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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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思想家モンテサント-1

パルタの都は、王都トルネリカと伯爵領をつなぐ国王直轄領の要所である。宮廷からパルタの都の管理を任され、ベルマー男爵が赴任してきたのは、12年前である。

ベルマー男爵がローマン王によってパルタの都へ左遷され、王都の宮廷議会から外されることになったのは、外交官としてニアキス丘陵割譲の交渉の失敗の責任を取らされたからであった。
まだ20代後半の若い官僚が、ローマン王の推進する政策の責任者を任されたのは、当地、宮廷に有力な伯爵たちが出仕していたが、モルガン男爵の工作によって排斥されていく過渡期だった事情と関わっている。
ローマン王へ、先にバルデット伯爵が、ゼルキス王国へ外交官として推薦されていた。モルガン男爵を中心とする王都の名門貴族派閥の官僚たちの工作である。
推薦された情報をつかんだバルテット伯爵は、病を得たと宮廷へ出仕せず、自領のバーデルの都へ帰ってしまった。
ゼルキス王国との交渉を失敗した時、爵位や領地を剥奪されるのを警戒したからであった。

モルガン男爵は、バルテット伯爵が宮廷から身を引いたことで、逃げられたと悔しがった。バルテット伯爵を、宮廷から逃がした伯爵派閥の官僚たちは、名門貴族派閥の若手であるベルマー男爵を標的とした。モルガン男爵の飼犬とベルマー男爵は疑われていた。

ゼルキス王国のレアンドロ王は、ニアキス丘陵を両国で割譲するローマン王の提案を拒否した。
外交官として交渉したベルマー男爵は、レアンドロ王の考えを理解できない。かつて、異形のものが出現する呪われた地であったことや、その対策として、ニアキス丘陵にあるダンジョンを利用していることを知らない。
伯爵派閥の宮廷官僚たちも、過去の事情を知る者はいなかった。ただし、ローマン王のニアキス丘陵割譲案は、ローマン王の後見人でもあったヴィンデル男爵の生前であれば、ヴィンデル男爵がローマン王は諌めていたはずと考えていた。
この時の伯爵派閥の官僚たちは、ヴィンデル男爵内政重視の考えを継いでいた。

のちに、バルテット伯爵が宮廷議会から去った影響によって、伯爵派閥は分裂してしまった。

ゼルキス王国にある神聖教団の移動魔法陣を経由して、ターレン王国の王都だけでなく伯爵領にも獣人族の行商人たちが訪れ、収穫物の一部を買い取るようになった。ゼルキス王国からの外貨が、伯爵領にも流入するようになる。
穀倉地帯の伯爵領主たちの中には、ゼルキス王国との外交による食糧輸出や。戦となっても穀倉地帯の拡大を考えるようになる者もいた。自国の領土のみの内政重視の宮廷官僚たちと意見が分かれ初めたのである。

のちに、伯爵派閥の官僚たちから、伯爵領の受け継がせる領土不足の問題を解決するために、ターレン王国の領土拡大案がローマン王に進言された。
この時には、すでに王佐の能吏ヴィンデル男爵の内政重視の考えに従っていた官僚たちは、かなり排斥され、モルガン男爵の絶対王権主義の派閥に従うようになっていた。
モルガン男爵は、王こそが実権を持ち、貴族官僚は王の廷臣にすぎないというヴィンデル男爵の考えを継いでいるふりをして、ヴィンデル男爵が生前にまとめ上げた宮廷にまぎれこんだ。
ヴィンデル男爵は、ローマン王の後見人となり、王都の名門貴族、パルタの都の貴族、地方の伯爵たちを、分け隔てなく宮廷へ招き入れた。宮廷議会を使って、ヴィンデル男爵個人が権力を独占していると思われないようにした。
独裁者だと思われたら、ヴィンデル男爵は生きられないとわかっていた。
ヴィンデル男爵の死後、宮廷では派閥に分かれて、権力争いが起きることを、ヴィンデル男爵は予想していたのかもしれない。ヴィンデル男爵は、親族を後継者にしようとはしなかった。

ベルマー男爵はパルタの都の管理官として、王都トルネリカからパルタの都の官邸へ赴任となった。ベルマー男爵は、ローマン王から爵位を剥奪されると、伯爵派閥の官僚たちからは思われていたが、宮廷議会から除名されるだけで済んだ。
ベルマー男爵は、パルタの都で再び宮廷へ戻る機会を待ち続けた。

ローマン王が崩御すると、左遷の元凶となったバルテット伯爵への復讐を行い、さらに、宮廷へと戻る機会をベルマー男爵は得るため、モルガン男爵に近づいたのだった。
外交官を王命で任された時、ベルマー男爵は王都の名門貴族ではなく、地方の伯爵たちの縁者でもない中流貴族であり、モルガン男爵の名門貴族を集めた派閥と伯爵派閥のどちらが権力を握るかを、用心深くうかがっていた。
それで逆に、伯爵派閥から疑われた。

次の王にリヒター伯爵を擁立する動きがパルタの都であることを、モルガン男爵にベルマー男爵は知らせた。
リヒター伯爵領は、ローマン王の父王であるニクラウス王が、伯爵であったが、子爵へ領主の地位を譲り王となったあとの伯爵領である。リヒター伯爵は、ニクラウス王の孫にあたる。
リヒター伯爵自身は、宮廷議会に進出しようとすることも今までなく、国王となる野心を持つ人物ではなかった。リヒター伯爵の年齢は、他の伯爵たちより歳上の49歳である。
バルテット伯爵は、リヒター伯爵以外の七人の伯爵の連名による王として推薦、および皇子ランベールを、リヒター伯爵領の領主とする建白書を宮廷議会へ出そうとしていた。
建白書が宮廷に届く3日前に、モルガン男爵はランベール王の即位式を行うことができた。もしも、即位前に伯爵たちの連名による建白書が届いていたら、モルガン男爵でも皇子ランベールの擁立は難しかった。
建白書の提出を、パルタの都の管理官のベルマー男爵が遅らせた結果である。

バルテット伯爵と子爵オーギャストは、ランベールが即位後に、反乱罪の容疑で捕縛され、二人が獄中にて病死したことで、ランベール王に爵位と領地を剥奪された。

ベルマー男爵は、騎士ガルドの遠征軍の兵糧運搬に関する記録の改竄を行うことで、パルタの都から、宮廷へ戻してもらう密約をモルガン男爵と交わしていた。


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