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【学園物 恋愛小説】

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想[10]-1

「告られたの!?」
私は結局、未宇の家に泊まることになった。今は制服をハンガーに掛け、未宇に借りたジャージを着て、さっきと変わらない場所に座っている。
「うん…たぶん」
ぎこちなく頷く。
「好きって言われたような気がする。だから、私もハッキリしなきゃって思った訳だし…」
「じゃあ、まじで告られたんだねぇー。相思相愛じゃん」
―相思相愛。
口元が自然に上がる。
「何ニヤ付いてんの。早く別れてることに気付いてれば、今頃アタシは鋼吾君とラブラブなってたかもしんないのにぃー」
私は笑った。すごく嬉しい、本当に嬉しい。だけど、その幸せをまだ素直に受け取れない私がいることも事実…。暁寿を傷付けたばかりだし、私だけ何だか勿体ない気がする。
「ゆっくりでいんじゃなーい?」
未宇はテレビを見ながら言った。
「鋼吾君だって、言うつもりじゃなかったと思うよ。焦ってんじゃない?主里の事情も考えないで先走りすぎたって…。落ち着いたら、主里から連絡すりゃいいじゃん。結果的に、主里は鋼吾君のおかげで前進出来たようなもんだし」
テーブルに広げられたポテトチップスに手を伸ばし、テレビに向かって「最高ーっ」とか言って笑っている未宇の横顔に、私は何度感謝しただろうか。一人で悩んでいた時よりも、ずっと楽で心強い。未宇が友達で本当に良かった。
未宇、あんたは私の誇りです。私も、あんたをいつでも想ってるからね。


それから丁度一週間後の今日は、朝から雨。
「まじありえない…」
私は曇り空を睨む。
別に雨を降らせたあなたが悪い訳じゃない。ったく、誰よ!私の傘を盗った奴はぁっ!!朝も雨は降ってたんだから持って来いよ、傘くらい!
私は、はぁ〜と深い溜め息を付いた。
傘が盗まれることはよくあるので、誰も値段の高い傘を持ってくる人はいない。私の傘も百円だし、まだマシか…。でも、やっぱりムカつく!!
せめて、もう少し小降りになってくれないかな。
そう思って、また曇り空を見上げる。

「また傘無いの」

その声が聞こえると同時に、視界が白に染まった。二度と咲かないと思ってたのに。
「名屋君…」
久しぶりに聞く名屋君の声は、少し呆れたような…私をバカにしているような…そんな声だった。それなのに私の心臓はトクントクンと鼓動がどんどん早くなっていく。
「盗られた…」
名屋君は、ますます呆れたような声になって
「…ダッサァ」
「仕方無いでしょっ!!」
あのトキメキを返せ!と、言いたくなるのをぐっと堪える。
名屋君は私の前をすっと通り過ぎると、数段しかない階段の途中で止まった。
「おいで、主里」
白い傘の下にもう一人入れるスペースを空け、名屋君の振り返った顔は、すごく柔らかな笑顔で、とても毒舌家とは思えなかった。
「う、ん…」
考えるよりも先に、体は正直に反応する。
私は頷くと、名屋君の空けてくれたスペースに納まった。
「ちょっと行きたい場所あるんだけど」
「うん…」
私はそれだけ言うと俯いて、名屋君に付いていった。恥ずかしくて顔を見ることが出来ないので、私は名屋君のスニーカーに付いて歩く。
私のローファーの半歩前を、カーキー色のスニーカーは大股でゆっくり進んでいく。それに置いていかれないよう、ローファーはいつもより心成しか早くなっている。


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