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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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聖獣師と獣戦士と村娘-3

スト様はマリカの顔をまっすぐ見つめてから、いつもの笑顔を見せて言った。

「まず、ここを山の力で鎮めておく。これは今まで通り、私がマリカと行う。バーデルの都は、残念だが見事に荒らされて、直接はもう鎮めることはできぬ。まして、呪詛をこの国に仕掛けたシャンリーがバーデルの都におる。呪詛は術者が死んでも解けぬ。湖の昔話では、蛇神の神官が湖に身投げしてから、さらに強まったのだ。呪詛返しで、自分の仕掛けた呪詛によってシャンリーが自滅するようにしなければならぬ」
「ストラウク様、私たちで呪詛返しを行うのですね」
「ヘレーネ、呪詛に使われた死人よりも多くの子が産まれることが一番強い祓いの方法だが、情けないことに殺し合う戦に行く気力はあっても、子作りできる気力のある若者は減っている。これは呪いのせいばかりとは言い切れぬ」

アルテリスがしきりにうなずいて笑っていた。
マリカは、アルテリスが旅の途中で、アルテリスを絶頂させて満足させるのが先か男性がへばるのが先か、賭けをして、路銀を荒稼ぎしていたのを知らない。

「祟りの影響で人ならざる者になってしまったものを元に戻す方法は、これも私にはわからない。アルテリス、もしも僧侶リーナに再会できたら、怨念を抱いて死んだ者の亡霊を、レナードやアルテリスの護りの力に変えた方法を、私が知りたがっていたと伝えてはくれぬか?」
「わかった。スト様、リーナに会えたら伝えておくよ」
「もし、魔物になった者と遭遇したらどうするのですか?」
「ヘレーネ、兄者や私、あと息子のカルヴィーノは退魔の剣術を身につける鍛練を続けてきた。斬ることで祓うことができる。その技を私は、アルテリスに教えよう。それに、ヘレーネのその小さいが勇敢な獣は祓うのではなく、喰ってしまうのだろう?」
「ええ、レチェは貪欲で悪食です」
「にゃっ!」
「頼りにしてるぞ。ヘレーネは、レチェが護ってくれ」
「障気が満ちて、憑かれた者と遭遇しないとよいが……。ここか、パルタの都に逃げ込めば、憑かれた者から避難して休息や傷の治療ぐらいはできるはずだ」

レナードさんの状態はスト様によると、憑依されやすい状態になっていて、連れ歩くのは危険だということだった。
強い情念で同調すること。自意識が衰弱しきっている状態は、憑依されると、強い情念に同調するように誘導される。憑依したものに意識が融合すると、人ではないものに成り果てる。

「ランベール王に呪詛を施すために、かりそめの依代としてレナードは使われたのかもしれぬ。ランベール王の意識が、この者の意識と同じような衰弱した状態へ誘導されていれば、術者の呪詛によってランベール王は、すでに生死を握られておるだろう」
「ランベール王にレナードを使って呪詛をかけたということですか?」
「人の形をしたものに、呪う相手の血をつけたり、髪などを入れ、針を刺す呪術がある。双子のかたわれを使うこともある。だから双子のかたわれを、生まれたばかりのうちに殺してしまう風習もあった。親が貧しく、どちらかしか育てられないので口減らしで殺すばかりとは限らない」

スト様は双子を使った呪詛の話をした。兄上とマリカは、双子の兄妹。だから、兄上と私を、幼い頃は一緒に離さずに暮らさせるようにしたのは、幼いうちは自分という意識が弱く、双子で同調することも起こりやすいからだったそうだ。

「スト様、伯爵様から、あたいがこれから退魔の技をを習うのはわかったよ。ヘレーネは何をすればいいんだ?」
「パルタの都のリヒター伯爵領官邸に、モンテサントという学者がいる。私がモンテサントに手紙を書くから、届けてほしい」
「わかりました。パルタの都へ行き、モンテサントという人に、異変の兆候が起きていると知らせるのですね?」
「そうだ。あとヘレーネには、前世の神官だった記憶がある。パルタの都に行けば何か気づくことがあるかもしれぬよ」

マリカは少しほっとした。美人のヘレーネがそばにいたら、さすがのスト様でも誘惑に負けて浮気してしまうのではないかと心配だったからだ。

アルテリスがマリカに教えてくれたのはヘレーネは、前世ではリィーレリアという名前の聖獣使いの神官だったこと。
アモスという土地には、火の神殿というところがあって、そこには火を信仰する女性が集まっている、女性だけの国があった。男性に愛想を尽かした女性たちが逃げ込める国だった。ただし、赤ん坊でも男児は国に入れてもらえない厳しい掟もあった。
リィーレリアはアモス育ちで、神官になると旅に出た。するとリィーレリアに惚れた国の王たちが、彼女を奪うためだけに王と臣下で殺し合いや国の命運を賭ける戦を始めた。だから、性悪女とアルテリスは彼女のことを呼ぶ。色気は女の武器と教えられて、リィーレリアは育てられた。まさに傾国の美女。
アルテリスは獣人の国の勇敢な戦士。最強の女性が女王に君臨する獣人の集団があった。戦をすると獣人の女たちは、興奮が収まり切らずに人間とも交尾する癖がある。交わっても孕まないけれど。獣人は他の種族と戦いひたすら最強を目指す。人間の子に、獣の耳や尾がある子供が突然生まれてくる。獣人は子供を引き取り、女の子なら戦士に育て上げる。獣人の男性は、小さな集落でひっそりとおとなしく暮らす。女戦士は宿屋がわりに集落に立ち寄るだけで、また旅立つ。獣人の故郷は天地のすべて。
リィーレリアが獣人に興味を抱いて、アルテリスの旅についてきた。アモスには獣人はいなかった。アルテリスは旅の途中で、何度もリィーレリアをめぐる恋愛沙汰の騒動に巻き込まれた。
男性に愛想を尽かした女性だけの国バモスでは、女性が救いを求め火の神殿を訪れる。火の信仰では、恋も欲情も肯定する。女性が女性と愛し合う国である。
マリカはふたりの考え方を聞いて、驚くばかりだった。世界は不思議なことに満ちている。

マリカは呪詛を受けたレナードの世話をしながら山の家で暮らすことになった。


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