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魔女の蝶
【ホラー 官能小説】

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心優しき少女-1

「お母様♪
少しお散歩に出掛けて来ます」

そう言って
屋敷を出る少女
シャーロットはいつものように
本を片手に持ち
鼻歌を歌いながら歩を進める。


「森に近づいては行けませんよ!」


後ろから
母親の大きな声が聞こえて来るが
また言ってるとばかりに
振り向いて笑うだけで
返事はしなかった。


領地の草原を見ながら
草を確かめるように踏み
目的地を決めず歩く。


春の穏やかな陽射しと
草の匂いが
シャーロットの気持ちを
楽しい物にしてくれる。


目の前には
白い絨毯(じゅうたん)の様に
花が咲いているのを見つけると
小走りで駆け寄る。


一面真っ白な
シロツメクサの中心まで来ると
そこに座り
青い空を見上げ寝そべる。


「お母様にこんな所を見られたら
また叱られちゃうわね♪」


穏やかで暖かい空気と
柔らかいシロツメクサのベッドは
気持ちの良いものでしかなかった。

小さくて可憐な花に目をやると
ミツバチが懸命に蜜を集めている。


そのミツバチにも
愛らしさを感じ
微笑むシャーロットは

穏やかな心で
ミツバチに話しかける。


「ミツバチさん♪
今日もお仕事ご苦労様です♪」


シャーロットの父も
領主でありながら
繊維工場の社長でもあり
従業員を労い
慕われる存在だった。


シャーロットはそんな父親の
心優しい所が似たのであろう。


彼女も領民だけでなく
動物や昆虫にまで
労う事が普通の事でもあった。


金色で美しい長い髪を掻き上げて
白い花畑に座り本を開く。

その姿はまるで
天使か女神かのようであった。


しばらく本を読み進めていると
眠気がシャーロットを襲う。


「もう!そろそろお父様に
新しい本を買って頂かないと!
この本も何回読んだ事でしょう?」


シャーロットは
本に栞を挟み枕にして
再び草原に寝転がる。


青い空に
少しばかりの白い雲を見て
眠りにつく。


どれくらい眠ったのだろうか
目が覚めると
目の前に数人の男子が
顔を見せる。


「シャーロット?
また眠っていたのかい?」


まだ少しボーッとしている彼女に
男子達はさらに話しかける。


「こんな所で眠っていたら
魔女に連れて行かれるぞ!」

「魔女……?」


上半身を起こして言い返す。


「大丈夫よ♪魔女の森は
まだずっと向こうだし
襲うのは美人だけでしょ?

私みたいな子供は
襲われる事はないわ♪」

「何言ってるんだよ!俺たちは
もう16歳だから
魔女に狙われてもおかしくないよ」


「でも襲われるのは
美人だけでしょ?
私は大丈夫よ♪ふふふ」


「大丈夫なわけないよ!
シャ、シャーロットは充分
び、美人だよ……」

「おお!?こいつ!
シャーロットに告白したぞ!!」

「ち、違うよ!
そんなんじゃないよ!」

「ふふふ♪心配してくれて
ありがとう♪」

「あー!?
こいつ赤くなってるー!」

冷やかす男子達

「でも、ここで眠って
雨が降って来たら
濡れてしまうよ?」

「大丈夫よ♪雨なんて……」


シャーロットが空を見上げると
真っ青だった空が
どんよりと重たく暗い雲に
覆われていた。


「あれ?さっきまでお天気は
良かったのに……」


「まずいな…
本当に降ってきそうだぞ!」


その言葉と同時に
雨がポツリと落ち
少しずつ雨粒の量が増えていく。


「やっぱり降ってきた!
仕方ない!皆で森まで走るぞ!」


男子はシャーロットの手を取り
体を起こさせ
そのまま魔女の森へと
走っていく。


森の入り口には大きなブナの木が
人を拒むようにそびえ立っていた。


しかし、その木のお陰で
全員が雨宿りをすることが出来る。


「はぁはぁはぁ
びっくりしたな〜
本当に降って来るんだもん!
しかし
魔女の森に来てしまったのは
不味かったかな〜?」


「この雨も
魔女が降らせたのかもしれないぞ」


「きっと大丈夫よ!
森に入らなければ良いのだから…」


そう言いながらも
シャーロットは恐る恐る
森の奥を覗き込む。


森の奥は薄暗く
魔女が出てきそうな雰囲気で
雨音が消えてしまうくらいに
静けさを感じた。


「魔女が出てきたらどうしよう…」


男子が怯えて皆に話す。


「だ、大丈夫よ…きっと大丈夫…
魔女なんて居ないわ!
あなた魔女を見たことがある?」

「な、ないけど……」

「でしょ?魔女なんて迷信なのよ!」


シャーロットも内心怯えながら
強気で言い放つ。


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