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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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聖獣師と獣戦士と村娘-2

「兵士を集めるための理由は、ゼルキス王国の兵士に、ターレン王国の国境に近い辺境の村が攻撃されたということになっていたけれど、それが嘘だった。それを兵士の募集の前に伯爵様たちに知られたら困るから、レナードや僧侶リーナを口封じするために捕まえようとした」
「口封じ?」
「殺そうとしたってことです」

マリカはヘレーネから話を聞いて、こわくなってしまった。

「王から騎士の称号を与えられ、遠征軍の将軍に任命された者の名前はガルドという。そして、今のバーデルの都の新しい領主は、女伯爵シャンリー。このふたりが手を組んで、辺境で山賊まがいのことをして、遠征軍の出兵の下準備を整えたということだろう」

スト様がそう言った。マリカは、バーデルの都の領主が変わったことも知らなかった。

「アルテリスが見つけて、ここに連れて来たレナードを捕まえておきながら、殺さなかったのはなぜでしょう?」
「私は、ランベール王の戴冠式に参列したのだが、レナードの容姿はランベール王と双子と思えるほど似ている」
「あの青年をここへおぬしが連れて来たのは、そういうことか。あの状態で玉座に座らせておき、王命を側近が伝えるだけで、国の実権を握ることができる」
「兄者、王都にいるランベール王は、本物である確証はどこにもないのでな」

バルテット伯爵や子爵オーギャストを結婚式に捕らえ、若妻のアリアンヌ婦人、子爵オーギャストの新妻シュゼット、令嬢ミリアも捕らえて妻妾としたことを、父上はマリカに話してくれた。
バーデルの都の領主には、後宮で王の妻妾だったシャンリーが、女伯爵という爵位を王から与えられて任された。

「伯爵様、王様はわざわざ結婚式を妨害したのか?」
「そうなんだ。もし捕らえるとしても、結婚式の後日にバルテット伯爵だけを釈明する機会を与えるために王都に呼ぶ。まして、婦人や結婚当日の花嫁や令嬢を捕らえて、そのまま妻妾にするのは、私には理解できない行動だ」

父上はアルテリスに自分の考えを話して聞かせた。父上に、国王を批判してはいけないとスト様は言わない。同感ということなのだろう。

「なるほど、レナードを利用するためにあえて殺さずに生かしておいたということですね」
「えっ、もしかしたら、レナードは、この国の王様ってことなのか?」
「アルテリス、こればかりは治療してみなければわからぬ。王でなかったとしても、容姿が双子のように似ているので、ランベール王とレナードを、こっそりすり替えるつもりだったのかもしれぬよ」

スト様はそう言うと、腕を組んで険しい表情で、どうしたらいいか考えをめぐらせているようだった。

「父上、ここにいれば、レナードさんやリーナさんを捕まえた人たちには見つからないのですか?」
「隠れるにはここが一番だ。アルテリスが、人が集まるからとバーデルの都に滞在して治療できる人を探していたら、暴動鎮圧の騒ぎに巻き込まれてアルテリスは無事でも、レナードは殺されていたかもしれない」
「暴動?」
「兄者、バルテット伯爵が不在になったあと住人が暴動を起こして、女伯爵シャンリーが衛兵隊で騒ぎを鎮圧した。かなりの死傷者が出たらしい。ここに来る途中で噂を聞いた」
「アルテリス、どうしてバーデルの都に滞在しなかったのかね?」
「あ〜、スト様、あそこは頭が痛くなって、なんか嫌だったんだよね。ここの山みたいに人が少ない静かで落ち着く感じじゃなくて。人が多いから気持ち悪かったのかも。でも、パルタの都も人がいるところだったけど、寒気がしたり頭痛がすることなかったんだけどねぇ」
「ヘレーネ、これも予知の力かね?」
「アルテリスの獣の直感……だけではないでしょう。ストラウク様は私に教えて下さいました。あそこでは大きな戦があったと。バーデルの都には、強い怨念が残っていて、それをアルテリスは感じたのかもしれません」

スト様からマリカも聞いたことがある。バーデルの都ができる前に、開拓に来た人たちと、もともと住んでいた人たちが戦って死んだ。それで祟りが起きないように都を作ったという話だった。

「おぬし、シャンリーという女伯爵について、何か知っておることはないか?」
「兄者、ランベール王の後宮ではいつも黒いドレスを着ていたから、黒薔薇と呼ばれていたらしい。かなりの美人で、王都の名門貴族と3人結婚して全員亡くなっている。未亡人で、遺産がかなりあるらしい。ランベール王の妻妾に迎えられたあと、女伯爵の爵位を与えられて後宮から出された。ランベール王とは不仲という噂もある。辺境で人の密売をしていたこともわかった。このぐらいしかわからない」
「ふむ。バーデルの都で多くの人を殺させたのが気になる。シャンリーという女は、地脈や水脈を使い、まるで王国に祟りを誘発しようとしているかのようだ」
「兄者、さらに王国で死者が増え続けると、ここはどうなる?」
「スヤブ湖の蛇神の神官の昔話のように障気が溜まり続ければ、さらに影響が進むか、王国の別の場所で異変が起き始めるかもしれぬ。双子山とスヤブ湖の地脈や水脈は、王都や辺境までつながっているのだ」
「兄者、王都にも?」
「そうだ。ターレン王国の建国の前に、王都のある土地は、蛇神の神官の都と神殿があった。王都に昔話のような祟りが起きたら、この国は滅びるよ」
「兄者、何かできることはないのか?」
「アルテリス、パルタの井戸の水は飲んだかね?」
「スト様、パルタの都に行ったことがあるのかい。あの水はうまかったよ!」
「そうか、それはいい話を聞けた。この土地だけでなく障気の影響はある。そして、因縁がある土地や者にはとりわけ目立つ影響があらわれやすい。パルタの都は蛇神の神官が呪詛を行っても、呪詛が術者に返るほどの強い護りがあるように作られた場所だ。祟りが止まらぬ時には避難できる」
「兄者、避難する以外には?」
「鎮めるしかあるまい。バーデルの都は見事に荒らされたな」


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