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ひとすじのワナ
【痴漢/痴女 官能小説】

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触れられる女、になれた私-1

 マンションのおうちへ帰るのに、わざとエレベーターを使わずに非常階段を使う私、るえす。

 大きく壁にくりぬかれた、吹きっさらしの窓から入りこむ、外光や風に季節を感じて階段を昇るのは楽しい。

 夏ごろから、この階段にクモの巣が多くなった。
 
 と言っても、今どきのクモは手を抜いている。たいてい階段の踏み段の角に、ひとすじの糸を斜めにかけてるだけだ。

 それでも、大きなゴキブリがひっかかってもがいてる姿をよく見かける。
 ずいぶん効率のいいワナのようだ。

 これが捕らわれていない、階段や踊場の隅にいるゴキブリだったら、私はすかさず素手でつかまえて外に放り出しているだろう。
 私だってゴキブリは苦手だ。毎年シーズンになると、自分ん家に現れないように薬を置いたりまいたりする。

 それは自分よりもむしろ、可愛い弟うらすのためなんだ。
 つりあいの崩れた顔をしてる私を
 「お姉ちゃん、お姉ちゃんが一番大好き!」
 「僕はお姉ちゃんの家来だぞ!」とそばに寄りそってくれるうらす。
 そんなうらすが唯一苦手なのがゴキブリなんだ。

 私がs5の時、マンションの共用スペースを二人で歩いてて、突然ゴキブリが姿見せた。
 「お、お姉ちゃん……。ご、ゴキブリ怖い……」と、小さなうらすが固まってしまったのを見て、私はあとのことを考えず、ゴキブリを素手でつかまえて外めがけて投げた。

 「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫だから」と私はポケットに入ってた除菌ティッシュで手をふくと、うらすは
 「ごめん、お姉ちゃん。僕、ダメだ……」なんて言って泣いて寄りかかってきた。

 本音はゴキブリなんか素手でつかみたくない。
 でも、こわがってるうらすの前からそれを取り除くくらい、私にはなんでもなかったんだ。

 だけどそれからしばらく後、学校の廊下に現れたゴキブリを、ワレを忘れて同級生の女の子たちの前で素手でつかんで外に放り投げて、彼女たちにドン引きされたことはある。

 
 

  


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