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魔女の蝶
【ホラー 官能小説】

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心優しき少女-2

森の奥を覗くと薄暗く
さらに奥は真っ暗で
何も見えない。


ただ冷たい風が
シャーロット達の顔を脅かす。


息を飲み込むシャーロットに
男子が声をかける。


「雲が晴れてきたよ!」

「ひっ!?」


雲が切れ間から
光芒(こうぼう)が射し込み
雨が上がっていく


今にも空から
天使が舞い降りて来そうな
光景が現れた。


「なんて綺麗なの……」


シャーロットが呟くと
森の中から
鹿や兎、小鳥達が顔を見せる。


「動物達も
美しいのが解るのね♪」


大きなブナの木の葉に雨露が滴り
反射する光りは
この世の物を美しく見せてくれる。


「ああ!なんて美しいの!
動物もこんなにたくさん♪」


感動するシャーロットに
男子達は声をかけ
次々に家へと帰っていく。


シャーロットは
魔女の森の事を忘れて
動物達を見つめていた。


最後の男子が声をかける。


「シャーロット…
魔女が出てくる前に帰らないと」

「大丈夫よ♪
こんなに動物がいるのだもの
魔女なんていないわ!
私、もう少しここに残る」

「そうか…早めに帰るんだぞ!
また雨が降るかもしれないし!」

「うん♪ありがとう♪」


男子は森の奥を一度見つめて
走ってその場を立ち去った。


「もう皆、怖がり過ぎよ…」


シャーロットはそう呟きながらも
森の奥を恐る恐る覗き込む。


森の奥からは変わらず
シャーロットの頬を
冷たい風が撫でるように
吹いていた。


一人になると
さすがに薄気味悪くなり
屋敷に帰る事にした。


「森にはたくさん動物がいるのね

魔女なんて迷信よね…」


屋敷に帰りつくと
メイドが慌てて
シャーロットの母親に知らせる。


「奥様!
お嬢様がお帰りになりました!」


「シャーロット!
どこへ行ってたの?
突然、雨が降って来たのに
帰って来ないから心配したのよ!」


「お母様ご免なさい…
お友達と雨宿りしてたの…」


「雨宿り?どこで?」


「森のブナの木の下で…」


「なんて事!?
森には近づいてはいけませんと
言っていたじゃありませんか!」


「お母様!
森の中には入っていないし
動物はいたけど
魔女なんて居なかったわ!」


「もし何かあったらどうするの?
危ないから
遠くへは行ってはいけません!
解りました?」


「はい……」


「手を洗ってらっしゃい!
あとでお父様にも
きつく注意してもらいます!」


夕食の時間
シャーロットが
ダイニングに来ると
すでに父親と母親がテーブルに
着いていた。


少しうつ向き
自分の席につくと
3人で食事を始める。


何もしゃべらず
黙々と食事を続ける両親の沈黙が
シャーロットには
気が気でない。


特に父親の様子を気にしてしまう。
母親はいつもより少しばかり
機嫌が悪そうに見える。


食事中に森に近づいたことを
咎められると思っていた
シャーロットは
思うように食事が喉を通らない。


そのまま食事は終わり
シャーロットはほとんど
食べ残してしまう。


自分の部屋に戻り
ソファーに座ると
森の事を思い出してしまう。


不思議な森が
何故か気になってしまっていた。


「あんなに美しい森なのに…」


シャーロットは
頭から森の事を消すために
本を開く。


しかし
本を読めど読めど
頭のなかに内容が入ってこず
再び同じ所を読み返す。


そうしていると
ドアのノック音が聞こえる。


「シャーロット…
お父さんだ…ちょっと良いかな?」


父の優しい声が聞こえる。

シャーロットは
急いでドアを開け
部屋に招き入れる。


「お父様…どうしたの?」


用件は解っていたが
わざと知らないふりをして
問い掛ける。


「シャーロット…
お母さんに聞いたのだが
森に近づいたそうだね…」


「え!?はい……
あれは突然、雨が降ってきて
お友達と一緒に
雨宿りしただけなんです…

でも、何もなかったのですよ!
魔女どころか
動物もたくさんいて
とても美しい森だったんです!」


「そうか……そうだな……」


シャーロットの父は
静かに話し始める。


「昔、100年以上も昔の事
私のお祖父様
君の曾祖父の時代に
あの森には魔女が住んでいたんだ…」


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