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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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リーフェンシュタールの結婚(前編)-2

モンテサントと執政官マジャールの見解として、パルタの都に攻め込んでくる伯爵は、ブラウエル伯爵だという予想は一致した。
マジャールはこの左遷の裏側には、モルガン男爵の奴隷売買の特別国内許可の件が関わっていると考えていた。マジャールは奴隷売買の撤廃、奴隷ではなく低賃金でも労働者として納税させたほうが長期的には国の財政は安定すると考えている。モルガン男爵の賄賂の授受を拒否した人物である。そのため、賄賂をもらい法改正した法務官とは敵対関係にある。そのために今回の左遷は、賄賂で動かない官僚の粛清だと、マジャールはモンテサントに語った。
国政の裏側では裏金が動いている。賄賂の流れた先はどこなのか。それがブラウエル伯爵の軍備の資金の元だろうとモンテサントも考えていた。
モンテサントの弟子で、ランベール王の側近となったゴーディエ男爵が、曾祖父が高名な廷臣ヴィンデル男爵であるとはいえ、それだけで宮廷官僚として有力な王の側近の立場にあることを、若い男爵に対して、他の官僚が認めるとは考えがたい。他の官僚にとってゴーディエ男爵が王の側近であることで利がある。それが何かまではモンテサントは理解できない。宮廷議会の重鎮モルガン男爵が死去したことで、王の側近がモルガン男爵からゴーディエ男爵となった。その裏事情まではマジャールにはわからない。ゴーディエ男爵は、マジャールの助命を師匠のモンテサントに頼んだ。騎士ガルドの軍をパルタの都に置きたい理由はモンテサントとマジャールの意見が一致した。ブラウエル伯爵が軍備を整え、王都へ進軍した時の壁が、騎士ガルドの軍とパルタの都であり、抑止力となる。ゴーディエ男爵は、マジャールにパルタの都を無断で占拠した騎士ガルドの処罰を命じられなかったのではないかという意見で一致した。モンテサントはこうしたことを語り合える者が、弟子たちがそれぞれモンテサントの元から離れたのでしばらくいなかった。

ブラウエル伯爵が王都へ攻め込むには、南のベルツ伯爵領、西のシャンリー女伯爵領であるバーデルの都からの妨害がない状況で、北のロンダール伯爵領を通過するか、ロンダール伯爵を討つしか、パルタの都へ到着できない。
ロンダール伯爵を討つとすれば、ブラウエル伯爵が南側から、フェルベーク伯爵が西側から攻め込み、ロンダール伯爵領を挟撃するのが有効な戦略となる。
ロンダール伯爵はブラウエル伯爵とフェルベーク伯爵から降伏勧告を出された場合、騎士ガルドに救援を求めるか、ベルツ伯爵にブラウエル伯爵領を攻撃してもらい撤退させると同時に、フェルベーク伯爵領をテスティーノ伯爵に攻撃してもらい撤退させるか、降伏するという3つの選択しかない。

女伯爵シャンリーは周囲の伯爵たちのうち、軍備を整えているブラウエル伯爵を警戒した。ブラウエル伯爵に自領を攻め込まれないように利用できる伯爵は誰か考え、幼女好きのロンダール伯爵と男色家のフェルベーク伯爵を籠絡した。
ブラウエル伯爵を籠絡するのが、単純に考えれば有効な手段なのだが、ターレン王国を軍事国家にする理想を掲げているブラウエル伯爵を籠絡する手段となる資金力が不足している。ターレン王国を軍事国家とするための資金提供や物資の提供を約束して同盟関係を結べるところが限界で、籠絡はランベール王のように呪詛で命を握るしかない。
バーデルの都の虐殺でも、ブラウエル伯爵に呪詛を施すほどの力は得られなかった。さらに強い呪力を得るには、生きている者たちの憎しみや怒りや悲しみの怨念で、バーデルの都に鎮められた先住民の怨念を呼び覚ますしかないと、シャンリーは奴隷売買をバーデルの都で行う準備に忙しい。
騎士ガルドとブラウエル伯爵が戦を始めてくれたら、生贄として捧げられる死者の数が増える。ブラウエル伯爵がパルタの都に攻め込んでパルタの都を破壊して死者に満ちれば、より早く鎮められた怨念が呼び覚まされるだろう。
幼女好きのロンダール伯爵には、ブラウエル伯爵が攻め込んできたら死んでもらう。男色家のフェルベーク伯爵とブラウエル伯爵がパルタの都を協力して破壊して、さらに騎士ガルドを抹殺してもらいたい。ガルドは辺境を血と凌辱で汚したにも関わらず、祟られずに生きている。呪詛にかかりにくい。ゼルキス王国への遠征で戦死してもらいたかったが、死なずにパルタの都を占拠している。
王都トルネリカにガルドが攻めこんでランベールと戦えば、ランベールはガルドを殺せるが、ガルドにはランベールは殺せない。肉体を破壊してもローマン王の亡霊が滅びるだけだ。ローマン王の亡霊が滅びれば、ランベールの自意識は、どこかで生きているが行方不明になっているレナード坊やの肉体に復活する。
ローマン王がガルドを抹殺できれば、ランベール王は二人はいらない。ガルドが祓いの儀式を知るはずもない。だから、ローマン王を滅すとは思えないが、そうなれば復活したランベール王をシャンリーが擁立して、ガルドを伯爵たちに討たせればいい。ガルドが王都トルネリカに攻め込んだ時の罠の準備をシャンリーはすでに行っていた。

「シナエル、この街道の別れ道、さてどちらが、リヒター伯爵領へ向かう道だと思う?」
「カル君、左だよ、うん」
「シナエルには幌馬車の馭者は無理だ。はい、地図を出して。ここからこうで、太陽の動きと影から方角を考えれば、正解は右だよ」
「馭者はしないからいいもん。ねぇ、カル君、もう少し進んだら、野営の準備する?」
「………ああ、ここらへんでもいいな」
「ふふん、じゃぁ、絶対おいしいやつをカル君のために作ってあげますか!」
「自分が食べたいだけじゃないのか?」
「ん、なんか言った?」
「なんでもない。料理は任せた」

馭者席で隣にいるシナエルが、地図を見て道案内ができると便利だと思いつき、カルヴィーノは丁寧に教えていた。だが最近、シナエルにはかなり迷子になる才能があると思い始めていた。

(でも、料理はうまい。料理に才能がふりわけられているのかもなぁ)


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