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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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パルタ事変-6


ソフィアがリヒター伯爵領官邸を訪ねてきたのは、料理人のイザベラから相談をを持ちかけられたからだった。モンテサントが悩んでいるので相談に乗ってあげてほしいと頼まれたのである。
料理人イザベラが、モンテサントに惚れて、毎晩泊まりに行っているのをソフィアも知っていた。国の情勢や身分階級の話で以前からモンテサントが悩んでこじらせているのは、ソフィアは以前から知っていたので、モンテサントから話を聞きに来たのである。

「てっきり私は、先生が弟子の私たちに話すみたいにイザベラさんにも、難しい話をしたのかと思って。ザイベルトさんも奥さんを連れて来ると言って離れてますし、先生と一緒に考える人がいないのかと心配だったので」

モンテサントは師匠と弟子という態度ではなく、同じ情勢について考える仲間として接していた。

「簡単に誰かの師匠となってはいけないと私は思う。弟子だから、すべて師匠に任せればいいというのも困る。君たちは私を先生と呼ぶが、私は君たちを友と呼ばせてもらう」

モンテサントは、自分を師匠と慕う弟子ができるたびに、弟子たちにそう言い続けてきた。

モンテサントの悩みを女伯爵シャンリーなら、媚薬の香を焚くことで、夫婦だろうが親子だろうが、欲情させてしまえばいいと考えるかもしれない。
モンテサントは、蛇神の神官が使う媚薬の香については知らなかった。知っていたとしても、危険なので使おうとはしなかっただろう。

「ソフィア、彼女たちは、相手のことは好きなのに、どうしてもできない、それがつらいそうなのだが、何か方法はないだろか?」

(ガルドのみたいに、強引に迫ってきて蕩けるほどたっぷり犯されたら、好きな人か相手なら、なおさら拒ばみきれないので、男性が努力するしかないかも)

ソフィアはそう思った。だがさすがに、恥ずかしさもあり、口に出すのはためらわれた。

「あの、もしも、先生がしたくないときに、好きな相手から甘えて迫られたら、どうしますか?」
「む……それは、流れに任せるというか、善処するというか。ソフィア、たじたじになることはあっても、好きな相手に吐き気や震えを覚えることは、私にはなかった」
「……たじたじ」

ソフィアは吹き出しそうになるのを、必死にこらえた。イザベラに求められて、モンテサントが、目の前で見せているような困った表情を浮かべているのを、とても生々しく思い浮かべてしまったからだった。

執政官のベルマー男爵の処刑を多くの女性が見るために衛兵隊屯所に来ていた。自分を脅迫で支配していた男性が死ぬのを確認するために。

「夫や恋人がベルマー男爵ではないとわかっている。しかし、どこかで同じようなものだと感じているのかもしれない」

モンテサントはそう言って、深いため息をついた。小貴族の女性たちは、男性の収入に頼って暮らしている認識が強い。男性に嫌われたら、生活できなくなるかもしれないという不安が底にあって、それを支配されていると感じているからではないか、とモンテサントは言った。

「ソフィアやイザベラは、別に男性に頼るというより、支えている感じだと思うんだ。しかし、小貴族の女性たちはちがう。女性たちの男性への嫌悪感根っこのところでつながっている気がするんだ」

そう言われてみて、ソフィアもガルドと出会う前は、モルガン男爵の令嬢という立場に縛られており、どうすればいいのかわからず、悩んで、モンテサントのもとに初めて訪ねたのを思い出した。

「女性が自分で暮らせる収入を得て、相手から選ばれるのではなく、女性が相手を選ぶことができるようになれば、この問題は解決するということですか?」

「わからない。しかし、男性から女性が支配されている感じは、少しは緩和されるかもしれない」

若妻のセルマは、モンテサントに相談することなく、ブラウエル伯爵領へ、夫のセブリアンと転居していった。
セルマは夫が迎えに来てくれたことや、久しぶりに再会して体を求められた時、夫との淫らな行為に、モルガン男爵やベルマー男爵との行為の時との違いに、興奮もして、とても気持ち良かった。
男性に対して失望しなかったセルマは、つらい体験を克服できた。
貞淑な貴婦人カテリーナと令嬢グローリアは、夫のエルナントに強い嫌悪感を抱いているように思えるが、男性というものに対して抱いていた信頼や安心感が失われてしまい、失望しているから、嫌悪感があるのではないかと、モンテサントとソフィアは話し合いながら考えた。
エルナントは失業中で、それなりに今まで働いた金を貯めているが、ブラウエル伯爵領へ行ったセブリアンとは違って、たしかに少し頼りない。

(たしかにガルドが、腕っぶしが強い、乱暴なだけの人だったら、こんなに惚れたりしなかったかも)

「先生、カテリーナさんとグローリアさんが、エルナントさんを養えるぐらいの仕事と収入が得られるようになったとしても、男性への失望があるかぎり、嫌悪感は残るのではないでしょうか?」

エルナントは「パルタ事変」の被害者だろう。職を失って、それまでの夫や父親としての自信をなくしてしまった。
騎士ガルドはパルタの都を占拠して、毎月ベルマー男爵が小貴族の家庭から割増で徴収していた税金の取り立てを、モンテサントの提案から中止していた。
騎士ガルドがパルタの都の小貴族たちから財貨を略奪したと、宮廷議会から、言いがかりをつけられないようにするためであった。
そのため、パルタの都に暮らす小貴族たちの家庭は、金銭的な負担が大幅に減っている。

ベルマー男爵はパルタの都の小貴族全員から割増で徴収し、その余剰分を蓄えていて、気に入った女性には、毎月の納税を半額にし、周囲の住民とは違う好待遇を与えた。半額であると知られないように、好待遇を受けた女性は気まずさから周囲の住民との関わりを避ける。
こうして、ベルマー男爵の悪行はさらに隠されていった。


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