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スペースコロニーN-335第一娼館
【SF 官能小説】

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H星人(最終回)-1

「またレイプ事件だって」
 ノラが朝食を摂っていると、電子新聞を片手にした同僚のエリーがロビーに降りて来た。
 このコロニーがある惑星の自転は地球単位で25時間弱、中には3時間ほどで自転してしまう惑星もあるが、ここはかなり地球に近い。
 さすがに3時間ではそうは行かないが、ここでは25時間を地球と同じ24等分して時刻としている。
 ノラ達娼婦の昼食は午後3時頃、仕事に備えて一番栄養価の高い食事を摂る、開館は5時、12時までに入館した客の相手を済ませると軽い食事を摂って眠り、10時ごろ起きて朝食を摂り、それから昼食までの時間が娼婦たちの憩いの時間となっている。
 娼館に食堂のような設備はない、客用のロビーに出前を取って食事を済ますのが常、昼食を摂った女たちは2階にあるそれぞれの部屋に散って掃除したりリネンを揃えたりして客を迎える準備を始める、営業が始まればそれぞれが自室で客を取り、前の客が帰って20分以内にまたここに降りてきて客の指名を待つのだが、品定めをする客の前でダベるわけにも行かない、この時間だけがコミュニケーションの機会なのだ。
「可哀想に……」
 エリーの目が曇る、おそらくは被害者は娼婦、そしてレイプ事件の結末は死だったのだろう。
「H星人?」
「そう」
 ノラの質問に、エリーは電子新聞から目を離して頷いた。

 H星人はこのコロニーの中では最大の種、身長は4メートルを超え体重は1トンに迫る。
 当然パワーは地球人の比ではないからコロニーの建設、拡張、修繕には欠かせない労働力だ、その体格の割には大人しい種なのだが、あまり知能は高くないが感情を持つ『人』なのだ、激高したら手がつけられなくなり、電子銃で昏倒させる他はない。
 そして『男』である以上性的欲求はあるのだが、彼らの相手をできる娼婦はH星人の女性に限られる、地球人サイズを基準にして建てられた娼館ではH星人の女性を収容できないのでコールガールよろしく派遣されると言う形になるのだが、H星人は体が大きい分食料も多く必要となる、H星人娼婦は当然のように数が少ないのだ。
 その結果、性的欲求不満を募らせたH星人が夜な夜な徘徊することになる。
 H星人は体も大きいが、ペニスはその比率以上に大きい、直径15センチ、長さ60センチ、そんなモノを挿入されたら地球人の体は堪らない、そしてパワーも桁違いだからH星人にレイプされれば地球人などまず間違いなく死んでしまうのだ。
 それゆえ娼婦に限らず、地球人、異星人に限らず女性は夜の外出は避けるのが常識、どうしても必要な場合でも必ずクルマを使う。
 
 その日ノラは外出した、もちろん昼間、娼館の営業が始まる5時前に、いや、準備を始めなければならない4時までには戻る予定で……その時間帯ならばH星人は建設現場で作業しているので管理されているはずだ。
 かつての同僚で他の娼館に移籍した友人が急な病気で亡くなり、その葬儀に出席したのだ。
 そして、そこで懐かしい友人たちと会い、故人の思い出ばかりでなくお互いの近況なども語り合っているうちに、つい葬儀場を出るのが遅くなってしまった。
(女将さんに叱られちゃうな)
 帰り道、ノラはそんなことを考えていた、娼館まであと10分くらいかかるが、既に時計は5時を示していたのだ。
 H星人も作業を終えて帰宅し始める時間だが、H星人が全部レイプ魔だなどと言うことはない、基本的には大人しい種で、クルマの中に居れば安全なはずだった。
 娼館まであと5分と言った辺りでH星人と遭遇した、と言っても大人しく歩いて帰宅しようとしているところ、特に危険な感じはしない……だが人数が多い、10人ほども固まって歩いている、体が大きいのでそれだけの人数になると歩道には収まり切らずに車道にはみ出してしまう、そして仕事が終わった時間帯と言うことで対向車も多い、H星人たちを避けるには減速して対向車が切れるのを待たねばならない。
 ノラはブレーキを踏んで減速したが対向車は一向に切れない、もうほとんど止まりそうな速度まで落ちた時、一人のH星人が振り向いてノラをじろりと見た。
 普段ならそれくらいで怖れを感じることはないのだが、今朝レイプ事件のことを同僚に聞かされたばかり、ノラは少し怖くなってハンドルを大きく切った、この辺りならもう勝手知った街、裏通りを辿って帰ろうと考えたのだ。
 そしてスピードを上げて行った時、十字路で不意に別のH星人と遭遇した、H星人は動きが速くは見えないのだが体が大きいので意外と歩くのは速いのだ。
(あっ!)
 思い切り急ブレーキをかけたが少し遅かった。
 車はドンと大きな音を立ててH星人と衝突してしまった。


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