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白百合散る
【熟女/人妻 官能小説】

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澄子-1

「シュウちゃん、ねぇシュウちゃんでしょ?」
丸越百貨店の化粧品売り場を険しい表情で観察していた山本はしばらくぶりに呼ばれた自分の名に反応できずにいた。
「シュウちゃんてばっ」
真横まで近づいてきた婦人を見て当時の記憶が甦る。
「澄子?」
「そうよっ、久しぶりね。二十年はたつかしらねぇ」
「うん」
「元気だった?」
「うん」
「もうっ、全然元気なさそうじゃない。何しているの?待ち合わせ?」
「いや」
「じゃあ何しているのよっ、こんな女ばっかりの所で。変質者に間違われるわよっ、ふふっ」
「うん」
「もーっ、相変わらずの朴念仁ねぇ。難しい顔しちゃって」
「うん」
「もういいわっ、シュウちゃん時間あるの?そこの喫茶店でも入らない?」
「いや、もう帰らないと。仕込みがあるから」
「仕込みって、今何しているの?シュウちゃん」
「錦糸町でちっぽけな居酒屋を」
「あらそうなの?錦糸町のどこ?何ていうお店?」
「南口出てすぐさ。やまもとって屋号でやっている」
「今度いっていい?シュウちゃんにはちゃんとお礼もしてなかったし」
「礼をされる覚えはないけど」
「私の身体が弱いのとお金持ちの家だからって虐められていたのをいつも助けてくれたじゃない」
「そんなことか」
「そんなことって私すごく助かったし、嬉しかったのよ。そのときは素直にありがとうって言えなかったけど」
「いいよ、別に」
「ううん、ずっとお礼をしなくちゃと思っていたの。近々お店に伺うわ、いいでしょう?」
「うん」
「じゃあ、今日は帰るわね」
澄子は安田一族の跡取りの妻である。親同士が決めた結婚であったが、夫の一郎は誠実な人柄で人望も厚く安田財閥の総帥としての将来を嘱望されていた。すでにいくつか任された事業も順調に業績を伸ばし順風満帆であった。澄子との仲も良く、浮気することなど微塵も思っていないようだ。ただ、唯一の問題は二人の間に子をなせなかったことだ。澄子は病弱で夫婦の営みも人並みとはいかなかった。医者の勧めに従い治療も行ってみたが宿すことはできなかった。
「ねえあなた、私のことはいいから外でしてきてもいいのよ」
「何を言っているんだ。僕は澄子がいいんだ。子供のことはしょうがないじゃないか。お袋に何か言われたの?」
「ううん、お母さまはとても優しくしてくださるわ。でも私が申し訳なくて」
「大丈夫だよ。澄子さえいてくれたらいいんだから」
「それは嬉しいけど、私は弱いから夜のこともあまりしてあげられないし、跡取りだってあなたも欲しいでしょう?」
「いいんだよ、もうその話は終わりだ」
結婚して十年ほどたった頃から澄子は度々お願いするのだが、一郎にその気が全くないまま時が過ぎてしまっていた。澄子は愛するがゆえに夫には満足させるとともに子供を産んでくれる女性がいないものかと思案しているのだった。一世代前の経営者では当たり前のことであったし、夫と同世代にしても女を囲っていることなど珍しいことでもなかった。
「堅すぎるのよねぇ、うちの旦那様は。誰かいないかしら・・・」


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