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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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リーフェンシュタールの結婚(前編)-1

パルタの都に赴任してきた執政官マジャールは、モンテサントに説得され、執政官として王都へ報告するだけの役目を得て、無事に騎士ガルド殺害されずに生き延びることができた。
ゴーティエ男爵がマジャールにパルタの都に到着したら、すぐにこの手紙をモンテサントに渡して命乞いをしなければ、必ず殺されると言い含めて出立させたからであった。そこにはランベール王が、法務官マジャールを陥れて赴任させた一部始終が書かれていた。

「後宮の妻妾に手を出した者は本来は死罪。後任の法務官はマジャールの妻の女男爵レギーネ。彼を王都へ戻すことは死の宣告と同じ。師匠、御配慮のほど宜しくお願します」

モンテサントは、40歳のいかにも文官一筋といった雰囲気のマジャール男爵にため息をついて質問した。

「貴殿は妻がありながら、なぜ浮気なされたのか?」
「ある日、突然、妻の私に接する態度が人が変わったように冷淡になりました。結婚10年間で初めてのことでした」
「妻に原因がある、と。それが浮気をなされた理由ということでよろしいか?」
「結婚後、恋をしたら貴族は離婚ができません。しかし、相手が変わってしまっても、一生、耐えなければならない。それがこの国の法。しかし、浮気は法では裁かれません。浮気した相手が王の側室だと知りませんでした。私は死罪のかわりに、この都へ送られたのでしょうか。私は死にたくない。助けて下さい!」
「貴殿はこの国の法が、誰のためにあると考えているのですかな?」
「それは、あらゆるすべての人のためにある。法の下ではすべての者が平等に」
「平等などありはしないのですよ。この国の法は王が民を支配するためにある」

赴任してきた元法務官マジャール男爵について、会議が行われた。
結婚後、相手を愛せなくなった者は死罪とするか、生かすか?
ソフィアの意見では、主君が心変わりして冷遇されたら、他の主君に仕えるというのか、と死罪を主張した。

「妻のために命を賭ける者もいれば、裏切る者もいる。私は、命を賭ける者でありたい」

ソフィアはガルドに惚れこんで、命がけでパルタの都にいる。
イザベラは浮気した王の妻妾はどうなったのかとモンテサントに質問した。

「王に奥さんを寝取られて、旦那だけ死罪っていうのも、納得できないね。王っていうのはなんでもありなのかい?」

イザベラは命は助けてやってもいいが、浮気する男は嫌いという意見である。
マルセロは私は結婚したことがないが、と前置きしてから、モンテサントにマジャールには何ができるか質問した。

「裁判しかしてこなかったのですか。よく今まで生きていられたものですな」

マルセロは商人として生きるためにできることはないか、自分が他人に役立つことがないかと考えてきた人物。マジャールが役立つ気があれば生きてもらい、何も役立つ気がないのなら、執政官が逃げたことにして追放する命助という意見であった。マルセロは、小貴族の令嬢グローリアと年齢差のある恋愛をしている。マジャールには、結婚した若妻が10年後に心変わりをしたらつらいだろうと同情はしているが、厳しい意見をあえて出した。

「マジャールを我々が処刑すれば、執政官を処刑して我々が王国から独立したことにするつもりではないかと。追放しても、王都へ送り返しても同じです。私の意見としては、執政官として表向きは生かしておき、我々の行動の監視役と思われるので、偽の報告をさせておくのが妥当と思われます」

モンテサントの意見を聞き、ソフィア、イザベラ、マルセロがうなずいている。ガルドは腕を組んで黙りこんでいた。

「モンテサント、その妻をランベール王に寝取られた男は、王に対してどうしたいか聞いてみたのか?」
「マジャールには、自分の妻が国王と浮気をしたことを教えてはおりません。教えれば、自ら命を絶ちかねないので」
「自分の女が、別の男に惚れたと気づいていないのか?」
「気づいていても、認めたくないのでしょう。マジャールが自ら命を絶つことになれば、我々が処刑したのと同じ結果となるでしょう」
「嫌がらせだな」
「パルタの都へ攻め込む口実が欲しいのでしょう」
「王都から攻め込んでくると思うか?」
「おそらく、伯爵領から。王命に従う伯爵の誰かが攻め込んで来ます」
「生かしておけば、伯爵領から攻め込まれないのか?」
「マジャールを生かしておけば、マジャールにパルタの都を任せ、都を離れて行動することもできます」
「わかった。マジャールに選ばせる。これから軍を動かすという時に自殺されるなら、今すぐ死んでもらうほうがいい」

マジャールは妻のレギーネがランベール王と浮気した事実を知らされても、自殺はしなかった。

「ガルド殿、もし貴殿にランベール王を討つ心づもりがあれば、このマジャールの命、どのように使っていただいてもかまいませぬ」

マジャールは、妻を奪ったランベール王を恨んだようである。妻のレギーネのことは憎くないかとガルドに問われ、マジャールはこう答えた。

「妻妾となれと王が命じれば、臣下の者は妻や娘であれ後宮へ入内させなければなりません。それは国法で定められているところです。その見返りは、妻妾が王の子を身籠れば、臣下から王族となり入内させた者も、伯爵の爵位と法では同位となります。レギーネが身籠れば、私はパルタの都の領主であると主張が通せます。妻のレギーネから、パルタの都の領主となる機会をもらったようなもの。執政官は官使であって領主にあらず、されど王族であれば、領主となれます。貴殿が王となるか、妻レギーネが孕むのが先か。人生とは、おもしろいものですな」
「悪いな。俺が王になるために、マジャールには協力してもらう」
「無事に生き残り、浮気しない妻とのんびり暮らしたいものです」
「それがマジャールの願いか?」
「それ以外は望んでおりません」

パルタの都に、執政官が着任した。


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