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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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リーフェンシュタールの結婚(後編)-2

「リーフェンシュタール、ここで人を集めると言っていたが、それは女性も、へだてなく同志として仲間とするということかな?」

リヒター伯爵が、リーフェンシュタールにそう話しかけた。

「この邸宅でメイドをしてくれているエマや、今は出奔中の御令嬢ヘレーネは女性だが、どう考えている?」
「父上、女性を同志とすることは考えたことがありませんでした」
「ふむ……ザイフェルトはどう思う?」

ザイフェルトは、パルタの都を占拠している騎士ガルドの同志には、剣士のソフィアや、遠征軍の残留兵の食事を提供しているイザベラがいたことをリヒター伯爵に話した。

「女性でも兵をまとめる腕の立つ人物もいる。また特技をいかして役立っている人物もいる。モンテサント先生にたずねてみると、剣士ソフィアは貴族、イザベラは酒場の女主人だったそうです」

騎士ガルドの遠征軍の残留部隊に女性が活躍しているという情報は、リーフェンシュタールも初耳だった。
メイドのエマも、ザイフェルトの話を聞いていて驚いていた。
軍隊には男性しかいないと思い込んでいたからである。街の衛兵も男性ばかりで女性の衛兵は見たことがない。

「バーデルの都は、バルテット伯爵に代わって女伯爵シャンリーが統治しているらしい。私は、女性が伯爵となるということを、考えたことがなかった。騎士ガルドの部隊には女性がいて指揮を取っているというのも、想像できなかった。リーフェンシュタール、ヘレーネは私の体の不調を癒してくれた。女性の力について考えをあらためる必要があるのではないか?」

リーフェンシュタールが考えをまとめてから口にしようとしている間に、ヘレーネがくすくすと笑い出した。

「おや、ヘレーネ。私は何かおかしなことを言ったかね?」
「伯爵様、ネコと犬ですよ」

ヘレーネは、リヒター伯爵が女性をネコに喩えてネコが好きと話したことを聞いて、うなずいたのはエマ。リーフェンシュタールとザイフェルトはいまいちよくわからないといった顔つきだった。

「リーフェンシュタール様は、まだわからないかもしれない。ザイフェルトは結婚しているのにわからないかしら。伯爵様は、女性の嫌なところもふくめて知ってしまっても、でも好きと言えるのは素敵です。
ザイフェルト、憧れの女性は貴方の心の中にしかいない。レチェは、寝心地の良い好きなところを探して眠る。気になるものを見つけたら飛びつく。機嫌が悪ければ爪で引っかいたり噛みつく。撫でられたい時は膝の上に飛び乗る。ほっといてほしいときは離れる。怒鳴られたり、つねられたり、石を投げられたら、驚いて逃げる。それからは怯えたり、警戒して絶対に忘れない。もし、気まぐれなところを見せずに、いつでも笑顔で呼ばれたら話を聞いてくれて、なごませてくれたり、わがままも許してくれていると感じるとしたら、そうすれば自分のことを好きでいてくれるとわかっているからなのよ。どうでもいい人には、目が合うのも、声をかけられるのも嫌。でも、好きすぎる人にも恥ずかしくて目を合わせたり、動揺してうまく話せなくなったりする。気まぐれで、わかりにくい。でも、それは一瞬で決断する力があるから。特に恋には、ね。ネコだって戦う時は、背中を丸めて威嚇して飛びかかる。仲間のネコが傷ついていれば傷が早く治るように舐める。その時、しなければならないと感じたことをする。その時に感じた直感に素直なのね。今を大切にする。男性は過去の思い出を大切にして、これからのことを悩むけれど。大きな山犬と比べたら、ネコは体は小さく、犬ほど群れはつくらない。でも心はどうかしら?」

リヒター伯爵がヘレーネの話を聞きながら、何度もうなずいたり、メイドのエマと笑顔で目を合わせていた。

「ふふふ、女は信用できぬと言う者もいるが……今が大切か。一瞬の決断する力ということで思い出した。リーフェンシュタールの母親は、あまり体が丈夫ではなかった。子を産めば死ぬかもしれぬと、産婆が私と妻に言った時、子を産ませるべきか、私は悩んだ。だが、リーフェンシュタール、母上は産婆に産みますと即答して、あとは誰が説得しようとしても意見を変えなかった。決断したら絶対に譲らぬ。だから今、リーフェンシュタールは生きてここにいる」

ザイフェルトは、腕を組んで考え込んでいた。女性が軍隊に加わることを考えているわけではなかった。女性について考えながら、妻フリーデのことを思い出している。

「剣や槍を持って戦うのはこわいですけど、伯爵様や子爵様にお料理をしてお食事を用意させていただくお手伝いなら、私でもできそうです」

メイドのエマがリヒター伯爵に、戦が起きたらどうすると質問されて、笑顔で答えた。リーフェンシュタールは、エマはおとなしい性格の女性なので、てっきり軍隊にはこわがって加わらないと答えると思っていた。

「ヘレーネ、私を救うために、この伯爵領に旅をして訪れたわけではあるまい。あまりにひどいことになっておったので見るに見かねて、救ってくれたといったところかな」
「伯爵様が命を落とす前に、私が訪れたのも運命というものでしょう。ふふっ、エマが伯爵様を心配して毎晩、星に祈り続けたからと言ったら素敵かもしれませんけどね」
「そうなのか、エマ」
「伯爵様がお元気になるのでしたら、私を代わりにして下さいって祈って……ヘレーネ様、なぜそれを?」
「星に祈るのはかまわない。元気にして下さいと祈るのも悪くないわ。でも、代わりにしてくださいと祈ってはいけません。エマ、窓辺に小さな白い石のかけらを置いているでしょう。今すぐここに持ってきて、レチェの前に転がしてみてくれるかしら?」

メイドのエマが、真顔になったヘレーネに言われ、自分の寝室から皮の小袋に入れられた小粒の白い石を持ってきた。
リーフェンシュタールが、小袋をじっと見つめている。どうやらリーフェンシュタールも、その小石の持つ気配に気がついたようだった。


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