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乱れ柳
【熟女/人妻 官能小説】

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乱れ柳-6

 尻が、ブルッ、ブルッと震える。
 澪は突っ伏し、顔をねじ曲げ、そのまま絶句。
 膣はキリリと剛直を締め上げ、黒井はストロークを中断。
 しばし、忘我の女。
 半目のまま虚空を見やる。
 やがて、その目に正気の色が戻り、澪の両腕がゆっくりと上体を持ち上げる。
 それを確認して、黒井の律動が再開する。膣をみっちりと押し広げている太棹が入り口を出入りする。図体の大きい亀頭がヴァギナの中を往復する。
 澪は、快感の波がすぐにまた押し寄せるのを感じた。黒井とのセックスは、やっぱり特別だ。目的地のアクメがじつに絢爛でたまらないが、そこに至る道のりにも快味の花が群れ咲くのだ。
 熱い吐息はシーツに染み込み、極甘のあえぎは寝室のアロマと溶け合い、甲高い嬌声は壁を震わせていた。
 澪は知らず知らずのうちに、淫らな心情を吐露するような川柳を心の中で詠んでいたが、セックスの興奮も佳境に入った今、そんな余裕もなくなっていた。
 黒井の腰振りはトップギアに入り、怒濤の突き入れを浴びた澪は、またもや絶頂に追い込まれる。
 さっきよりも激しい痙攣が澪の下半身に生じ、上半身はその余波を受けてビクビクッと細かく震える。苦悶ともとれるような強張った表情が女の顔に貼り付き、肩甲骨がグッと寄り固まる。その背中へ、白く濁ったものが降り注ぐ。ようやく射精に至った黒井の、外出しの精液だった。パンパンに張った亀頭の先から噴出したスペルマは、五十路の男のそれにしては量が多く、粘度も高かった。パイプカットした精液とは似ても似つかぬ、無数の精子がうようよ居る、有精ザーメンだった。
 しばらく澪の顔を覆っていた強張り。それが剥がれると、呆けた顔が現れた。彼女の四肢はすっかり弛緩し、高く上げていた尻がヘタリ……とくずおれた。あとの空間には、脱力し始めたペニス、男女の愛液でしとどに濡れそぼった男根が一本残った……。

 寝室のドアが開け放たれ、激しいセックスで淫靡に濁った空気が流れ出て、代わりに隣室の冷気が澪の裸体を包み込んだ。
 つかの間の極楽往生から生還した澪は、うつ伏せになり、まだボーッとしていた。そんな彼女に黒井はシャワーを勧めた。澪がのろのろと立ち上がり、バスルームへ足を運ぶ。その途中に見た時計は午後2時を回っていた。

   禁断の果実盗(と)りたる日曜日

 また、心の中で句を詠む余裕の生まれた澪であった。シャワーで汗を洗い流していると、淫蕩な気分も少しは流れ落ち、正気が顔を覗かせた。

『今頃、娘はまだ友達の家で遊んでいるだろう。……離れて暮らす夫はどうしているだろうか。私と同じく不倫なんてことは……。いいや、あの人にそんな甲斐性はない。あるはずがない。それに引き比べ、私は……』

 澪はうなだれる。しかし、その目に映った乳房の血色がやけによかった。交情の余韻を漂わせ、ロゼワインの色だった。

   禁断の果実のなんと甘きこと

 黒井との不倫は衝撃的だった。かつて、これほどアクメを貪ったことはなかった。陰部に手をやると、甘い疼きがすぐに蘇る。澪は溜め息まじりにアソコに湯をかけ、あらためて全身を洗った。
 澪が身体を乾かし、身支度を整えている最中、黒井はカラスの行水でシャワーを済ませていた。そして、彼女がお別れを言い、靴を履いていると、背後からそっと抱きついてきた。耳元で囁く。

「とってもよかったです。……日を改めて、是非ともまた、ベッドでの相手をお願いしますね」

 返答に窮していると、黒井はいきなり澪の首筋に唇を押しつけ、強く強く吸った。慌てていると、やおら接吻を解き、「ではまた……」淡い笑顔を浮かべ、そのまま不倫相手を丁重に送り出した。


 澪が家に戻り、夕飯の支度をしていると娘が帰ってきた。普段の会話を交わし、娘も並んで料理の手伝いをする。そして、ふと澪の顔を眺めてつぶやいた。

「ママ、なんだか変……」

ギクリとする澪だったが、続く言葉がこうだった。

「変……って言うかあ、なんだかキレイだよ、いつもより」

「あら、そう? ありがと……」

笑顔でごまかしていると、

「キレイだけど、首の、そこ、赤くなってるけど、何?」

「え? 首?」

「うん。赤くなってるよ。虫刺され?」

 澪はバスルームに行き鏡で首を確認してみた。とっさに、黒井の強い吸い付きによるキスマークだと分かったが、キッチンに戻って、

「いやだあ……いつのまに刺されたのかしら」

 顔をしかめてみせると、娘は、

「早く薬を塗らないといつまでもあとが残るよ。ママも若くないんだから」

イヒヒヒと笑ったきり、料理のほうへ意識を向け、それっきりだった。

 翌日、首のキスマークをコンシーラーで隠して出勤する。同僚の女性と出版局の仕事の打合せをしていると、ふいに顔をのぞき込まれた。

「ねえ、澪、化粧品変えた?」

「え?」

思わず首筋を手で覆い隠そうとすると、

「いつもより頬が血行よく見える。チーク変えたでしょ。どこのやつ? 教えてよ」

 囁かれ、適当に答えておいた。
 軽い驚きだった。頬紅はべつに変えていない。血色のよさで考えられるのは……黒井との不倫しかなかった。昨夜も娘からキレイだと言われたし……。

   セックスは愉悦ともなうデトックス

 黒井との燃えるようなセックス……めくるめくアクメを何度も味わい、悦びの汗をたくさんかいたことが澪の肌に若さをもたらしたようだった。

「また、ベッドでの相手をお願いしますね」という黒井の言葉がよみがえる。承諾はしなかったが、強く否定もしていない。あやふやなままで別れた。

『もう一度、黒井から誘いがあったらどうしよう……。肉体関係をまた結ぶなんてとんでもない。……でも……』

 澪の心の奥底からは不倫願望の泡が一つ、二つと浮き上がってくるのだった。


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