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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-2

村人たちは、地主だったザイフェルト夫妻には恩義を感じており、夫と強引に引き離された人妻フリーデが、若い子爵シュレーゲルと逢瀬を重ねて、悲しみから立ち直りかけているのを見守っていたので、ベルツ伯爵のフリーデに対する追放の命令に不満を抱いた。
傷をさらに深くえぐるように、おたがい情が移ってから引き離すぐらいなら、相手などさせなければよいものを、と村人たちは悲しんだ。
しかし、フリーデはベルツ伯爵から、夫のザイベルトを死刑に処される罪人にされるのをおそれて追放を受け入れた。
ベルツ伯爵領から、子爵シュレーゲルとフリーデを駆け落ちさせて出奔させたいと村人たちは言った。

「それが発覚したら、あなたたちが伯爵様から咎められてしまいます。親切にしていただいたあなたたちの事は忘れません。ありがとうございました」

こうしてフリーデは。ベルツ伯爵領から去って行った。
暴動が起き、闇市が開かれ、盗賊団が抗争中のバーデルの都は、かなり混乱していた。ベルツ伯爵は、バーデルの都がそんな混乱した状況になっていることを噂を聞いて把握していた。
しかし、後宮の黒薔薇の貴婦人と呼ばれた寵姫シャンリーが、ランベール王から女伯爵の爵位を与えられ、バーデルの都を任されることは予想していない。
ベルツ伯爵は、盗賊団の手下を使い、他の伯爵領の情報を探らせている。その盗賊団の手下に金を渡し、子爵シュレーゲルが追っても見つけられない状況の混乱したバーデルの都へ、人妻フリーデを送り込んだ。

余所者の人相も態度も悪い連中がフリーデを拐って行ったと、子爵シュレーゲルは村人たちからこっそりと伝えられた。
子爵シュレーゲルは父親のベルツ伯爵が他の伯爵領の情報を集めるために、評判の悪い連中も利用していることを知っていた。

快男児カルヴィーノは、子爵シュレーゲルから、子爵シュレーゲルの思いを聞いて、ザイベルトともパルタの都で親しくなっていることもあり、出奔すると言うシュレーゲルを、カルヴィーノがフリーデの行方をつかんでから出奔するべきだと、待つように説得した。
行方がわかるだけでなく、そのまま無事に胡散臭い連中からフリーデを救出できたら、リヒター伯爵領へフリーデを保護する。カルヴィーノだけでは救出が難しいようなら、ふたりで救出に行くためにシュレーゲルも出奔すればいい。だから待てと、カルヴィーノは言った。
出奔してフリーデを探すつもりだった子爵シュレーゲルだったが、歳上で旅慣れている雰囲気のカルヴィーノに任せ、ベルツ伯爵領で待つことにした。

パルタの都へ騎士ガルドとモルガン男爵の令嬢ソフィアが、鍛えた遠征軍の残留の兵士たちを連れて乗り込むのは、もう少しあとであり、フリーデの夫ザイベルトは、学者モンテサンドの護衛をしており、妻フリーデの危機的状況を知らないまま、刺客として潜伏していた。

カルヴィーノは、バーデルの都に胡散臭い連中が集まっていることを、ベルツ伯爵領ではなく、隣のブラウエル伯爵領のレルンブラエの街の酒場で買った娼婦の少女から聞き出した。酒場の店員が、個人的に娼婦をしているのにカルヴィーノは驚いた。

「酒場で働くだけじゃ、この街じゃ暮らしていけないの。でも、金さえあれば便利で暮らしやすいいいところなんだよ」

治安は悪くない。酒場の外で酔っぱらいが喧嘩をしていて、街の見回りをしている衛兵ににしょっぴかれていったのをカルヴィーノは見かけた。

「若い人はあまりお金ないよね。だから無理しなくていいから、少しだけおこずかいもらえる?」

ブラウエル伯爵領のレルンブラエの街では、住人たちの住所と氏名を管理されていて、家賃の支払いが納税の代わりだとわかった。少女は街暮らしに憧れて村を出てきて3年目らしい。
他の伯爵領から来る客で、ロンダール伯爵領の小貴族らしい者が宿屋ではなく街で暮らす女性の家に泊まって帰ることはよくあることを聞き出した。
ベルツ伯爵領や小貴族の仕事を地主が行っている。リヒター伯爵領もパルタの都からかなり離れているので、パルタの都の小貴族は雇わずに自領の人材で内政を行っている。リヒター伯爵領は、いろいろな伯爵領からリヒター伯爵の方針で人を招いてきた。たとえば、学者モンテサンドも元バルテット伯爵領の小貴族で、リヒター伯爵に論客として迎えられた経緯かある。
フェルベーク伯爵領。
ロンダール伯爵領。
ブラウエル伯爵領。
この3つの伯爵領には、パルタの都から赴任してきた小貴族たちが多く滞在している。
どうやら、パルタの都に待たせている妻に隠れて、小貴族の官使たちは街の住人たちと浮気しているようだ。

フェルベーク伯爵領の街には、男好きな客が集まる。ロンダール伯爵領の街は少女や小柄で胸の小さな女の子好きな客が集まる。

「ここよりも、もっとずっと高めのおこずかいを払わないとむこうの子たちは相手しないんだよ」
「シナエルは、ロンダール伯爵領に行けばいいんじゃないかな?」
「あ〜、私ってそんなに子供っぽくないと思うけど。私はお金を貯めて、バーデルの都でお店を持つのが目標なの。フェルベーク伯爵領の子とか、ロンダール伯爵領の子たちは、お金があれば幸せって感じで、もう、きりがないっていうか。それに、好きな人ができたら一緒にお店を手伝ってもらえたらいいなって」
「何の店をやるつもりなんだ?」
「食堂がいいと思ってる。私、料理が好きなの。作るのも食べるのも。酒場はちょっと、困った癖があるお客さんもけっこう来るから」

大金を報酬で受け取るのに慣れてしまって、普通に働いて得る収入があり得ないぐらい少ないと感じる人たちとは、話が合わないとシナエルは言った。

「だからね、私はこの街で働いて暮らしてるの」

相手から支払ってもらえる報酬の金額で自分がどれだけ相手から大切に思われているか判断して、生きている若者たちがいた。シナエルは金銭にそれほどまでは隷属させられていなかった。


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