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乱れ柳
【熟女/人妻 官能小説】

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乱れ柳-7

 しかし、それから一週間たっても、一ヶ月たっても、黒井からの二度目の誘いはなかった。用事があって人文学部の総務へ行った時、担当事務員にそれとなく黒井のスケジュールを聞いてみると、他県での人文学会シンポジウムなどの所用で長期出張中とのことだった。

 そうこうしているうちにお盆の季節となり、夫が単身赴任先から帰ってきた。二泊だけの慌ただしい帰省だったが、その一日目の夜、夫婦は久しぶりにベッドをともにした。
 いつもの抱擁、いつものキス。そして、いつものセックス。澪にとっては普段通りのルーティーンのはずだったが、久々ということもあり、夫はいつになく積極的で、澪も思いのほか濡れた。感じた。

『やっぱり、私には主人がふさわしいのかも……。黒井のことは夏の夜の夢……』

 そう思える澪だった。
 しかし次の晩は、夫が澪の身体を求めることはなく、澪がそれとなく誘いかけても、彼ははぐらかして一人で寝てしまい、滞在三日目の昼過ぎには単身赴任先へと、そそくさと旅立ってしまった……。
 その夜、澪は淫夢を見た。
 男と激しいセックスをしている夢だ。その相手は夫ではなく、黒井だった。激しく責め立てられ、狂おしくもだえ、イキそうになったところで目がさめた。

『……私が欲しいのは黒井なの? ……やっぱりそうなの?…………』

 起き上がろうとすると、陰部がヌメッとしていることに気づき、自分を恥じる澪であった。


 黒井が出張から戻ったらしいことを学部の総務から聞いた澪。彼の著書は書店の販売ルートに乗せてあり、直近の売上額の報告があるため、澪は黒井の研究室に何度か足を運んでみた。が、いつ行っても不在。連絡をくれるようメールしても、黒井からの返事はなしのつぶてだった。売上げ報告はオフィシャルな要件だが、澪個人としても黒井に会いたい気持ちが少しあった。会うと「二度目の誘い」があるかもしれなかった。

 それから数日。相変わらず黒井と会う機会には恵まれず、著書の売上げ報告はメールで済ますことにした。しかし、プライベートでは黒井に会いたい気持ちが募っていた。先日の淫夢が澪の本心を語っているようで、それ以来、彼女の中で黒井の存在が大きくなっていた。

『会うのが叶わないのなら、せめて電話連絡がほしい……。メールでもいい……』

   誘いなくいつしか蛇の生殺し

 澪は頬杖をつき、深いため息をついた。

 休日、出かける用事があり、黒井の自宅近くにたまたま差し掛かった澪。立ち止まって黒井宅を見ていると、玄関が開いて一人の女性が出てきた。

『どこかで見たことがあるような……』

 澪はすぐに思い出した。黒井のゼミ生でレースクイーンの雰囲気のある女子大生だった。

『どうして彼女が黒井の家から……』

 不審に思い、後をつけてみる。後ろ姿は若い娘らしく溌剌としているが、腕の動きにはそれ以上の「嬉々とした思い」があふれていた。澪の目がいぶかしげに細くなる。女の勘が「あいつは黒井とただならぬ関係にある」と告げている。歩く速度を上げ、接近する。そして、追い抜きざまに横目で素早く顔を見る。遠目よりもはるかに美人だった。が、そんなことよりも、澪の眼は素早くあるものを捉えていた。それは、彼女の首にクッキリと付いたキスマーク。
 澪の歩幅は大きくなり、速度も上がった。しばらく歩いて道を折れ、ゼミ生とは別方向になったことを確認してから立ち止まった。

『黒井には別な女がいたんだわ……』

 深くうつむく。顔に頭髪がかかり、表情はうかがえなかったが、両の拳がきつく握りしめられていた……。

 嫉妬心というものは、時として人を行動的にするもので、さんざんためらっていた澪も、ついにこちらからアピールしようと決心した。
 その当日である。出版局に黒井から電話が入り、澪に「研究室へ来るように」とのお達しがあった。トイレでちょっと化粧を直してから足を運ぶと、黒井はデスク越しに、いつものクールな視線を投げてきた。
 著作の売上げのことを聞かれ、事務的に答える。答えながら『それだけ? それだけの用事で私を呼んだの?』と心の中で地団駄を踏む澪。そして『あなたが切り出さないのなら私から……』と思った時、

「ああ、それはそうと、澪さん。そのうち、また、ベッドでの相手をしてほしいのですが、都合のいい日はありますか?」

 仕事の一環とでもいう口調で言われ、「待ちに待った誘い」を言われたことにすぐに気づかなかったが、目をパチクリさせると、澪はこう答えていた。

「いつでも!」

 結局、今度の金曜の夜、娘が小学校のお泊まり会で不在の日に、黒井宅へ行く約束をした。

『どうして今まで待ちぼうけをくわせたの? あのレースクイーンまがいのゼミ生とはどういう関係なの? 私の気持ちをこんなに高ぶらせて、いったいどうしてくれるの?』

 言いたいことは山ほどあったが、何も口にしないまま、澪は黒井の研究室をあとにした。


 黒井との二度目の逢瀬。澪はいつになく念入りに化粧をし、髪を整え、いつもより高価なパヒュームを身にまとって家を出た。
 不倫相手の玄関を入り、まずはコーヒーを飲むところまでは以前と同じだったが、抱き合う前に前回とは違う行動を澪はとった。トイレを借りる口実で黒井から離れ、洗面所で歯ブラシの数をチェックし、澪とは違う女の髪の毛が床に落ちていないかチェックした。いずれも、あのゼミ生の痕跡確認だった。が、不審な点は見つからず、リビングへ戻ると、黒井はいきなり抱きついてきた。貧弱な見かけでありながら実は痩せマッチョとも言える彼の抱擁は、それだけで澪を陶然とさせた。
 
   いだかれて「嫉妬」「夫」が霧散する

 きつい抱擁は、ライバル女への意識も、夫への後ろめたさも、澪の心から払拭していた。
 抱き合ったまま、もつれるように寝室へ移動する二人。


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