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夜宴
【SM 官能小説】

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夜宴-8

それにしてもあのとき夫を検死した若い医者は、夫の死因をわたくしに隠していたのでございます。なぜならあの医者もまたあの女と関係をもっていたことにうしろめたさを感じていたからだわ。わたくしは夫が亡くなってから、あてつけのようにその若い医者が勤めている病院に行ったわ。ええ、彼はとてもハンサムな男だったような気がするの。というのは今のわたくしの記憶の中に、彼の顔がどうしても思い出せないのでございます。いい男なのに顔が思い出せないって、自分でも苛立ってしまうくらいもどかしいわ。それで診察室で彼がわたくしの胸を肌けさせたとき、わたくしは下着をわざと着けてなかったわ。なぜなら剥き出しになった胸肌に彼が聴診器をあてるときの彼の指使いや呼吸が微かに乱れてくるのをわたくしは楽しみにしていたの。わたくしは彼の耳元にそっと囁いてあげたわ。あなたは夜宴で、あの女ではなくわたくしと関係をもったことがあるはずだわ。だからわたくしの裸を見るのは初めてではないはずよねって。そのときの彼の表情が急に強ばったことを覚えているわ。

夜宴では毎回、当番といわれる男がいたわ。男はあてがわれた相手の女を裸にして、縛りあげ、鞭で打ち叩き、苦痛を与え、恥辱を尽くす……それが当番の男の役割だった。そう言えば先生の奥様がつき合っている若い男もそういう当番だったのよ。でも当番の男は、自分が当番であることも、その夜の相手の女がどういう女であるかあらかじめ知らされていないの。その夜になって初めて知ることになるのよ。それで、あのときの当番がその若い医者でしたわ。そして相手の女は、あの女ではなくてわたくしだったの。正直に言うとわたくしは、その若い医者に苛められることが嫌ではなかったわ。なぜなら彼はあの女ではなく、ほんとうはわたくしを欲していたのですから。どれほどあの女と関係をもっていたか知りませんが、あの女以上にわたくしを欲望していたことは間違いないことですわ。わたくしはそういうことがわかる女ですから。そういうことってどういうことかって。女を支配し、服従させ、痛めつけることで男はほんとうの女の愛し方がわかるってことですわ。そうでしょう、男の欲望ってそういうものだと思っていますわ。そしてそんな彼の欲望を充たせる女がわたくしだったのよ。でも残念なことに彼はそこの病院を辞めて、別の病院に赴任したらしく、その後、彼とは会うこともございませんでした。

それで最近、わたくしが思っていることは、その医者って、もしかしたら先生じゃなかったかってこと。ううん、わたくしは彼がとてもハンサムで素敵な顔をしていたことを今でも感じてはおりますが、彼がほんとうに目の前の先生だったのかはよく覚えていないの。先生は違うっておっしゃるけど、ほんとうはそのことをわたくしに隠されているのではございませんか。そうよ、きっとそうですわね。
いいのよ、わたくしの体にあのときのように、今、ここでおさわりいただいても。わたくしは自分では七十八歳の体だなんて毛頭、思っていませんからいつでも先生を受け入れることができますわ。お好きなようにさわって。ええ、先生の指でわたくしの衣服を脱がせていただいたら、先生のそのズボンの中のものをわたしの体で優しく癒してあげるわ。ああ、わたくしはもう感じているわ。先生がほんとうはあの女ではなく、わたくしを愛していることを。今のわたくしは、あのときのように夜宴の女になりますわ。先生はわたくしが言っている夜宴がすべて妄想だっておっしゃるのかしら。でも、先生はすでにご想像されているわ、夜宴にいるわたくしの恥ずかしい姿を。

先生に初めて抱かれた夜、わたくしは失神するくらい高みに達したわ。先生のものって、とてもよかった。先生ったら、今さら何をおっしゃるの。わたくしを抱いたことがないなんて事実を否定されるの。そんなに恥ずかしがらなくていいじゃありませんか。わたくしは、先生がわたくしの処女を奪ったことを恨んでなんかいませんから。ええ、わたくしは、先生に奪われるまで処女でしたわ。わたくしほど身持ちの固い、つつましやかな女はいないんじゃないないかしら。先生は、わたくしを抱いたときにおっしゃられたじゃありませんか。あなたの体は汚れのない生娘のような瑞々しい純潔を持っているって。わたくし、とても恥ずかしかったけど、きっと先生もわたくしを抱きながら処女だと信じていたはずですわ。でもわたくしに挿入された先生のものもとっても情熱的で素敵だった。わたくしは初めてのものを先生に奪われたことがとても嬉しかったわ。ほら、先生はもうあのときの顔に戻っているわ。ようやく思い出されたみたいですね。そうよ。やっぱり男って、初めてのものを奪った女の体を忘れることはできないものなのですね。
 


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