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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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魔剣との契約-1

騎士団長ミレイユが、執務室で配下の騎士たちに応対し作戦の指示を終えると、すでに日が暮れていた。

ミレイユは自室に戻り、ベッドに横たわって目を閉じた。
僧侶リーナの蛇神の錫杖を見物がてら任務を遂行に行った参謀官マルティナは、まだ騎士団本部に戻って来ていない。

(明日は出発だが、マルティナはもう魔導具との契約について、僧侶リーナに教えてくれているだろうか……)

ミレイユはそう考えているうちに、眠りに落ちた。王との謁見、宮廷会議、戦の準備の作戦指示。2日間で処理するにはかなり無理があるのはわかっていたが、彼女はやりきって、今は休息を取ることにした。

ミレイユの愛刀、魔剣ノクティス。
剣の名前であるノクティスとは〈夜〉という意味である。
聖騎士となるための最後の試練は、ノクティスを調伏する儀式であった。

聖騎士の最終試練は、ダンジョンに潜らなければならなかった。
ダンジョンは、大陸で絶滅したものを生成する。その力を利用して、召還した魔物を使役できるように調伏するというのが、最終試練だったのである。

「私の姉も聖騎士の試練に挑みました」

神聖教団の神殿で、ミレイユは神官から教えられた。聖騎士となる試練に挑んだ者たちのほとんどは、ダンジョンで死亡して吸収されてしまうと。
生還できたとしても、調伏に失敗していれば代償で、心が壊されてしまう。
去年に帰還した姉が治療中だと教えられてミレイユは、生還者に会いに行った。

「魔物の中でも強力な、心を支配する魔物は、憑依するために肉体を破壊せず、心を破壊しようとします。調伏に失敗すれば、心が蝕まれてしまうのです。それでも試練に挑むのですか?」

ミレイユは視力を失ったという生還者に試練に挑むのは止めるよう忠告されたが3日後には、最終試練に挑むと神官たちに告げた。

10日間経過して生存していれば、また儀式の大広間に強制的に戻されること。
ダンジョンの深い階層へ進むほど強い魔物が召還される。生還するために調伏する魔物が弱すぎると、聖騎士になっても力不足になること。
調伏できなかった場合は聖騎士の試練は失敗であり、一生ダンジョンの中へ足を踏み入れてはいけないこと。

「魔物は一度狙った獲物を、ずっと狙い続けます。だから、再びダンジョンに足を踏み入れると、その魔物と再び対峙する可能性がにあります」

一生に1度しか聖騎士の最終試練に挑戦できない理由も生還者はミレイユに説明してくれた。

ダンジョンへの転送の魔法陣は神殿で開くことができる。ミレイユが聖騎士の最終試練に挑んだ時は、神殿の地下の儀式の大広間だった。
6人の神官たちがミレイユを中心に囲んで呪文を詠唱する。床石に光で魔法陣が描かれ始め、まばゆい光にミレイユが包まれた。

まぶしさに目を閉じて、目を開いた時には、ミレイユはダンジョンの中にいた。

第7階層でレッド・ドラゴンと対峙し、激闘の末に、ミレイユは剣をドラゴンの目から剣の根元まで深く貫いた。
頭を振られ、ドラゴンの流血で手がすべり、ミレイユは壁に叩きつけられた。
ドラゴンが背を丸めて片目に剣が刺さったまま身構えている。
炎を吐くつもりなのがわかったが、ミレイユは激しく背を打ちつけられ息ができずに身動きできない。
ドラゴンが、口を大きく開いた。
ミレイユは死を覚悟した。

口を開いたまま炎を吐けずにドラゴンは絶命して、床に崩れた。
ドラゴンが消滅すると、魔石ではなく、一本の剣、全体的に赤い光沢を帯びている金属の剣が出現した。

(はぁ、はぁ、はぁ、まだ、私は、魔物を調伏できていないのか)

レッド・ドラゴンを討伐したが、自分の武器がドラゴンと一緒に消滅したので、しかたなくミレイユは出現した剣を拾い上げる。
自分の使っていた片手剣よりも、ずしりとした重さを感じ、両手で持って使うことにした。

魔物を調伏すると、魔物と契約を結ぶため、調伏できたか必ず実感できると、ミレイユは聞かされていた。

複雑な通路を抜け、第8階層への扉を見つけた時、もう3日目になっていた。
他の階層のように扉の形状ではなく、壁に古代の象形文字のようなものが刻まれているだけだった。

第8階層へ移動する。
壁に手を当て刻まれていた古代文字を詠唱して待つと、神殿で移動たのと同じように、ミレイユは光に包まれた。

「おや、来客とはめずらしいですわね」

ミレイユは周囲を見渡して、首をかしげた。どう見ても、貴族の邸宅の中にいたからである。

二階の階段でドレス姿の女性が立ち止まり、ミレイユに微笑みかけている。

(ここは、ダンジョンの第8階層なのか?)

ミレイユよりも背の低い若い女性が階段を降りて近づいてくる。
警戒したミレイユが剣を構えると、それ以上、女性はミレイユに近づかずに、ため息をついた。

「よほど、ここまで来るまでに苦労なされたようですね。私はノクティス。貴女のお名前は?」

ノクティスは、瞳は淡い緑色。金髪で陶器のような白い肌に、黒のゴシックのロングドレスを身に纏っている。

「驚かせてしまったようで、すまない。私はゼルキスの騎士、ミレイユ。なぜ、貴女の館に来てしまったのかはわからないが、迷惑をかけた。では、失礼」

「お待ちになって。怪我をしているようですわね。この館で良ければ、少し休んでいかれませんか?」
「しかし、私には時間が……」

手をのばし、ノクティスがミレイユの返り血のついた頬をそっと撫で、見つめてきた。

「いけません。体の汚れを落としたあとで、傷の具合を診ますから。こんなに傷ついた人を放っておけません」

きっぱりとした口調で言われ、ミレイユは困惑しながも、この親切な申し出を受けることにした。

ノクティスが手を叩くと、三人の若いメイドたちが来てミレイユを見て、怯えたような表情で立ち止まる。


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