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「旅立ち」
【女性向け 官能小説】

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「旅立ち」-2

彼は男の顔をしていた。

いつもの彼はわたしに絶対触れようとしない。

知り合って10年以上たつのに

わたしの顔は見ない人なのに。



彼の中の男の部分を目覚めさせてしまったみたい。

彼はわたしの頬を両手ではさみ

問い掛ける目をしている。

こんなに正面から見つめ合うのは初めてじゃないかしら。

問い掛ける眼差しにも何も言えない。

そう,ぎゅっと抱かれたいの。

最後の時間を静かに過ごしたい。

でも,彼にとっては違うみたい。これまで見たことのない男の顔。

どうしよう。。

沈黙に頬がこわばる。



わたし、できないかもしれない。

目覚めさせてしまったのは,わたしだけれど。

・・だけど,だめなの。

そういうことは嫌いなの。



猫は背を丸めて無関心で眠っている。

わたしは,途方にくれている。

彼が手を伸ばしてきた。

思ったとおり,動物的。

オスライオンがめったに狩をしないよう

これまでわたしに触れたことがなかった彼の初めての狩。

1秒たりとも待てないとばかりに

コートのボタンをあわただしくはずす。

ブラウスのボタンがはじけとぶ。

あらわになったブラジャーを押し上げ

乳房をつかむ。

胸に顔を押し当てられたとき,わたしは重みで倒れた。

もう,この身体がわたしであることさえ忘れたように

獲物にとびつくライオンのように

むしゃぶりつき,激しく吸う。

硬いひげが胸に腹に傷がつくほどに押し付けられる。

でも,痛みを感じないほどわたしは昂ぶっていた。

身体を離した彼は長いフレアースカートをまくりあげ

脚を両手で強くなでる。

何かを確かめているように太ももから足首まで何度もなでる。

恥ずかしさで耳まで熱くなる。



下着をはがされ,指で開かれ・・見られていることを感じる。

あまりの急な展開に気持ちがついていけない。

手をつないだのは今日が2度目。

そんな10年来の友だち。



呼吸が激しく脈が激しく

いけない・・発作が出るかも。

時々起こす過呼吸の発作。

激しい大きな呼吸がとまらない。

全身がしびれてくる。

やめてくれないと,苦しくなる。どうしよう。。

「・・・やめて・・・」

小さな声でやっと伝えた。



彼が身体を離した。

「脱いで」

声が響く。

「脱いでごらん」

発作の痺れの中でさえ

彼の言葉に従うわたし。

立ち上がり背中をむけて

コートを脱いだ。

スカートのファスナーを下ろすと

スカートは受け止める手もなく床にふわっと落ちた。

ブラウスから右腕を抜き左腕を抜き

中途半端にあがったブラを元に戻し

背中のホックをはずした。

しびれた指でうまくできなくて

時間が過ぎていく。できない。

何をあせっているんだろうわたし。

不器用な生き方しかできないわたし。

本当に努力して一生懸命脱いだ。

いつしか過呼吸の発作はおさまっていた。



そう,濡れた白い下着だけは・・自分で脱げない。

どうしてもそれは無理。


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