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【学園物 恋愛小説】

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想[6]-2

「暁寿と…何かあったの?」
「…ううん、何もない。順調、順調!」
「そう?ならいんだけどさぁ」
「ありがと。何かあったらいつも未宇に言ってるじゃん」
「そっか、そうだよねぇ。信じてるからねっ」
そう言った未宇の笑顔が眩しくて、私は罪悪感でいっぱいになった。
音楽室に着くと丁度チャイムが鳴り、それぞれの席に座った。私の列の一番前にいる未宇の背中に、私は心の中で何度も謝った。
ごめんね、未宇。本当にごめん。この気持ちは誰にも言わないって決めたの…。それに、未宇がこのことを知ったら私を軽蔑するんじゃないかって…恐い。…嫌われたくない。
…私、卑怯だ。


結局、今日一日で名屋君に会ったのは三回。だけど、どれも擦れ違う時は気付かない素振りでやり過ごした。未宇はもちろん「また擦れ違っちゃったぁー!」と騒いでいたけど。
今日の空は快晴。だったのに、放課後にもなると雲が出始め日光を遮っていた。女心と何とやら…。そんな言葉が頭を過る。
「まだ帰らないの」
後ろから、あの低い声が聞こえた。
「う…ん」
名屋君の顔を見ることが出来ない。目線は名屋君のネクタイの結び目。それが精一杯だった。
「彼氏が迎えにくるから…たぶん」
「たぶん?」
何で私、「たぶん」なんて言ってしまったんだろ。
「ううん、絶対!」
それは、名屋君ではなく、私自身に言い聞かせるように強い声だった。
「そう」
少し間が空いて
「…電話番号教えてくれない?」
「…は?」
唐突だった。私は思ってもみなかったことを言われ、驚いて名屋君の顔を見てしまった。いつも通りの無表情で名屋君は「アドレスも」と付け足した。
「なっ、何で!?」
「友達だから」
友達…。名屋君は私を友達として見ていたの…?
「私たち、友達なの?」
「うん」
平然と答える名屋君を見て、私は気が抜けてしまった。それと同時に、嬉しさ半分、寂しさ半分の感情が生まれる。
名屋君は、私を友達と思ってくれてるんだ。だけど、それ以上では無いんだね。当たり前だよね、彼女もいるんだし。逆に良かったのかもしれない。友達という枠に当てはめてしまえば、これ以上名屋君にひかれることも無い。
というより、いつから私たちが友達と呼べる仲になったかは分からないが、『友達』として考えれば名屋君が私にしてくれたことの辻褄が合う。
「本当に友達?」
「友達」
名屋君はこくんと頷く。
―友達。
少し考えて、私は笑顔で「いいよ!」と言った。


私はもともと名屋君のファンで、その憧れていた名屋君と友達になれる。そして、やっぱり恋はしないことにする。ルールは守る。友達として、名屋君の近くにいれる。この想いは『友情』に変わっていくんだ…。


私の返事を聞くと、名屋君は八重歯を見せて嬉しそうに笑い、ズボンのポケットからケータイを取り出した。


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