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【学園物 恋愛小説】

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想[7]-1

アドレスと携帯番号を交換すると、名屋君は私に手を振りながら帰っていった。普段はあんなに無愛想なくせして、とっても可愛い顔で笑うもんだから、名屋君が帰った後も思い出すだけで私の顔は綻んだ。
誰もいなくなった玄関で、私は自分のケータイを見つめ、両手でギュッと握り締める。その時、マナーモードにしていたケータイがブルブル震え暫くして止まった。背面ウィンドウに新着メールの文字が出る。
…誰だろう?
少しの期待を込めて、私は受信BOXを開く。
「暁寿…」
暁寿からのとても短いメールはこうだった。

『迎えに行ってもいいですか?』

私はつい吹き出してしまった。おかしかった訳じゃない。安心したからだ。
実は、あのまま連絡も無しに今日を迎えたものだから、暁寿は来てくれるのか、とても不安だった。しかし、名屋君への気持ちもしっかり整理を付けることが出来た今、暁寿のメールを見て胸のつっかえが取れたような、そんな感覚を覚えたのだ。
私はカチカチとボタンを押し、文字を打っていく。

『お願いします。それと、ごめんなさい』

送信。
私はケータイを閉じた。
暁寿にメールはとどいたかなぁ。
そう思いながら、校門に目をやると既に暁寿がそこにいた。
私は驚いてすぐに駆け寄った。
「暁寿…!?だって、今メール来て…」
「ずっといたんだ、本当は…」
暁寿は罰が悪そうに目を伏せた。
「主里に会うの恐くて…あんな無理矢理、その、キスしようとしたし…本当ごめんっ!!」
頭を下げる暁寿を、私は少しの間見つめていたが、ポンポンと暁寿の背中を叩いた。暁寿は何も悪くないのに…。
「もういいよ。顔上げて?私が悪かったの…これからは、暁寿のことしか想わないよ。ね、だから…」
「物真似しまーす」
急に顔を上げるなり、暁寿は真面目な顔でそう言った。
「は?」


それは、触れるか触れないかのとても不器用なキス。しかも、たった一瞬。唇が触れたのかどうかも定かじゃない。
「は?」
私はまた、呆気に取られてしまった。
「出火原因はお前だからな!」
「…何それ」
「恋する消防士の物真似する芸人の物真似!」
暁寿はニィッと笑った。
「ア…ハハ、アハハ!暁寿、バカじゃないの!?」
「…よっし!主里笑ってくれた!!」
「…暁寿のバカ」
私はそう言いつつも、暁寿の後ろにまたがる。そして、暁寿の肩に手を掛けて
「オッケイだよ!!」
と言った。
「はいよ」
暁寿はゆっくり自転車を漕ぎだした。


「あっ」
自分の部屋に入って、ケータイをチェックするとメールが届いていた。
「名屋君…」

『友達記念日。』

どきどきしながらメールを開けると、本文はそれだけだった。
友達記念日?何だこりゃ。これ、名屋君からだよねぇ…?えっと、何て返せばいんだろう。

『友達記念日?私たちのめでたい日ってこと?』

数分経って、ケータイは震えた。

『うん。今日は俺等の友達記念日。』

名屋君て、こんな人だったんだ。何か意外だな。だけど、メールも話し方も無愛想。やっぱり名屋君だ!!おもしろい人だな…。


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