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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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師匠ロエル-2


セストは脇腹のあたりを、指でつまんでちょっとつねられた。

師匠のロエルとセストはつきあうことになってから、毎日、同じベッドで手をつないで眠っている。

仲良くしたいが、人前で仲良くするのは恥ずかしいらしい。

(師匠、かわいすぎですからっ)

ドワーフ族の細工師は、その美しい手や指で、いろいろな物を加工して形や素材そのものまで変えてしまう。
師匠のロエルは、布を裁ち、針と糸で縫い服を作るセストの手つきに魔法のようだと、目を輝かせていたが、セストからすれば師匠のロエルの手のほうが、魔法のようだと思う。

どうして、この人の小さな華奢な手は、自分の気持ちをこんなに興奮させたり、ときめかせたりするのだろう。

以前まで、セストは師匠のように鉱石を柔らかくして、金属の素を取り出すことができなかった。

「ねぇ、セスト、世界で一番柔らかいものを思い浮かべてみて」

そう言われて、柔らかい手ざわりのいい布を思い浮かべてみたが、その時はうまくいかなかった。

今はできる。
鉱石から素を取り分けるのは、細工師の基礎の技らしく、人間族だからできないのだと思い込んで、師匠に帰りますと言ったことがあった。

「セスト、私のことが嫌いなの?」

セストは修行しながら一緒に暮らしていて、師匠がとても可愛らしい女性だと思うようななって、恋をしていた。
しかし、弟子なのに師匠が可愛らしい女性だからといって、毎日、胸がどきっとしたり、たまに夜の工房で一人で師匠のことを思い浮かべて勃起したりしてしまうのを、情けないと思っていた。

帰りますと師匠に言ったセストは、きっと泣きそうな顔をしていたと思う。ロエルに手首をつかまれて、セストは初めて2階の部屋に案内された。

ベッドに腰を下ろすようにセストは言われた。その隣にロエルが静かに腰を下ろして、どうして帰ると言い出したのか質問された。

細工師の基礎の技が、師匠が作業で忙しい中で、何度も時間をつくってもらっているのに、一度も成功しないこと。
それは自分がドワーフ族ではなく、人間族だからできないのだと思ったこと。
それなのに、住み込みで一緒にいさせてもらっているのは、ただの迷惑なのではないかと気まずくなったこと。

セストの話を、ロエルがうなずきながら話し終えるまで聞いていた。
話し終えたセストに、ロエルが手をのばして、幼い子供にするように、セストの頭を優しく撫でた。

「世界で一番柔らかいものって、セストは何を思い浮かべたの?」

セストは、貴族にドレスを作った時の、ダンジョンの大蜘蛛を退治すると採取される糸から作られた、柔らかな布を思い浮かべたことをロエルに話した。

「セスト、目を閉じて」
「えっ?」
「いいから、目を閉じなさい」

意味がわからないが、師匠に少し強い口調で言われて、セストは目を閉じた。

唇に柔らかなものがふれた。

「お師匠様?!」

キスをしたロエルが顔を真っ赤にして、うつむいていた。

「……ないで」
「えっ、な、何ですか?」

うろたえているセストが、ロエルが小さな声で何かを言ったのを聞き取れずに、聞き返した。

「帰らないで。ずっと一緒にいて!」

顔を上げたロエルが今度は、はっきりと言った。

「でも、俺……お師匠様の迷惑になりたくないし、ここに来たのは、細工師になって師匠の作ったみたいなハサミを俺も作りたいと思ったからだし」

弟子入りを頼み込んだ時、セストは大事に持ち歩いていたハサミを、ロエルに見せた。たしかに、そのハサミはロエルの作ったハサミだった。
ドワーフの細工師は、作るときに強い念を込めるらしく、自分の作ったものか、何十年過ぎてもわかるらしい。
2年間のルヒャンの都までの旅の話を聞いたロエルは、セストの弟子入りを許可してくれた。
「師匠からすれば弟子は奴隷」
と、指を差されて言われたけれど。

同じ黒いワンピースをたくさん持っていて、いつも同じ服装で、食事はお腹が空くと、食堂に行って、いつも同じサンドイッチを食べていて、作業に夢中で、工房で椅子に座ったまま、作業机に倒れ込んでいるように眠ってしまう几帳面だが自由すぎる生活をロエルはしていた。

炊事、洗濯、掃除、そして店番とセストはロエルが作業に集中できるように気を使い、あれこれとこなしているうちに、ロエルは2階の部屋で眠るようになったし、セストのシチューをたまに食べたいとせがんでくれるようになった。
基本的に物静かで、セストに話したい時だけ近づいてくる感じで、師匠はまるで猫みたいな人だとセストは思った。

またうつむいて黙ってしまったロエルを見つめていて、一緒に暮らしていてあったことや、ロエルがシチューをニコニコと食べている顔や、作業中の真剣な横顔などをセストは思い出していた。

「……なので、お師匠様、明日の朝、ここを出ます」

そこまで言ったあと、セストは見てしまった。ロエルは、膝の上で両手を握りしめていて、それは少し震えていて、手の甲には涙がこぼれ落ちているのを。

「セスト、ずっといて」

ロエルの小さな声も涙声で震えていた。
師匠も弟子の自分のことを好きになってくれていたと、セストは気がついた。

勇気を出して、好きという気持ちを、恥ずかしがり屋で、店番も苦手な女の子なのに伝えようと、キスまでして、目の前で震えて泣いているのを見た。
女の子にいじわるをして、泣かせてしまったような気分になってきた。

「はぁ〜っ」
セストは大きくひとつ、深いため息をついていた。

「俺でいいんですか、お師匠様」

顔を上げたロエルは、涙をぽろぽろとこぼして、鼻をすすった。

セストは、ロエルの頭を撫でて笑った。
自分のハンカチをロエルに差し出した。

「せっかくのかわいい顔が、だいなしですよ、お師匠様」


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