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惑わし-ゲーム
【ファンタジー 官能小説】

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惑わしゲーム-10

またです、クダニの言葉の圧力を感じます。
≪惑わし? どうして≫ クダニを見ます。
その視線に気が付いたのか、クダニは小さく舌を鳴らしました。
「それなら勝手にしな。ただし全部撮影の終わった後で、よそでやってくれ。ここは趣味の場所じゃない」カメラマンは何事もなかったかのように言います。
惑わしだったとしても、人によってはかからないこともあります。
「それに、体くらい拭かせてやれよ」
「わかりましたよ」すごすごと後ろへ下がって行きました。
≪クダニもウイッチのひとりなの?≫ 見ただけではわかりません。
「あたし帰る」服を着ました。
「そんなばかな。俺はどうなるんだよ」クダニが腕を持ちます。
「知ったことじゃない」
「音楽が続けたいんだろ」
「あんたが嫌なの。トドウというやつも偉そうだし」
「偉いんだぞ。この業界でやっていきたいなら言うことを聞け」言葉の圧力が増します。
「どの業界? こんなの、音楽じゃない」
「音楽だけで、簡単にやっていけると思ってるのか。売れたいんだろ。トドウさんなら確実に売ってくださるんだぞ」すごい圧力がかかります。
≪そう、売れたい≫ 叫びそうになります。≪体を売ってでもメジャーになって何が悪いの そんな元ポルノ女優なんて他にもいるじゃない≫
「こんなのただのワンステップだ」抱き寄せて、あたしに目をのぞき込みます。
「でも、誰でもは嫌」
「そんな選り好みをしていてプロになれると思っているのか。」服の中に手を入れて、乳房をつかみました。
「本当になれるの」その手にぞっとしながらも、動けません。ステージの時と同じでした、やめさせたら将来が消えます。
「ああ、なれる。おまえの方からやる気を出せばな」言葉がのしかかってきます。
「こっちはプロなんだ。全部わかってるんだ。いろんな演出を手掛けてきてるんだ。おまえは考えなくていい。さあ、服をぬげば許してやろう」
これ見よがしの咳払いが聞こえます。「ここではごめんだといったはずだが、何をさせようとしてる」
カメラマンの言葉に、黒猫のことが浮かんできます。『あなたがされるというのは体を支配されるという事です。 あなたにさせるというのは心が支配されるということです』 ほんと、嫌なやつです。
このカメラマンは、黒猫さんみたいです。
≪こいつに全部を操られてる。身も心も≫
「これからはおまえにとことんさせてやるからな」クダニが顔の前でうなりました。
「じゃあさせてよ。音楽をさせてよ。させてくれようともしないじゃない、あたしはただの、糸の付いた人形じゃないよ」
クダニの手を振り払って、スタジオを飛び出します。
さすがにクダニもエレベーターホールでは抱きつこうとしませんでした。
じっと下りのエレベーターを待っている間、無視します。
≪こいつにあるのは欲望? 本当にあたしの夢をかなえようとしてるとは思えない。男優の方がやさしかった。愛情もなく、ただ、あたしを抱くだけなのに。気遣ってくれた≫ 腹が立って、逆に頭がさえてきました。
『昨日みたいな演出で売る』さっきの言葉が引っ掛かりました。
≪あれって、シンの暴走ってわけでもないのかも、他のメンバーも止めなかった。
アリルなんか、笑って見てた。
シンがあたしの落としたピックを拾ってくれただけでヒステリーを起こすような女なのに。
それにシンと別れたなんて絶対に嘘。あの女が別れても同じバンドにいるなんてありえない≫
現実が見えてきました。
≪みんな、知ってたんだ≫
だから、あれだけの騒動に、だれも文句を言いません。
当たり前のように対応がされて、警備員も配置されていました。
あたしが逃げ出した時には、混乱は治まっていたのだと思います。
≪あたしって、はめられた?≫ 
都合よく崩壊したバンドが復活して、都合よくコンサートがあって、都合よく混乱が起こって、都合よくプロデューサーがいて、都合よくスカウトされた。
≪都合がいいにもほどがある。やっぱりあたしが狙われたんだ。トドウというやつに惑わされてたんだ≫
『さすがですね』と言った、イタチ男の顔が思い出されます。


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