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おとなの昔話〜権兵衛さんと狸〜
【ファンタジー 官能小説】

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権兵衛さんと狸-4


 あくる朝のことでございます。
「お、すっかり寝過ごしちまっただ……」
 いつもは暗いうちから起き出して畑へ出る権兵衛さんですが、目が覚めた時はすっかり明るくなっています。
「お早うございます、もうすぐご飯が炊けますよ」
 土間を見ればかまどの前に娘がしゃがみこんで火吹き竹で風を送っております、ご飯の炊ける香ばしい匂い、みそ汁の良い香り……そして後ろ向きにしゃがみこんだ娘の浴衣に包まれた小さな丸い尻……。
 長い事ひとりで暮らしていた権兵衛さん、娘と一緒に迎える朝に心があったかくなるのを感じて幸せな気持ちに……
「夕んべは、あったら何度も何度もすまなかっただな、その上朝飯まで……」
「もしよろしければ、ずっと朝ご飯を作らせて下さいまし」
「……それは、ここにずっといてくれるってことけぇ?」
「はい、出来ることならばずっと権兵衛さんと一緒に生きて行きとうございます……」
「本当けぇ? 願ってもねぇこった……あ、そう言えば……お前ぇ、名前は?」
「狸ですから名前など……」
「……そうだな……『たき』って呼んで良いだか?」
「たき……はい! 素敵な名前です」
「おたき……こっちへ来てくんろ……」
「はい……」
 胡坐をかいている権兵衛さんのまたぐらに、娘が尻をすっぽり落として首に腕を廻して来ますと、権兵衛さん堪らずに唇を重ねて行きます……。
 外はしとしと雨降り……今日は畑に出られません……ならば……。
「おたき……」
「ああ……権兵衛さん……」
 二人はそのまま布団に倒れ込んで……。

 その時、権兵衛さんの小屋の軒下には二匹の狸……。
「良い人と巡り合ったんだな……」
「そうだね、おまいさん」
「あの子は身体も小さくて弱い……この先ずっと山で暮らして行けるのだろうかと心配していたが……」
「心優しい権兵衛さんとずっと一緒にいられるなら、あの子もそれが幸せ……」
「ああ、そうだな……安心した、そろそろ行こうか」
「はい、おまいさん……」
 二匹の狸はおたきの喘ぎ声を背に軒下から駆け出しますが、ふと振り向いて呟きました。
「権兵衛さん……」
「末永くおたきをよろしくお願いいたします……」
 そして藪の中へと消えて行きました……。

 元より人と狸ですから子は成せませんでしたが、権兵衛さんとおたきはめったに人も通って来ない山里で、いつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。


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