静かな校舎の片隅で-3
数日後、午前の授業中。
石生と一人の女性が、体育の授業の声だけが校庭から響く、校舎の中を歩いていた。
二人は内談室に入った。
内談室に入ると石生はベッドに腰をかけ、女性はゴロリとベッドにねころび、石生のひざに頭を乗せた。
「お前(=石生)ねぇ……」女性は言った。「せい太にあんな、変な事教えやがって……」
女性はせい太の母親、中生きく音(きくね)だった。
「おやおや」石生はひざに枕するきく音にかまわずタバコに火をつけた。「キミ(=きく音)みたいな、自分の息子の部屋の照明にカメラつけて、こっそり性器いじりを監視してるオンナに言われたくないわね。」
「うるさいよ、もう……。だいたい、お前どこで見てたのよ。あのいじり方、私が弟にやってたやり方じゃないの。」
「あのやり方は素晴らしいわよ。キミの一族に継承すべきワザだわ。」
「冗談じゃないわよ…… いまだに弟のヤツ、嫁と子どもをウチに連れて遊びに来たら『姉ちゃん、あれやって!』って隠れていじらせるのよ。『姉ちゃんがやってくれるのが一番気持ちいい!』って。私、不倫相手みたいじゃない……」
「まあ、なんて仲のよいことなんでしょう!」
きく音は、手を伸ばして白衣の上から石生の胸に触れた。
「私はお前にね、せい太が何を考えながら性器をいじっているか聞いてほしかったのよ。……見たとおり、せい太は目をつぶってひたすら性器をグリグリしてるでしょ。手がかりがないから、私心配で……。」
「キミが心配することないと思うけど。」
「お前ねぇ、心配するわよ…… せい太がもしセックスへの欲望がつのりにつのって、小さい女の子に悪さしたりしたらどうするの。」
「そんな心配するなら、キミがオンナのナマのカラダを教えてあげなさいよ。そして『本家』のワザでいじってあげなさいよ。」
「いや、それは絶対にいや!」きく音は首を振った。「そんなことして、せい太が私っていう女に嫌悪感いだいたらどうするの……」
「それはない、絶対にない!」石生が強く言った。
驚いて(えっ?)のカタチに開いたきく音の唇に、石生は自分がくわえていたタバコを軽く差しこんで言った。
「せい太くん、私が性器をいじってる間ずっと『ママっ……、 ママっ…… ママっ……』って、唇が動いていたのよ。」
【おしまい】