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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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カルヴィーノの恋人-1

隷属の儀式。
王都トルネリカの王宮の中でも、国王や招待された者以外は、妻妾と寵愛を受けている寵姫しかいない後宮で行われていたのは、蛇神祭祀書に残されている秘儀であった。
本来であればヴァンパイアとなった蛇神の女神官たちが若さと美貌を維持するために、生贄の若い娘の生き血を啜る。そして、使い魔である蛇神のしもべを生贄の娘に憑依させ、身に宿る魔力を高めるだけでなく、憑依されながら生き血を啜られる快感を忘れられないようにして、心を隷属させるというものであった。
最終的に異界へ渡り、蛇神ナーガの妃として、半人半獣の牝の魔獣化へ導くために存在する蛇神祭祀書の秘儀のひとつが隷属の儀式なのである。
毒殺されて簒奪された王の権力を、息子ランベールの肉体に憑依して奪い返した亡者のローマン王は、なぜ自分がヴァンパイアとなったのか理解できていない。
ヴァンパイアになることが、異界へ渡るために呪物に宿るための過程に過ぎないことなど想像できない。
意識を宿した呪物である蛇神の錫杖を、隷属させた巫女に異界へ運ばせ、蛇神ナーガの目の前で巫女に憑依して肉体を奪い、蛇神の妃の姿に魔獣化するための過程にある。
ヴァンパイアになるまでに、仮死状態のランベールの肉体には蛇神のしもべをかなり取り込んでいており、ひどく蝕まれている。もう、人間に戻ることができないほどに。
ヴァンパイアと変化した肉体でいくら寵姫と交わろうと、魔力を放出するために孕ませることができない。
女神官がヴァンパイアになっていれば、射精で魔力を放出することはないため、蓄えられていく魔力が限界を越えることで、自在に肉体から離脱して自意識を呪物に宿したり、隷属させた者の肉体を奪うことができるようにもなるだろう。
だが、ランベール王の肉体は、男性の肉体であり、禁欲して術師の素質がある生贄の女性たちの生き血だけを啜り続けなければ、ローマン王の望む不老不死は叶わぬ夢であった。
魔力を放出しながら、生き血を啜り放出した魔力を補充する。交わり射精するほど、少しずつ魔力が損なわれている。そのため、寵姫の生き血を求める渇きと欲情が、落ち着くことなく続く。
喉かひどく渇き、眠りが妨げられる。安眠が妨げられた倦怠感からは、生き血を啜ることや交わりの興奮や快感で一時的に忘れることができる。
蛇神の女神官ならば、ヴァンパイアと化しても生き血を啜りすぎて隷属させた生贄の巫女を、失血死させてしまうほど貪ることはない。その隷属させた巫女の肉体は、いずれ自分が使う肉体となることを知っているからである。まだ、魔力の放出は他の呪法を用いたりしない限りなく、魔力が常に不足しているような状況にはなりにくい。

もっと生き血を啜られたいと隷属する生贄の寵姫は魔力を奪取される快感に懇願する。さらに、ヴァンパイアと化したランベール王は子宮を魔力を含む精液を注ぎ込む。魔力が補充される快感が、魔力を奪取される快感と同時に押し寄せ、寵姫はただひたすら絶頂させられる。

失血死したことに、生贄の寵姫たちは気づくことはない。いつも通りに気絶寸前まで脱力して、そのまま息絶えてしまうからである。強い恨みや思念を持つわけではなく、ただ快感を欲するため亡霊になれず、蛇神のしもべに取り込まれるばかりである。遺体からの股間からずるりと這い出た蛇神のしもべは、また別の寵姫が寝室に来るまで物陰に潜むか、ランベール王の肉体に潜り込む。
王の閨房は、愛情を寵姫たちと確かめ合い、後世へ愛しあった証の新たなる命を宿すための安らぎの場ではなくなった。王都トルネリカの後宮は、生贄の命が捧げられる淫獄であった。
ランベール王は、ゆっくりと脱力した寵姫の体の上から身を起こし、自分の唇についた寵姫の生き血を、先端がふたつに分かれた舌先で舐めた。それは蛇の舌先のような舌先であった。

蛇神の呪いによる隷属ではなく、愛した夫の命を救うために、その身を捧げ、屈辱に耐え、隷属して生きることを選んだ美しい人妻がいた。刺客ザイフェルトの妻フリーデである。
権威と脅迫によって、フリーデを隷属させたベルツ伯爵は、フリーデを何度か辱しめて屈服しているかを確かめたのち、まだ女性との交わりの悦びを知らない童貞と思われる若い子爵シュレーゲルの手ほどきを命じた。
子爵シュレーゲルが、褐色の肌を持つ美貌の腹違い姉ヘレーネを恋慕していることが、ベルツ伯爵には気がかりだった。
フリーデには、子爵シュレーゲルに対しての同情もあった。結ばれることが許されない人を愛してしまったシュレーゲルの心の淋しさを、少しでも慰めてあげたいと歳上の女性として思った。
父親のベルツ伯爵は、ヘレーネの母親である亡くなった妻妾アリーダの事を名残惜しんで忘れられずにいる。その息子のシュレーゲルは、アリーダの面影を残す姉のヘレーネを恋慕している。
どちらも交わることのできない相手への思いを、心に抱えて生きている男性たちなのだった。
フリーデは、手ほどきの相手以上に子爵シュレーゲルに気に入られてしまった。子爵シュレーゲルは頻繁にフリーデとの逢瀬を重ねるようになっていった。
姉のヘレーネへの恋慕を抱えながらも、他の女性に対して淫らな行為にも溺れてしまう後ろめたさが子爵シュレーゲルにはあった。それすらも人妻フリーデは咎めることはなかった。夫と離ればなれになってしまった淋しさがフリーデにもあったからである。フリーデは慰めるつもりが、シュレーゲルに慰められていると感じるようになっていった。
子爵シュレーゲルを後継者として、いずれどこかの伯爵の血縁者か、王都の名門貴族の血縁者の令嬢を正妻として迎えさせることをベルツ伯爵は考えていた。このままでは、シュレーゲルが人妻フリーデに惚れて正妻にすると言い出すのではないかと、ベルツ伯爵は警戒した。
人妻フリーデを、子爵シュレーゲルから引き離すことに決めた。
人妻フリーデを潜伏させていた村の責任者である地主たちに、フリーデを追放するように命じた。


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