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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ターレン王国の退廃-1

モルガン男爵は、遠征軍に送る2000人の兵糧2ヶ月分の予算のうち、どれだけ自分の懐に横領するかを、ガルドが騎士の爵位を拝命する前から考えていた。
ガルドが軍事会議で遠征軍を先発隊と後発隊に分けたので、先発隊の1000人分の兵糧1ヶ月分は、しかたなく確保して遠征軍に持たせた。

後発隊1000人に対しては兵糧ではなく、現金支給で渡して、国境付近の宿場街で使わせることにした。これに関しては、宿場街を仕切っている奴隷商人シャンリーから提供を受けた。その見返りとして、奴隷売買の法改正に協力するという条件を、モルガン男性は受け入れた。

奴隷商人シャンリーは、奴隷の売買が公認されたら、街道沿いの宿場街を使って奴隷の売買を行うつもりだった。
この時には、宿場街の住人たちを手なずけておく必要があった。のちに、シャンリーは伯爵領の街を手に入れると、宿場街の別の利用の方法を考えるようになっていく。

宿場街は王都や作物の生産地の領地に比べると、行商人が通ることで落としていく金が生活の糧だった地域なため、新王ランベールが徴兵を開始したことで、行商人たちが王都や生産地との取引を打ちきり立ち去ったので、宿場街は寂れつつあった。
そこで、シャンリーが持ち込んできた遠征軍駐屯地の話に、宿場街は兵士たちから金が落ちてくると期待して、宿場街の住人たちは、遠征軍の駐屯地としての利用に同意した。

ゼルキス王国への遠征軍の進軍や、貴族たたちの王都の官僚か地方領主かの実権争いに対して、宿場街の住人は平民階級なので、考えがあるわけではなかった。先発隊がまず辺境へ行軍する時に、金を落として行った。これがあったので、後発隊に対して宿場街全体で、遠征軍を歓迎する雰囲気があった。

モルガン男爵は、奴隷商人シャンリーとの取引で遠征軍の支持者として先発、後発どちらの兵士たちの支度金を出したことを、宮廷の議会では公言せずに隠していた。法改正で配る裏金も、いずれ必要になるのがわかっていたからである。

地方領主の伯爵たちは、新王ランベールの志願兵を募る呼びかけによって、ゼルキス王国への作物の輸出による裏金作りを妨害されたことに不満を抱いた。
平民に作物を作らせ、その半分を徴収した。自領で収穫された全体の1/5を王都へ上納する。さらに1/5を転売し、残り全体の1/10は平民階級への補填として貯めていた。
作物の収穫は毎年豊作とは限らない。全体の半分を搾取されたら、暮らせない年もある。そんな不作の年は1/10の補填分や転売分を減らして平民階級に配布する。
不作の年は作物の取引価格が上がり、転売量が減っても、毎年変わらない外貨収入が見込める。
行商人への転売は、領主たちには平民階級を手なずけておくのには必要な手段だったのである。
不作の年に王都に納められる収穫物の量が減ると、王都は作物を行商人たちから買いつける。行商人たちは生産地の伯爵領から買いつけた金額よりわずかに高めの価格で王都に売る。

新王ランベールが志願兵を募った年が、前年に続き豊作だったので、遠征軍のために追加徴収をされても、売るはずの行商人が来ない売る分から捻出したが、これ以上は追加徴収ではなく、宮廷の買いつけでしか収穫物は出さないと、連名で王へ嘆願書を出した。
その筆頭者のバルデット伯爵が、反逆罪の容疑で投獄された。

志願兵として集まった若者のうち、ゼルキス王国に戦を仕掛けられたから自国を守るという気持ちの者と、戦に勝てば辺境の開拓で、褒美で自分の農地を地主として持てるかもしれないと期待した者がいた。
貴族である領主に収穫の半分を上納したあと、農地の管理者である地主がまず自分の取り分を多く取り、残りを働く農夫たちに分配した。地主の立場の家の若者は自国を守るのは名誉であるという考え方を親から教えられたが、雇われている農夫の若者には地主への不満と憧れしかなかった。

王都では、貴族だけが人間という雰囲気があり、貴族の館の使用人なら給金があるだけましで、生活に格差があった。
平民階級から、男爵よりも上の爵位である士爵を王から与えられた騎士があらわれたことで、兵士として志願すれば、国から使用人よりも多く給金をもらえる立場になれると思った若者が参加した。

王の廷臣である男爵たちは、集まった若者たちを、王都に流れ込んできた流民として考えていた。国庫にたかりに来た野良犬ぐらいな認識であった。

王、伯爵、士爵、伯爵の領土の後継者である子爵と宮廷の官僚である男爵は本来は同等なのだが、先代の王ローマンが王が実権を握ることに執着していたので、王都の官僚で領土を持たない貴族である男爵たちは、伯爵たちと同等かそれ以上と思うようになっていた。

若者たちは不満があれど、王と貴族が実権を握る王政の体制そのものには、疑問を持ってはいなかった。

王都や地方の耕作地でうまく仕事にありつけず、辺境で奴隷として使われていたガルドの手下たち100人だけは、貴族な平民階級が奴隷をどれだけ虐げるかを身を持って体験していて、復讐心を抱いていた。

ターレン王国というより、地主の後継ぎとして、自分の耕作地を守るという認識の若者。
雇われ農夫で一生働くのが嫌になって、王都に家出するように、地主になりたくて王都へ来た若者。
奴隷として虐げられた若者。
こうした若者が志願兵となった。

では、平民階級の若い女性たちはどうだったかといえば、奴隷商人シャンリーによって、身を売られていく運命が待っていた。

雇われ農夫の娘は、地主の家に嫁ぐのに憧れた。地主の娘は伯爵や子爵の愛妾となるのに憧れた。

王都の平民階級の娘たちは、酒場や市場で地道に働くことより、貴族の館の使用人になることに憧れた。貴族の愛妾となるためには、貴族の男性のそばにいないと無理だと考えていた。

ターレン王国では、平民階級の者たちのほとんどが、貴族は裕福なのだと信じきっていたのである。


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