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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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祓魔師の乙女たち-1

川の流れを堰止めて、堰が決壊したら川の水が一気に流れ込み洪水が発生する。ゼルキス王国の状況はそれに似ている。
流れ込むのが、異界の障気という違いはあれど、このままでは洪水の被害よりも酷い大災害がゼルキス王国に引き起こされることになる。
祓魔師である聖騎士ミレイユがゼルキス王国に帰還しているが、単独で広い辺境地域にいくつも発生している異界の門を聖騎士ミレイユがひとつずつ破壊できたとしても、障気の勢いが収まる前に、魔法障壁の結界が崩壊する可能性が高い。
異界の門をミレイユが破壊できるのは、魔剣ノクティスの護りにより、障気の影響を受けることがなく、また異界の門を祓うことができるからである。
問題は魔剣ノクティスの力が強すぎるために、逃げるように異界の門が破壊される前に瞬間移動してしまうということである。聖騎士ミレイユの至近距離に異界
の門が発生すれば、魔剣ノクティスが聖騎士ミレイユを護るために、異界の門を破壊する。
辺境の村で聖騎士ミレイユは、異界の門が発生した現場に遭遇している。被害として、従者である僧侶リーナが失踪したが、聖騎士ミレイユは、村に小結界を作ることで応急処置を行った。
しかし、このままでは小結界を作った辺境の村や、ゼルキス王国にも障気が流れ込んでくることになる。
障気に蝕まれたターレン王国の兵士や村人が、ゼルキス王国へ攻め込んで来た時に、ニアキス丘陵方面からではなく、すべて森林方面からであったため、異界の門は森林側で発生し続けている可能性が高い。ニアキス丘陵のダンジョンが持つ魔力が、異界の障気や影響を受けた者の襲撃を退けたのではないかというのが、参謀官マルティナの見解であった。
聖騎士ミレイユ以外の者でも、異界の門に引きずり込まれずに破壊するための方法について、神聖教団の神官でもあるマルティナは、騎士団にいる修道女たちをさらに強化することを、会議の場で聖騎士ミレイユと神聖騎士団幹部の隊長たちの前で提案した。

神聖騎士団で異界の門の対策について協議されている頃、王城では国王レアンドロの手元には、貴族議員たちからの王前議会の召集の嘆願書が集まっていた。その内容は、ターレン王国からの武力侵攻に対して、ゼルキス王国から賠償を求める、または、ゼルキス王国からも侵攻して、辺境地域を制圧するべきという意見がほとんどだった。
聖騎士ミレイユが帰還して侵攻してきたターレン王国の軍勢を撃破した情報を知った貴族議員たちは、辺境地域の利権を得る好機と考えているらしい。
書状を確認した国王レアンドロは、貴族議員たちをゴーレム馬に乗せて、辺境へ送り出してしまおうかと考えるほど、貴族議員たちのゼルキス王国の状況に対する認識のずれに、国王レアンドロは苛立ちを感じていた。
将軍クリフトフは、国境まで侵攻してきた軍勢があまりに異様だったのを実際に目撃している。国王レアンドロが会議で語った異形のオークの言い伝えが正しかったことを理解した。そして、親友のマキシミリアンが、ミレイユを祓魔師の聖騎士として育て上げ、ゼルキス王国に残してくれたことに感謝していた。
弓矢で頭を射ぬかれ、さらに心臓を剣で貫かれようが、平然とつかみかかってきて、喉に喰らいついてくる相手と戦うことになるとは想定外だった。
国王レアンドロから、貴族議員たちが辺境地域の制圧の意見が上がってきていることを聞かされ、クリフトフも貴族議員たちのあまりに気楽な考えにあきれてしまった。
参謀官マルティナが作った魔法障壁を、クリフトフは見ることもふれることもできない。だが、その効果のおかげで、ゼルキス王国で暮らしている人々が異形に成り果てずに助かっていることを、クリフトフは聖騎士ミレイユから聞かされていた。

「クリフトフ、ターレン王国の新王は、この異変に気づいているだろうか?」

国王レアンドロは、将軍クリフトフにそう言うと深いため息をついた。クリフトフも、実際、国境で異形の群れを見なければ信じなかっただろう。
ターレン王国の新王ランベールが異形と成り果て、後宮の寵姫たちの生き血を啜っているとは国王レアンドロや将軍クリフトフは想像もしていなかった。

「将軍クリフトフに、国王レアンドロの名において命じる。もし、ターレン王国から無事に難を逃れ、ゼルキス王国を頼って来る民があれば受け入れるつもりである。国境にそのような者たちが来ることかあれば、必ず保護するよう兵士たちへ指示を出しておくように」
「御意。臣下クリフトフ、王命に従い、ターレン王国からの困窮者の保護を実施致します」

宮廷会議を開く前に、貴族議員たちの承認可決を取らず、緊急処置として国王レアンドロは国王の権限で、ターレン王国からの難民の受け入れを直接、将軍クリフトフに命じた。

この国王の処置に対して不満を持つ貴族はいた。ターレン王国からの移民を、辺境地域の開拓の労働力として低賃金で使うことをすでに考えていたからである。
かつて、ターレン王国との交易も国王レアンドロは考え、ターレン王国の先代国王ローマンと辺境地域の分割の交渉を続けていた。
ただし、ダンジョンのあるニアキス丘陵に関しては、異変が起きるのを危惧して、外交官の使節団に対しターレン王国の領土とする提案を拒否した。
そのことから、貴族議員たちはニアキス丘陵をいずれゼルキス王国の支配地とする意図が、国王レアンドロにはあるものと考えた。
前回の宮廷会議で聖騎士ミレイユが提案していた盗賊団に襲撃された辺境で暮らす村人たちを、ゼルキス王国で保護するという案を、国王レアンドロが行うことに決めたのだろうというところで、それぞれの邸宅で密議を交わしている貴族議員たちの意見は落ち着いた。
今、辺境で起きている異変が、国家存亡の危機であり、同時に自分たちの命が危険にさらされているとは、貴族議員たちには想像できていなかった。

このまま放置すれば、異界の門から蛇神のしもべが出現し続け、魔法障壁の結界は崩壊する。


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