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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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両性具有の秘術-1

パルチの賭け遊戯でいえば、自らの欲望を満たす為に呪詛を行い混乱をもたらすロンダール伯爵は、祟りの浄化を目指すヘレーネの敵になる人物だろう。
女伯爵シャンリーは彼から、小貴族の令嬢エステルを餌にして蛇神祭祀書を入手した。
子爵リーフェンシュタールや子爵カルヴィーノは、パルタの都へ自分の親の領地から半ば出奔したようにして学者のモンテサントの弟子となり知識を学んだ。
子爵ロンダールは両親を呪殺して伯爵となると遺産を手に入れた。情熱を持って自領から男娼を排除し、年齢の若い娼婦だけ集めた色街を作り上げた。
学者モンテサンドはベルツ伯爵領やバーデルの都にいた産婆たちを訪ね歩き、失われゆく魔法の技術のひとつとして、堕胎の薬作りについての知識を得た。またパルタの都の井戸の水は霊水であるという伝承も聞いた。歴史についての情報をまとめ、整理して国のありかたや立法について考えた。
ロンダール伯爵は学者モンテサントのように過去の知識や技術をどのように活用すれば、多くの人たちに役立つのかを考えなかった。彼はどうすれば自分の淫らな欲望を満たせるかだけを考え続けた。
良い隠者が学者モンテサントならば、悪い隠者がロンダール伯爵である。
女伯爵シャンリーは、精力が衰退しつつある男性との交わりよりも、見た目の美しい女性や可愛らしい女性との交わりを好む傾向がある。さらに嗜好として蛇神の贄の獲物に快楽と苦痛の果ての死を贈ることに興奮する奇癖がある。
ロンダール伯爵には人を殺すことで興奮する奇癖はなかった。臆病な性格なので自分よりも腕力もなく、体格の小さな相手でなければ女性でも怖い。おとなしく従順で、自分のことを「お兄様」と甘えてくれる幼女や少女とのふれあいを好む。嫌がり泣き叫んだり、反抗的な態度を幼女や少女から取られると、拘束してなぶる悪癖はあった。
女伯爵シャンリーは、ロンダール伯爵を豚伯爵と令嬢エステルの前で呼び、彼を蔑んでいた。利用価値があり、敵対しなければ相手を軽蔑していても生かして飼っておくのがシャンリーの手口である。
豚伯爵のロンダール伯爵領は北方にパルタの都、南にバーデルの都が少し離れてある。南東のブラウエル伯爵領、西のフェルベーク伯爵領とは、領地が接している地域がある。追放した男娼や男色家はどちらかへ流れていった。
逆にまだ若い娼婦たちは、ロンダール伯爵領で身を売って稼いでいる。シナエルに言わせれば、手軽に大金を稼ぐのに慣れてしまい、娼婦としては生きていけなくなるところであった。
シャンリーはその贅沢に慣れた見栄えのする若い娼婦に金を貸し、返せなくなってから奴隷として競売にかけ、借金を返済させた。豚伯爵の領地で暮らした若い娼婦たちは、メイドとしての家事仕事もせず、農作業もしない。冷たい水で手荒れすることのない手指や泥にまみれ汗が乾いて服に白く浮き出す日射しにさらされて日焼けしてこなかった肌は、王都の貴族令嬢と同じように艶やかに見えるため、高値で取引された。顔立ちだけでなく、手や肌の美しさを価値として奴隷を競り落とす者たちは見ていた。
ロンダール伯爵は、シャンリーの奴隷の競売には興味を持たなかった。親に身売りされた幼女や少女がいれば、バーデルの都から直接ロンダール伯爵の邸宅まで連れて来てもらい、気に入れば買うことができたからである。競売して若い娼婦を競り落とすより、まだ世間知らずの幼女や少女に「お兄様」と呼ばれて甘えられることのほうが、彼にとって金を払う価値があることだった。彼に甘やかされて暮らしていると、ある日、突然新しい幼女や少女が邸宅へ来る。すると家具の交換のように「僕の可愛い妹たち」の誰かが、色街の娼館へ買い取られていく。
色街の娼館には、他の伯爵領から流れてきた少女の娼婦たちがいる。彼女たちと競いあって、上客を捕まえなければ生きていけない。「僕の可愛い妹たち」は、いじめられたり騙されたりして、耐えきれず命を絶つ者もいる。顔を切りつけられたり、乳房や背中に火傷の痕をつけられたら、上客はつかない。
シャンリーが目をつけて金を貸し生き延びる者もいる。借金していても身なりがよく、世話をするメイドを雇い、客を家に呼び相手をする。流れてきた少女たちと、もう競い合うことなく暮らしたあとは、奴隷として競売にかけられる。
豚伯爵の「僕の可愛い妹たち」のなかには追い出されないように必死に媚びる者もいる。そんな媚びる利口な者ほど「明日からは僕の妹じゃない。さようなら」と見透かされて邸宅から追い出されてしまう。
ロンダール伯爵は、呪術と「僕の可愛い妹たち」の偽りの親しみの演技を見抜くことに一族の末裔が持つ才能を使った。
彼は両親を呪詛して殺した呪殺以外にも、邸宅の「僕の可愛い妹たち」に呪術を施し戯れた。
彼の一番のお気に入りは、シャンリーのメイドのエステルである。呪術で操ることも欲情させることもできないが「お兄様、ごきげんよう」と笑顔で訪れ、帰る時には美しい人形のように眠っている。おとなしく従順で、美しく淫らという意味で、彼にとっては理想的な美少女なのだった。
反抗的な態度や彼をみくびった態度を取った幼女や少女に対し、彼は本来は祓魔師であった才能で淫らな呪詛を施すことに用いる。
子爵リーフェンシュタールが豚伯爵がどのような呪詛を幼女や少女にかけるのかを知れば、絶対に息の根を止めてやると激怒するだろう。
蛇神の女神官たちがお気に入りの贄にだけ施した呪詛の秘術を、ロンダール伯爵は使った。その犠牲になった幼女や少女は、連絡を受けて訪れたシャンリーの儀式のナイフによって、無惨な遺体にされて運び出されることになる。
強い霊感があるわけではないが、カルヴィーノを伴侶に選んだシナエルの直感力は伊達ではない。とても嫌な感じがするため、豚伯爵のいる土地へ足を踏み入れることを避けた。もしも、カルヴィーノに出逢う前に、豚伯爵に目をつけられていたとしたら、シナエルも呪詛をかけられ、シャンリーの儀式に使われていたかもしれない。


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