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ミライサイセイ
【悲恋 恋愛小説】

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ミライサイセイ act.1 『歯車の音』-4

「今日はありがとうございました。本当に楽しかったです。思い出に残ります」
「泊まっていかないの?」
「ごめんなさい。明日、早くから講義があって」
「そう、分かった」
薄暗い通りで、人影は見当たらなかった。だからだろうか、いつもは自分から求めないミクは唇を突き出した。僕は自然にキスをして、揺れる街灯の下、キスをした。
たとえ細かな部分で合わなくても、もっと深いところで僕らは繋がっている。
そう思った。
そう、信じた。
「それじゃ、また明日」
「さようなら」
別れる。
僕はしつこく誘うことをせずに、別れる。だって明日にも会える。
何か別の惑星が衝突して、その天体を壊さない限り。
ミクに背を向け、歩きだした、その時。

キューーーー・・・ガシャン!!!

急ブレーキの音と、何かがぶつかる音。
暗闇だった。けれどそれ以上に、僕の目の前は暗くなる。僕は振り向き、ミクの方を見る。
まさか、まさか、
倒れている誰か
まさかまさかまさかまさかまs
倒れている白いワンピース
足が震えた。
顎がガチガチとうるさい。
爆発しそうな鼓動を抑えきれず、僕は走り出した。
軽自動車に撥ねられた恋人。慌ててミクに走り寄る。「ミク!ミク!」
んん〜
意識はある。
しかし額からはおびただしいほどの出血がある。震える手で携帯を取り出す。
救急車を、早く。焦る、あせる、アセル。
どうして、
僕の脳裏に、浮かび上がる衝動がある。
どうしていつも、この手から零れ落ちていくのだろう。
幸せは水のように。
掴むことは出来ないのだろうか。
掴むことは許されないのだろうか。
トゥルルル
トゥルル・・・『はい、こちら119番です』
バタン
軽自動車のドアが開く。ミクを轢いた誰かが姿を見せた。そこから出てきたのは。
出てきたのは・・・・。
僕は携帯を落とす。
見間違うはずもない、だって彼女は。
「・・・・あや」
「・・・あきら」
―――  こちら119番、どうしました?
―――  もしもし、もしもし?
どこか別の世界から発せられるように、堕ちた携帯から空しく響く、誰かを救う、こえ。



to be continued / by delta


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