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白百合散る
【熟女/人妻 官能小説】

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澄子-2

「シュウちゃん、来たわよ。すぐにわかったわ」
「いらっしゃい」
澄子は約束どおり山本の店にひとりで訪れた。ひとりで店を切り盛りする山本の手が空いた時をつかまえては話しかけ、若かった頃の自分に戻ったかのように笑い楽しい時間を過ごした。
「まだ帰らなくていいのかい?」
気づけば澄子以外のお客はいなくなっていた。
「あらもう閉める時間かしら?」
「いや、まだいいんだけど、旦那に怒られるんじゃないのか?」
「信用があるから大丈夫、ふふっ。でも今日はこれくらいにしておこうかな。また来てもいい?」
「うん」
「もうっ、私はお客なのよっ。またご贔屓にって言えないの?まったく〜。よくそれでやっていけるわね。でもまた来るわっ、じゃあね」
その後も時折澄子は店を訪れ一方的に話しかけるうちに山本も打ち解けていった。
「ねぇシュウちゃん、奥さんはいないって言っていたけど好きな人もいないの?」
「いないよ」
「前に百貨店で会ったとき、じっと女の人を見ていたじゃない。気づいていたんだから〜」
「あれは違うよ。見ていたというより見張っていたんだ」
「え〜?探偵業でもやっているの?ふふっ」
「まあそんなところさ。ところで再来月でこの店閉めるから」
「え〜?どうして?そこそこ流行ってるじゃないこのお店」
「他にすることができたんだ」
「せっかく気楽に過ごせる場所ができたのに〜。これでも良家の妻は気苦労が多いんだから〜」
「うん」
「ねぇ何?他のすることって。探偵さん?ふふっ」
「そのお前さんの言う良家の執事になるんだよ」
「え〜?どうして?どうしてシュウちゃんが執事になるのよ?」
口がすべったと感じた山本はもう黙りこくってしまった。こうなってしまっては澄子でも口を開けることはできない。
「こうなったら通いつめるわっ。私はシュウちゃんに恩返しするんだからっ」
夫にもわけを話し幾度か通った末、少しずつではあるが澄子には事情が分かってきた。風の噂で聞いていた山本一家の破産、妹の悲劇、そしてその復讐のため身をやつし張本人の家の執事の空きを狙っていたことも。
「シュウちゃん、私にできることがあったら言ってね。協力したいわ」
「うん」
「お金なら用立てることはできるわ」
「いや、いい。まだどんな方法かも考えていないんだ。まずは虎穴に入らずんばってところさ」
「そう・・・、長い作戦になりそうね。冷泉財閥といえばいい噂は聞かないけど今日明日にどうこうできる相手じゃないしねぇ」
「うん」
「百貨店で見張っていたのはそういう事情だったんだね。でもキレイな奥様だったわね」
「・・・」
「あれっ?まさか一目惚れしちゃったとか?あははっ」
山本は少し顔を赤らめ横を向く。
「え〜?ホントに?図星?」
「うん。・・・。だけど彼女も加担していたのならきっちり罪を償ってもらう」
「あら〜、シュウちゃんがね〜、一目惚れ?へぇ〜」
「もういいから帰れよ」
「ごめん、ごめん。じゃあそっちはそっちで作戦を練らなくちゃね」
「・・・」
「ねぇ、シュウちゃん。私にも悩みがあるんだけど聞いてくれない?」


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