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[姦獣共の戯れ]
【鬼畜 官能小説】

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迫りくる闇-5


いろいろな職場を廻った後に会社に戻った由芽は、今日の契約書類をかずさに渡し、実績報告書を作成してタイムカードを切る。


「今日の書類、前田センター長に提出しておくから。お疲れ様」

「はい。奥村チーフ、お疲れ様でした」


由芽が帰る頃には、もう事務室にはチーフクラスの社員しか居なかった。
当然そこにはかずさの姿もあった。


『……うん。かなりイイね。新庄さんの活動内容も実績も、期待以上だよ』

「ありがとうございます。前田センター長」


かずさから書類を受け取ったセンター長は、鼻を膨らませて顔を崩した。
肝心要の業務内容は申し分なく、しかも痴漢を逮捕すると言う社会的貢献で、上層部からの、このセンター自体のイメージアップにも繋がっていた。


『理事長が来週訪問するけど、この実績を報告したら上機嫌になるんじゃないか?奥村チーフ、この調子で頼みますよ』

「頑張ります!このまま新庄さんを一人前に育ててみせます」


由芽がこの会社に入社となるよう、強く推薦したのはかずさだった。
真っ直ぐな性格なのは幼い頃から知っていたし、簡単に諦めたりしない我慢強さも同様だ。


(良かった……本当に良かった……)


かずさは喜びの溜め息をふぅ…と吐き、綻んだ顔で書類処理を進める。
安堵感に満たされた思いを抱いている人が居るとは知らずにいる由芽は、すっかりと陽が落ちた薄暮の中を歩いていた。

紫色の空を見上げながら駅に入った由芽は、電車に揺られて帰路につく。

最寄りの駅を降りて正面の十字路を右に曲がり、線路を跨ぐ陸橋を渡って更に右に曲がる。
徐々に線路沿いから離れていく狭い道路はアスファルトも継ぎ接ぎで、殆ど裏道なそこには外灯も少なかった。
星が瞬きだした空の下、空き地を覆うススキは真っ黒な体毛のように見え、悪戯に不安を煽るようにザワザワと揺れている。

二十メートルほど先にある丁字路を左に曲がれば、自分の住むアパートはもう直ぐそこだ。
当然その丁字路を左に曲がったのだが、そこで由芽は驚くと同時に狼狽える事態に直面した。
いきなり目の前の道路に倒れている人が現れたのだ。


「ど、どうしました…?あの…大丈夫ですかッ?」


声を掛けるのが精一杯で、怖くて近付く事が出来ない。
震える手でスマホを取り出し、救急車を呼ぼうかと焦るその時、自分が来た道の方から白い箱バンが向かってくるのが見えた。


『オイ。なんだ、どうしたんだ?』

『こりゃヤバい。待て、俺が救急車を呼んでやるから』


すぐ側に停車した箱バンから二人の男が下りてきた。
見知らぬ男達だが、これで一人ではなくなったと少しだけ安堵した。


「私がここを曲がったら、この人が……えッ…!?んむぐッッッ!!??」


倒れていた男がニヤリと笑いながら起き上がる……なにが起きたか解らぬ由芽は、いきなり背後から抱きつかれて口を塞がれた……。


「むごッ?む…おぅぅ!お"〜〜〜〜ッ!!!」


自分の至近距離に近付く為の罠だと気付いた時にはもう遅かった。
口を塞いでくる男に肘打ちを喰らわせようとしたその時、二つの閃光がバチバチと爆ぜ、由芽の脇腹と太腿にそれは喰いついてきた。
佐藤と高橋から話を聞いた鈴木達が、互いに協力しあって凶行に及んだ瞬間である。


『早く脚を持て。このまま押し込めろ!』

『田中、あのハンドバッグ拾ってこい!証拠残すなよ!』


拉致される……。

強烈な電流に身体は自由が利かず、しかし、このままではどんな目に遭わされるか分かったものではない。
ハンドバッグを掴んだ男がスライドドアを閉めて助手席に乗り込んだ瞬間、死にもの狂いに放たれた由芽の踵がドアのパネルに当たった。
バキッ!という破壊音と共にパネルは割れ、それに気づいた由芽は勢いづいて叫んだ。


「わ、わたし空手やってるんだから!これ以上変な真似したら次は貴方達がああなるわよ!」

『ああ、そうかい。そりゃあ凄えよなあッ』


由芽が空手を辞めてから数年は経っている。
慕っていたかずさが高校卒業と同時に道場を辞めたのを期に、由芽も一緒に辞めていたのだ。

しかも、かずさのようにフルコンタクトの試合の経験もない由芽が、鈴木達を打ち負かすなど不可能だった。
狭い車内で、しかもシートとシートの間のフロアに引き倒される形で羽交い締めにされては攻撃もままならず、鈴木に胴体を跨れて蹴りの届かぬ位置を取られてしまっては、もはや抵抗は抵抗と呼べない状態になってしまっている。



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