復・讐・部・室-2
「だから、代表してあたしたちが、お仕置きしてあげる」
そう言うなり、瑞華はみさきの背後に回ると、羽交い絞めにした。女子同士とはいっても、運動部に所属したこともない非力なみさきが、バリバリの体育会系の瑞華の力に抗えるはずもなかった。みさきが身をもがいても、とても振りほどけるものではない。
そして瑞華が後ろからみさきの制服のリボンを解き、ブラウスのボタンを外し始めた。
「あの、何するんですか？」
みさきは狼狽した。だがそんな暇もなく、瑞華に呼応するように朝菜がみさきのスカートのボタンを外し、一気に脱がせてしまった。この息の合ったコンビネーションは、最初からこうするつもりで彼女を連れ込んだという証拠だろう。
「いや！」
新東中学の制服である紺とグレーのチェックのプリーツスカートがずり落ち、飾り気一つない純白のパンティが露わになると、みさきは悲鳴を上げた。ここにいるのは同性の瑞華たちだけだが、こんなふうに下着を晒されるのは恥ずかしいことに変わりはない。体育の授業の時、同性の前で着替えるのすら恥ずかしいぐらいなのだ。
「あー、やっぱり白だぁー！」
公江が煽るようにはやし立てると、みさきの頬が真っ赤に染まる。
その間に瑞華によって、ブラウスのボタンも全部外されていた。前がはだけられると、ブラウスの裾でいくらか隠れていたパンティも、同じく純白のブラジャーも露出した。
ついでにとばかり、公江によってソックスも取られる。
瑞華はブラウスを脱がせると、そのまま背後から、みさきを突き放した。
とうとう完全に下着姿にされてしまった。こんな格好を人前に晒すのは、ピュアなみさきには同性相手であっても恥ずかしさで全身が炎上しそうなことだった。
恐怖と羞恥に、みさきは部屋の隅でうずくまるようにした。だが瑞華はそれを許さない。朝菜と公江を促して彼女を無理やり立ち上がらせ、自身の前に引き据えた。
思わず胸と下腹部を隠そうとするみさきの手を、2人が両側から制する。瑞華は正面から、ブラジャーとパンティだけに守られたみさきのからだを観察した。
「なに、このガキっぽいカラダ」
瑞華は嘲るように言った。
華奢な体型は服を着ていてもわかるが、下着姿にしてみると、なおさら歴然だった。
一応女と言えるほどの膨らみはあるものの、いたって控えめな乳房。
ウェストの曲線はわりとはっきりしているが、ボリューム感が全然ない、腹部や腰やお尻。
瑞華たちはみさきの誕生日など知らないが、彼女は3月末の生まれであり、学年内ではほぼ最年少といっていい。周囲に比べて成長が遅くなるのは、この歳ならまだ当然かもしれない。ただそれを差し引いたとしても、中学3年生の少女としてずいぶん奥手の部類に属するのは間違いない。
瑞華たちはみな、見るからに健康的で豊かな発育を示しているから、その差は歴然だった。
みさきも背丈は小柄というわけではなく、平均ぐらいはある。瑞華たちともさほど変わらない。
顔立ちはこの連中にとっては悔しいが見るからに可愛らしいものの、同時に優等生らしく知性的な落ち着きも感じられ、少なくともあからさまに年下に見られるような童顔ではない。
だがそうしたことが、かえって彼女のからだつきの幼さを際立たせているようにも見えた。
瑞華はみさきの全身を見渡すと、吐き捨てるように言った。
「可愛い顔してるけど、こんな女とも言えないようなカラダで、よくも西永くんを誘惑できたもんだわ」
みさきは自身でも身体的な発達が遅い方だとは思っていたが、今まで引け目を感じたことは特にない。しかしこんなふうに他人からとやかく言われるのは、思春期の少女の心にはこたえるものだ。
もちろん、こういった嘲りはみさきへの妬みと羨望の裏返しでしかない。
楚々として可憐な顔立ちは言うまでもない。
大事な部分以外余さず露わになった、透き通るように真っ白で瑞々しい肌は、大方の女子が間違いなく羨むものだろう。
豊満でセクシーな大人の女性の肉体に憧れる一方で、痩せたい。そんな思春期ただなかの女子にありがちなディレンマは、瑞華たちも例外ではない。みさきのほっそりしたからだつきは、その憧れのもう一端といえるものだった。大人の色気には程遠いが、逆に少女としての可憐さを極めているとも言える。
こんな関わり方をしていなければ、同性でもその可愛らしさを愛でたくなる。守ってあげたいという気持ちも起こさせるような娘と言っていい。
だからこそ、なおさら瑞華らには憎々しく思え、徹底的な否定の言葉を浴びせたくなるというものだろう。