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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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世界樹の乙女-8


「なるほどね。マキシミリアンの言い訳はわかったわ。私が外で一生懸命、マキシミリアンに頼まれたから人間たちのために疲れるまで結界を作って、マキシミリアンに癒されるのを楽しみに帰って来たのに……リーナちゃんに手を出してないのは、情状酌量の余地ありかもしれないけど、私の留守の間、マキシミリアンは魔物娘たちとお楽しみだったわけね」

セレスティーヌがマキシミリアンの鼻先に指先を突きつけ、腰に手をあて、怒っていた。
チラッとリーナのほうをマキシミリアンが見たが、すぐにセレスティーヌのほうを向いた。

「はい、すいません」
「こんなことしたら、これからマキシミリアンはたまに魔物娘たちを、みんなかまってあげないといけなくなるって、考えたらわかるでしょう。それに、マキシミリアン、ミレイユの弟か妹を、魔物娘たちと作るつもりなの?」
「……子供はできないと思う」
「子供ができなかったら、私に内緒で他の娘と仲良くしてもいいってこと?」

そこまで言うと深いため息をついたセレスティーヌは、ベッドに腰を下ろして黙りこんだ。

「マキシミリアンさん、あの、セレスティーヌさんともっと話し合わなくていいのですか?」
「リーナちゃん、夫婦でも、ひとりで考えたい時や話しかけられたくない時もあるものなんだよ。少しひとりにしてあげような」

マキシミリアンは夫婦の寝室から出てくると、リーナを連れてダンジョンの通路を肩を落として歩いていた。

エルフ族のセレスティーヌからすると、マキシミリアンがダンジョンの生成した魔物娘と交わるという行為には、気持ちの整理が必要だった。

リーナの肉体が賢者の石から生成されたように、魔物娘たちは特殊なアイテムから生成されている。
アラクネ娘は、古代エルフ族がまとっていた儀式用の羽衣。
スライム娘は、古代エルフ族のポーションとガラス瓶。
ミミック娘は、古代エルフ族の魔法によって大容量を可能とする宝箱とその中身の品物。
オーグレスは、古代エルフ族が一緒に戦うオーグレスの女戦士のために作成した特殊なガントレットで、腕の防御だけでなく、魔力を込めて殴れば攻撃力の高い武器となるアイテムである。
エルフ族のセレスティーヌからすると、見た目は女性の特徴を持っていて、知性も感情もある魔物娘たちは、アイテムであって、マキシミリアンが魔法で動いている精巧な人形に欲情して愛しているような違和感を感じるのだった。
リーナに対しては、肉体を奪われ錫杖に意識が宿っていた事情を理解している。賢者の石から生成された肉体には、義手や義足のような認識がセレスティーヌにはある。
エルフ族や人間族の女性と関係を持つよりも、愛するマキシミリアンの趣味は他人より変わっていると、セレスティーヌは頭ではわかっているつもりなのだが感情としては、とても複雑なのだった。

マキシミリアンとリーナは、宝箱にとじこもっていたリリック娘の大部屋に訪ねていくことにして、通路を歩いているとオーグレスに出会った。

「あー、奥様が帰ってきたから怒られてへこんでるのか。奥様よりも、私たちのほうが御主人様とのつきあいは長いし、部屋から追い出されたら、私のところに御主人様は来ればいいんじゃない?」

オーグレスに背中をばしばし叩かれて、マキシミリアンは少し困った表情になっていた。

「御主人様、私の推察が正しければ、リーナ様は、私たちのような古代の種族ではなく、神と呼ばれた存在だと考えられます」

オーグレスは、ぽかんとした表情を浮かべていた。そしてリーナも、まばたきを繰り返して驚いて言葉を失っていた。
マキシミリアンだけが、ミミック娘の意見に同意するようにうなずいていた。

愛と豊穣の女神ラーナの支配する異界で賢者の石の錬成をしようと世界樹から転送したはずの細工師ロエルが、伝承として伝えられている天界はなく、この世界のどこかで賢者の石の錬成を成功して、エルフの王国へ帰還した。
そして、この世界のダンジョンで、賢者の石からリーナの肉体が生成された。
マクシミリアンがそこから導き出した答えは、今、自分たちが暮らしているこの世界こそが、愛と豊穣の女神ラーナの支配している世界という結論だった。

「リリックは古代エルフ族の知識の一部を受け継いでいる。ダンジョンで生成された娘たちの原型やどんな種族なのかもリリックは見破る。リリックが神だと判断したなら、そういうことなんだろう。つまり、女神ラーナは、この世界の女性として存在することを選んで、存在し続けてきたということだな」

エルフ族、ドワーフ族、獣人族、人間族の他にも、魔物娘たちの種族の女性として何度も生まれ変わりながら、存在し続けながら、この世界を存続させてきた。

「そして、今はリーナちゃんとして僕らの目の前にいるというわけだ。リーナちゃんが死んだら、また人間に生まれ変わるのか、亡霊となってとどまるのか、エルフの世界樹から赤ちゃんになって生まれてくるのか、僕には予想できない。でも蛇神ナーガの異界に、リーナちゃんが取り込まれたままとどまることになっていたら、こちら側の世界は、蛇神ナーガの異界と同化していたかもしれない。危ないところだった」

オーグレスは、リリック娘やマキシミリアンの話している内容についてゆけず、首をかしげていた。

「ところで御主人様、私たちの推論をリーナ様に聞かせるために、私のところに訪ねてきたのですか?」
「ミミック、察しがいいな。セレスティーヌが旅から帰ってきたんだ」
「あらあら、御主人様、それはお困りですね」

マキシミリアンは夫婦喧嘩のあいだ、リーナに部屋から離れていてもらえるように部屋を用意してほしいと、リリック娘に相談した。
マキシミリアンたちが仲直りするまで、リーナは、オーグレスの部屋に泊まりに行くことになった。
オーグレスは、リーナからダンジョンの外の不思議な話を、たくさん聞かせてもらった。


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