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【学園物 恋愛小説】

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想[10]-2

どうやら駅前に向かっているようだ。俯いたままなので視界は狭いが、何となく見たことのある石畳。それが不意に途切れ、湿った土に変わった。そこをもっと進むと、乾いた黄土色の地面になり、さっきまで聞こえていた、雨が傘を叩くパタパタという音が止まった。
駅前の…どこ?
私が眉をしかめた時だった。
「you lover...」
頭上で名屋君の声がした。頭の中で繰り返される名屋君の声。
lover…ラヴァー…ラバー……恋人!?
「…こっ!?」
驚いて名屋君を見上げる。が
「って行ったことある?」
と名屋君は私を見下ろしていた。
「へ…えっ!?」
ここで私は初めて周りを見渡した。
すぐ脇に大きな木の幹があり、それにそって目線を上げていくと黄色や黄緑に染まった葉が雨を防いでいた。
ここは広場…。振り返って道路の向こう側に目をやると、雨に濡れた『U-LOVER』の看板が目に入った。ここ、私が雨宿りしていた広葉樹。いつか、未宇と来たカフェ…。
「あ、あるよ」
ぎこちなく答える。
「どうだった?」
「うーんと、雰囲気良くて、デザートがいっぱいあって、値段も安くて素敵な店だった!」
「へぇ、『U-LOVER』ね…」
名屋君は「ゆーらばぁ、ゆーらばぁ」とブツブツ呟いている。不思議に思って見ていると、すっと私の目の前に名屋君の人差し指が現われた。
何だ何だ…?
「you're lover」
流れるように綺麗な発音。暫らく何が起こっているのか分からず、ポカンとしてしまった。
「え…っと」
名屋君の目尻が下がった。「主里、好きだ。俺の恋人になって下さい」




『あなたと話したらスッキリした』
優衣ちゃんの瞳は光り輝いていた。
『幸せになれよな』
暁寿が笑いながらそう、私に言った。
『ゆっくりでいんじゃなーい?』
未宇は自分のペースで、と伝えたかったに違いない。


みんなの想いが、それぞれいろんな形の想いが…。私はそれに、ずっと支えられて甘えてて…もう少しで自分の我儘で踏み躙るところだった。
愛情、友情…全ての想いを…。


『ねぇ何かあんの』


あの日、私たちは同じ空を見ていた。同じ空を見て、それぞれ違うこと思っていて、そしたらそれは同じ空だけど全く違うもので。
でも、今お互いの想いは同じ。

『好き』

同じ想。


考えるより先に、体は正直に反応するから。だから私は、ゆっくり頷いていた。


「私も名屋君と同じこと想ってた…」


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