愛いと誉められるのがうれしくて、そのためにメイドたちに読み書きを習ってみたり、歌を教えてもらって3人でロンダール伯爵の前で披露してみたりして過ごしていた。それに3人が自分で買い物もしたことがないとステファニーは聞いて呆れた。
ステファニーは母親が村から出かけて、数日間を村で留守番をして暮らしていたり、娼館で娼館の主人から1日分の食費と渡された金額で、考えて食事しなければならなかった。朝、昼、晩と3食で食べるなら空腹で眠れなくならないように晩の食事は街の食堂でがっつり食べる。朝食や昼食は我慢しきれなければ、安いパンをひとつ、迷いながら買って食べて晩まで耐えていた。

「客を取らないくせに食費をもらって、それは私たちが稼いだ金だよ。あんたに食わすために私たちは働いてるわけじゃないんだよ、野良猫ちゃん、わかる?」

娼婦たちに「野良猫ちゃん」と呼ばれて嫌みを言われていたが、娼館の主人はロンダール伯爵と、シャンリーを仲介にしてステファニーの値段を交渉中だったので、働きたいとステファニーが嫌みを言われて悔しがって言っても、娼婦として客を取らせなかった。
そんな苦労をしたステファニーが考えたのが、母親が言っていた本当はフェルベーク伯爵領の貴族の血筋という話を世間知らずの3人の小娘に聞かせるということだった。
ステファニー自身は、母親が生きていくためにつらいので考えた嘘のおはなしだと思い、もう信じていなかった。

髪型がロンダール伯爵領では見かけないものだと言われた時、一瞬だけ母親の話は本当なのかもと考えてしまった。すぐに本当に貴族の血筋なら、死んだあと小さなみすぼらしい土を盛っただけのお墓に、娼館の主人に埋葬されるはずがないと思い情けなくなった。
世間知らずの3人の小娘たちは、話すほど苦労を知らなすぎて、ステファニーは思わずいじわるしたくなった。

(私をいじめた娼婦たちも、こんな気持ちだったのかもしれない)

地下牢で裸にされたステファニーは、天井から鎖で吊るされた手枷をはめられ、爪先立ちの状態にされていた。
朝、目が覚めたら地下牢でこの状態で、真っ暗闇でしばらく放置されていた。
今は地下牢の隅に4本の燭台が置かれていて、中央で吊るされているステファニーを照らし出している。

地下牢には、持ち込んだ椅子に腰を下ろした豚伯爵と裸のステファニーだけしかいない。

「お兄様、トイレに行きたいの」
「そういうと思って桶を用意した。この中に出しなよ」

ステファニーの前に桶が置かれた。

「こんなの嫌、お兄様、許して」
「アナベルの髪を切ったのは許した。僕は、君が3人を叩いたりしたのも許さないといけないの?」
「だって、こわかったんだもの」
「こわい?」
「3人は仲良しで、なんにも外のことは知らなくて、私だけ知ってる。仲間はずれだもん」
「ステファニー、知らなくても生きていけることはたくさんあると思わない?」
「お願い、もう……くぅっ!」
「お漏らしすることも、いい子にはさせないよ。これはおしおきだよ」

ステファニーはついに我慢の限界に達して、桶の中に小便をじょぼじょぼとこぼした。
椅子に腰を下ろした豚伯爵は、ステファニーが泣きながら小便を漏らしている姿をながめていた。

「ステファニー、貴族だって、野良猫だって小便するんだよ」

娼館で呼ばれていた野良猫というあだ名を思い出し、ステファニーが豚伯爵の顔をハッとした表情で見つめた。

「せっかく僕の可愛い妹になってもらおうと招いたのに、ステファニーは、とんだ野良猫だったってことだね」
「……じゃない」
「ん?」
「野良猫なんかじゃないもん!」

ステファニーが怒りに震えながら、目に涙をためて豚伯爵に叫んでいた。

「僕の可愛い妹でも、野良猫でもないのなら、ステファニー、君は何なんだ?」

ステファニーは豚伯爵に真顔で見つめられながら質問された。14歳の少女、それも生きていくことに必死なだけで、他のことは考える余裕がない少女には、その答えがないことを知っていて、わざと豚伯爵は質問している。


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