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告白
【SM 官能小説】

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告白-1

あたしも、この歳になってこんなに疼いてくるのもお恥ずかしいのですが、ようやくこの女を手にいれたもので、あなたにお話しをしたくなったわけでございます。実は、薬で眠らせて丸裸に剥いた女は、あたしの目の前でベッドの端々に手首と足首を縛りつけていますから、あたしから逃げることはできません。それにここはめったに人が訪れることのない山奥の温泉宿の離れになった蔵の中ですから女がどんなに声を上げても誰にも聞こえることはございません。珈琲に混ぜた薬が効いているのでございましょう、女はよく眠っておりますよ。しばらく目を覚ますことはないでしょう。それにしても二十年ぶりに会ったこの女の蕩けるような体は、年増の女の熟れた肉の実りを示してございまして、思わず生唾を呑み込んでしまいそうでございます。

あたしでございますか、ええ、今年、七十五歳になるジジイでございまして、昔、刑務所に長く入っていたおかげで、股間のものもまったく役立たずの状態でございますが、こうして久しぶりに女の裸を眼のあたりにすると懐かしい疼きだけは沸々と湧いてくるものでございます。でもあたしのものは堅くそそり立つことはありません。いやいや、老いたからというわけではなく、あたしはそういう身体に無理やりされたのです。おいおいお話しいたしますが、四十年ほど前、あたしは老女の強姦、殺害容疑で逮捕され、刑務所に入れられたのでございます。その老女は実はあたしの母親でございました。あたしは物心ついたときから母親がいませんでしたから、まったく顔も知らない老女がまさか自分のほんとうの母親だったことに大変驚いたものです。あたしは性的変質者として特殊な刑務所に入れられ、更生と称してあたしの性欲は無残に削がれ、不能の卑屈な男にさせられてしまったのです。だからあたしは、もうずっと女を抱いていない、指一本、女の肌に触れたことのない憐れな化石のような男なのでございます。もっとも、貧相で陰気な顔立ちをしたあたしは、生まれてこのかた女にもてたこともなく、結婚にも縁がなく、ずっとひとり者で、恥ずかしながらその母親である老女を犯したときも童貞でございました。

ところで、目の前の丸裸の女をあなたもご存じでしょう、《 谷 舞子 》という、ほら、ネットに投稿小説を書き散らしている女でございますよ。あたしはこう見えてもパソコンなどを覗きこむことがありまして、ここのところ目を凝らして彼女の小説を読んでおりました。最初はいったいどういう女なのかずっと想い描いていましたが、なんせ、鼻高々に気どった小説を書くこの女が生意気でしょうがなかったのでございます、すでに五十歳にも手が届くほどの年増の女ですが、SM官能作家気取りの鼻っぱしの強そうな女で、いかにも情感豊かに描く文章なんてまさに見せびらかしの文章ってところでございます。ただのエロ小説なのに男の欲望をくすぐり、鼻であしらい男を侮蔑してお高くとまっている、こういう薄っぺらな知性を鼻にかけた年増の女は欲求不満の女が多いものでございます。そもそもこの女は男をなめております。だいたいエロ小説を書く女ってそういうものでございますよ、あなたもそうお思いになりませんか。

いずれにしてもあたしにとっては《 谷 舞子 》というこの女は、胸糞(むなくそ)が悪く、うざい女でございます。彼女の小説を読みながらずっとそう思っておりました。この女は嘘をほんとうのように信じ込み、ためらうことなく嘘をついているのでございます。軽々しい敬虔さに心を澄ませたふりをしてね。小説を書くときだけでなく、おそらく男に抱かれるときも、彼女は嘘の顔を悩ましく見せつけているのでございましょう。そういう偽りの顔が彼女の小説に見え隠れしているのを感じると、あたしは、つい反吐(へど)が出そうになるのでございます。あたしはね、この女はとても虚栄心が強い女だと思っております、それに薄っぺらな自愛者にすぎないってね。自分の欲望のために男の欲望を必要とし、自分の欲望のために恋し、自分の欲望のために男を侮蔑し、高慢になり、従順なる……そのときの彼女の欺瞞に充ちた顔が見えてきそうで、それがあたしにはとても醜く見えるのでございます。おそらく軽薄な知性を鼻にかけて男の欲望を軽んじ、涼しげな驕慢(きょうまん)さで男を卑下することで性的に充たされるという、言ってしまえば、とても厭らしい彼女の利己的な自慰ではありませんか。あなたは、この女が小説を書きながら、下半身に指を這わせて自慰を行っている姿を想像しませんか。あたしは小説そのものでなく、書かれた文章の奥に潜むこの女の生々しく厭らしい蜜汁の滴りに醜さをいだくのでございます。この高慢な女は鼻高々に小説を書きながら、自分の自慰以上に、男に自慰的な懺悔を要求しているとしか思えず、まるで彼女の小説は、あたしの卑屈な心と肉体のすべてを小馬鹿にして冷酷に嘲笑っているようでした。ただ、小説を読んでいたあたしは、彼女に侮蔑された目で見られているように感じることで、逆にあたし自身が自分を軽蔑し、嫌悪し、醜悪な、厭らしい、惨めな人間だと思うことが快感になってしまいまして、そんな男だからこそ、あたしは彼女に対して、いやらしい純潔の欲望をいだくことができるのでございます。


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